糸井重里
・親についていって、なにごとかを経験します。
それはもう、なんでもいいんですけど、
釣りでも旅でも料理でも野良仕事でも穴掘りでも。
それは経験というものになります。
子どもだけではそれはできないのだけれど、
「こういうことができるんだ」と知ることになります。
やったことがある、というだけで、
「できないことじゃない」と可能性を広げます。
ぼくがまだ20歳前のころだったかなぁ。
大正8年生まれの父が、はじめて飛行機に乗ったんです。
「これはいいもんだ」とつくづく思ったみたいです。
で、ぼくに「飛行機に乗ってこい」と、
資金は出すからどこに行くのでも飛行機に乗ってみろと。
たぶん、じぶんが手配して乗せるということまでは、
難しそうだからやりたくなかったんじゃないかな。
ぼくはぼくで、1960年代の地方の高校生で、
空港に行ったこともなかったのですから、
じぶんから搭乗券を買って飛行機に乗るなんてことは、
できるとも思っていなかったんですね、ふつうに。
で、その父親の「乗ってこい」は消えてしまったのです。
いま生きている子どもたちは、またちがうんでしょうね。
おそらく飛行機に乗ったことがあったり、
周囲の大人たちも飛行機に乗った人ばかりだから、
飛行機に乗るのは「できないことじゃない」と知っている。
このちがいは、それなりに大きいと思うんですよ。
たぶん、父は、だれかに手伝ってもらって
なにかしたとか、できたとかの経験は少なかったでしょう。
時代も昔だったし、裕福な育ちでもなかったようだし。
だから、「こういうことができるんだ」と思える世界が、
かなり小さかったんじゃないかなと思うのです。
そして、その父に育てられたぼくも、それに倣っていた。
「じぶんでなんとかする」という気持ちが強かったんです。
親や他人の力を借りてでも経験したことというのは、
「やがてじぶんもできるだろうこと」として記憶されます。
これ、じぶんを振り返ると、うらやましいことです。
なんでもかんでも「裸一貫」は、選んですることじゃない。
◆質問no.012「だれのお世話になりましたか?」です。
どんな角度から考えてもオッケー。答えをメモしておこう。
よろしければ、メールにも書いて送ってください。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
「したことある」って、心に強く残っているんですよねー。
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