トレトレのヒノキオイルは
こんなふうにつくられています。
日本一の清流と言われる高知・仁淀川。
その原流域に暮らし、
自生するお茶やハーブをつかって
和のハーブティをつくっている
tretreの竹内太郎さん。
竹内さんが、仁淀のひとたちと交流し、
そのなかでみつけたのが、
ずっと好評をいただいている
「によどヒノキウォーター」。
じつは、このアイテムができる過程には、
すばらしい「オイル」があったんです。
今回「ほぼ日」でご紹介することになった、
ヒノキのエッセンシャルオイルが
どんなふうにつくられているのか、
竹内さんが、みずから撮影した写真とともに
そのようすを伝えてくださいました。
ヒノキの丸太の、真ん中を。
ヒノキオイルができる工程を、
順々に撮ってみたんですけれど、
ちょうどそのとき、雪で。
このへんはけっこう標高もあるので、
ひと冬に1回は雪が降って、積もるんです。
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まず最初は、ヒノキの丸太ですね。
まわりの白い部分は、すのことか、風呂桶になります。
で、この中心の、色が濃い部分だけを使って
オイルにするっていうことを、僕らはやっています。
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芯のところは目が詰まっていて成分が多いんです。
オイルも、たくさんとれるんですよ。
ほんとに「おいしい部分」だけを使うことができる、
そこが、僕らのオイルの特徴かなと思っています。
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丸太をトリミングして、芯の部分だけにした角材を
フォークリフトで運んで、チッパーにかけます。
どんどん、どんどんチップが出てきます。
だいたい1トンちょっとのチップを、
フォークリフトでワァーっと木の樽に入れます。
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そのあと、おじいちゃんが樽の中に入りまして、
手で流していくっていう、
なんとも原始的な感じなんですけど(笑)。
おじいちゃん、池沢木材工業の大原儀郎さんって、
会長さんなんですけどね。
みずから樽に入って、手で流していく。
これ、おじいちゃんの手です。
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チップの樽を蒸留装置にセッティングします。
蒸留の燃料には、自社から出る端材を使います。
木材会社さんなんで、端材がいっぱい出るんですね。
それをガソリンやガスの代わりに燃やして、
お湯を炊いて、このチップに当てて、蒸留する。
木材を使い切る感じなんですよね。
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お湯も、仁淀の沢からひいた水を炊きますし、
ヒノキチップから出た水蒸気を
油分と蒸留水にするのに必要な冷却水も、
沢の水を使ってるんです。
フォークリフトを動かすガソリン以外は、
だいたい地場のものだけでやっているんですよ。
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沢の水を引くのは、自然の高低差を利用してます。
山の上から、ホースで。
ですから動力ゼロなんですよね。
こういうことを考える大原さんに、
僕ら、お世話になりながら
仕事ができているんです(笑)。
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いま、サステナブル、循環型って言われるけれど、
池沢木材工業では、ずいぶん前からこのかたちです。
10年以上は経ってると思いますね。
僕らが会社をはじめたときも、同じような感覚でした。
身の回りにあるものを使って、
どう心地よく過ごしていくか、っていう、
それがテーマで、僕らも仕事してきてるんです。
繊細に、おおらかに
炊き方にもコツがありまして。
たとえば、どんどん火をくべて、
モウモウと湯気を出してやると、
オイルも蒸留水も、スピード感よく出てきます。
でもそれだと、香りが全然、良くないんです。
それからヤニ分がたくさん出てきて、
透明じゃなくて、赤い色になったりとか。
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しかも、この蒸留機が、屋外にあって、
地温、蒸留機の地面の温度も変化しますから、
なかなか火力が安定しないんです。
冬と夏で、また全然違うんですよね。
絶えず見張って、火加減を調整しています。
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でもね、毎回の蒸留作業の記録、
儀郎さんは、端材に書いてるんですよ。
そういうところは、おおらかなんですよね。
蒸留されたものは、黄色いタンクに出てきます。
油分が上に、水分が下に溜まるような仕組みを
大原さんと相談しながらつくって、
蒸留水はヒノキウォーターになるんですね。
油分は右の白い小さいタンクに溜まって、
ヒノキオイルになるんです。
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白い布で濾しているのがオイルです。
このオイルが、あんまり重たく感じないのも、
特徴じゃないかと思っています。
サラサラしていて、水みたいな状態で出てくる。
香りも良くて、いい感じなんですよね。
これが儀郎さんと僕らが目指している状態です。
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一番搾りのいいオイルだけ
トレトレでは、ここでできるオイルのなかでも、
かなり選び抜いたものをご紹介しています。
僕ら、オイルの成分分析をかけたんです。
例えば出始めから1時間の間は、どういう成分が出るか。
それから次に、4時間後はどうだ。
そういうふうに、24時間ぐらい、分析したんです。
そうしたら、出てくる成分がまったく違うんですよね。
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例えばα-ピネン(アルファピネン)っていう成分。
揮発性が高くて、香りにも含まれる成分です。
最初の1時間はα-ピネンがオイルの80%を占めるんですが、
24時間経つと20%になる。
じゃあα-ピネンが多いものがベストかっていうと、
実はそうでもないってことも分かったんですよ。
ゆっくり出てくる、揮発性が弱い成分もあって、
けっきょく、出始めから約24時間のものをトータルすると、
フレッシュなヒノキオイルになることが、わかったんです。
最初の1時間でも、最後の24時間たったときでもなく、
その中間でもなく、
最初から24時間めまでの全部を合わせた
平均値みたいなものが一番良かった。
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ヒノキの蒸留水って、もう一度火にかけると、
まだ油分がやや出てくるんです。
蒸留水をさらに蒸発させて、油分を絞り取る、
循環蒸留っていう方法なんですけれど、
でもそれをやると、出がらしのようなものが
たくさん入ってくるんです。
僕らのオイルは、それはしていません。
いわゆる「一番搾り」のヒノキオイルだけを、
瓶に詰めています。
フレッシュで、やさしく、おだやかで、
ここの森の清涼感を楽しんでもらえるはずです。
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(おわり)
2021-10-12-TUE