糸井重里
・ずっと続けている「ちいかわ臨書」のことを書きます。
まずは、「臨書」っておもしろいものだなぁと思ってね。
じぶん独自のものが最重要であるみたいな考えが、
だいたいの表現活動にはつきまとうんだけど、
「臨書」って、もともとのお手本があって、
それをいわば「追表現」するわけでしょう。
個性最優先の人からしたら、よくわからないですよね。
だけど、書の世界でも、歴史的な名筆というか
後世に名を残している名人、達人みたいな人たちが、
さんざん臨書をやっているわけですよ。
そこには、奥深くて複雑な何かがあるんだろうなと、
横目で見ていて感じてはいたわけです。
ちょっと思うのは、古典音楽の演奏に似ているのかな、
というようなことだったり、
横尾忠則さんが「ぼくの絵は模写だから」
「ぜんぶ現実の模写だ」と言い続けていることだとか、
吉本隆明さんの著作に「模写と鏡」という題名があって、
このことばがかっこいいなぁと思っていたことだとか、
モノマネのおもしろさへの興味だとか、そんなことでした。
で、ナガノさんの「ちいかわ」の絵が、
書と絵のどちらでもあるような気がして、これをお手本に
「臨書」をやってみようと考えたのでした。
似たようなことは、中学生のときにちょっとやりました。
「鳥獣戯画」の絵がおもしろくて、まねて描いてみたり、
赤塚不二夫さんのマンガの登場人物たちを描いたりです。
じぶんの手から、なにか価値が生み出せるような気がして、
なんだかけっこううれしかったのです。
すぐに画材を買い「ちいかわ臨書」と名付けて始めました。
ぬいぐるみを愛でるのと似たような快感もあり、
描き続けているとお手本への敬愛の情が生まれてきます。
「臨書」をしているうちに、作者がなにを考えたり、
なにに気をつけたり、気持ちよかったりしていたのか、
それをなぞっているような気がしてくるのです。
いまのところ、ぜんぜん飽きてませんが上達もしてません。
◆今日の質問no.075「趣味はおもちですか?」です。
考えて、よろしければメールにも書いて送ってくださいね。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
ダンスの振り付けを踊ることも、動きの「臨書」ですよね。
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