

池谷  | 
    
       さきほどの、ネズミの歩行実験の話で お伝えしたように、 昼間起きている間に起こったことが、 次の睡眠中に再現されます。 再現される確率は、 寝入りの時間に近ければ近いものほど 高いんですよ。 そして、再現されたものの記憶の定着も、 寝入り直前の経験のほうが、いいんです。 夢では、時間をさかのぼっては、 あまり思い出せないようです。 ですから、睡眠を使って ものを覚えようという企みを持っている人は(笑) 覚えたいことを、朝にやるんじゃなくて、 睡眠直前にやるほうがいいんです。  | 
  
糸井  | 
    
       それはいいことを聞きました(笑)。  | 
  
池谷  | 
    
       ということは、睡眠前の時間は、 ものすごく貴重な時間なんです。 私の場合は、仕事のことをしたり、 アイデアが欲しいときには ぜんぜん関係ないことをしてから、 ベッドで横になっています。 この時間帯に多くの人は テレビの深夜番組を見たりしてますよね。 まあ、それを覚えたいんだったら話は別ですけど。  | 
  
糸井  | 
    
       深夜番組の、語彙とかが残る(笑)。 例えば、池谷さんは昨日、 寝る前に何をしたんですか?  | 
  
池谷  | 
    
       昨日は論文を読んでました。 哲学書を読むこともありますよ、 アイデアを得たりすることもあるだろうし、 言葉どおり「身になる」から(笑)。 私はこの時間帯を、かなり大切にしています。 ![]()  | 
  
糸井  | 
    
       僕はこれまで、寝る前は 落語をイヤホンで聴いていました。 しかし、このところ1年ぐらいは 吉本隆明さんの講演を聴くようになりました。  | 
  
池谷  | 
    
       それは、きっと糸井さんのなかに、 知らないうちに・・・・・・。  | 
  
糸井  | 
    
       ええ、吉本さんと一緒に 暮らしてるような気がします(笑)。 寝る前の記憶が定着しやすい、ということは、 深夜番組がゴールデンの時間帯に移って ちょっと印象が薄くなったり、 「オールナイトニッポン」のパーソナリティが 親しみを増して人気が出るようなことも 関係あるかもしれませんね。  | 
  
池谷  | 
    
       ああ、たしかに関係ありそうですね。  | 
  
糸井  | 
    
       寝る前に機嫌をよくする、ということを 昔の人はよく言います。 寝る前に嫌なことを考えるのではなく いちばんいいこと考えて よく寝るように、と。  | 
  
池谷  | 
    
       悩みながら寝ると、それが定着しちゃうからかな。  | 
  
糸井  | 
    
       人がダメになる時期って、 その循環をしているような気がします。  | 
  
池谷  | 
    
       お酒を飲む場合にも 似たようなことが起こると思います。 楽しいときにお酒を飲むのは楽しいですが、 悩みながらお酒を飲むと、 だいたいいいことはないですね。 言われてみれば、僕は寝る前には あまり悲しい小説を読まないです。 糸井さんが落語を聴いていらっしゃることは すごくいいんじゃないでしょうか。  | 
  
糸井  | 
    
       落語はいい。 でも、落語は知ってる話を 楽しむところがあるから、 驚きの要素が入っているという点で、 いまは落語より講演がいいですね。 寝入る瞬間をもっと大事にするようにしよう(笑)。  | 
  
池谷  | 
    
       はい。 ですから、私個人の睡眠についてまとめると 長い短いはこだわらないですが ●寝入る前の時間を大切にする ●できる限りいつも同じような時間に寝る ●いつも同じような時間に自然に起きる ということになります。  | 
  
糸井  | 
    
       池谷さんは睡眠を常に大切にしてる、 ということですね。 そのレベルにみんながなるといいね。 ![]() (つづきます。次回は最終回!)  | 
  
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2007-12-11-TUE