ほぼ日の「おちつけ」インタビュー 子どもにとっていちばんの味方であるために、おちつけ。田中茂樹
子どもと暮らしていると、
不安になったり、悩んだり、焦ったり、
ときにはカッとなってしまうこともあります。
そんなとき、自分に言い聞かせたい
「おちつけ」のことば。

子育ての悩みに20年以上寄り添い続けてきた
医師・臨床心理士の田中茂樹先生に、
親と子がずっといい関係でいるための
「おちつけ」のお話を聞いてみました。
お子さんの受験や就職活動などで、
そわそわしている方に届きますように。
(2)怒りとはどう向き合う?
──
個人的なことで恐縮ですが、
わが家には子どもがふたりいて、
9歳のお姉ちゃんと、6歳の弟です。
じつは、娘がひとりだけだったときには、
子育てにまつわる企画を、
いろいろできそうだなと思っていたんです。
でも、第2子である息子が生まれたときに、
「あ、子どもって
それぞれまったく違うんだ」

と思い知らされました。
わかった気になっていただけで、
無責任にポンポン提案できないぞって。
田中
あ、それは誠実な考え方やね。
ぼくも自分の子どもを見て、本当にそう思いました。
──
男女の差かもしれませんし、
第1子、第2子の差とかいろいろあると思うんですが、
家庭環境でも複雑に絡み合っているのに、
固定観念のように決めつけるようなことは
言っちゃだめだなって思ったんです。
田中
うちは男の子4人ですけど、バラバラでしたよ。
やっぱりね、同じようなことを考えていて、
大学で認知発達とか、脳の発達の研究をしていたから、
研究内容をうちの子にも活かせると思って
いろいろしようとしていたんです。
バイリンガルに育てたいと考えたりして。
外国人留学生のホームステイを受け入れて
英語に触れる環境にしたりね。
そしたら、長男は1歳半ぐらいで「Why not?」とか
いい発音で言うようになったりはしました。
──
それってすごいじゃないですか。
ダメだったんですか。
田中
もっと成長して言葉(日本語)が上手になってくると、
大人たちがたどたどしい英語で喋っていると、
「ちゃんと喋って」って怒るようになったんですよ。
ああ、これは不自然なことをやったなと思って
反省したことがありました。
──
田中先生も、ご自身の経験の中で
考えを改めることがいっぱいあったんですね。
田中
親が思っている方向に
持っていこうとするのは、
とにかく違うってわかりました。

なんか「子育ての正解」みたいな
正しいやり方みたいなのがあって、
そこにギチギチって当てはめていくっていうのは、
もったいないと思うんですよね。
子どもって、そういう生き物じゃないんですよ。
──
ライフハックみたいな情報が
いっぱいありますよね。
田中
こうやったら反抗期を早く終わらせられるよ、とか。
こうやったら中学受験成功しますよ、みたいな。
そんなのいくらでもあるじゃないですか。
──
ぼくも反抗期について、
いつまで続くんだろうと思って、
ネットで検索してみたことがあるんですよ。
「1歳 反抗期」「2歳 反抗期」‥‥と
年齢だけ変えて検索してみたら、
大人になるまで何歳でもヒットするんですよ。
「ずっとじゃん!」ってびっくりしました(笑)。
田中
それはつまり、自立ですよね。
いろんな形で、いろんな時期に、
その子らしさが出てくるってことですね。
──
その子らしさを開花させるために、
親にできることってどんなことがありますか。
田中
それがいちばんかわからないですけど、
親である自分がしたいことを、
できる範囲でする
ってことやと思いますよ。
子どものためにじゃなくてね。

そしたら子どもから見て、
世界はたのしいんだなって思うからね。
──
ああ、その考え方は楽でいいですね。
いろんな習い事をさせなきゃとか、
お受験も考えたほうがいいのかなとか、
いろいろ考えてしまうのですが、
まずは親がたのしむことから。
田中
うん、それがいいと思います。
他のことにはね、出会いがあるでしょ。
子どもだってそうだし、家族全体もそう。
事情とか、偶然の作用がいろいろありますから。
「何をしないといけない・したらいけない」
そうじゃなくて、習い事にしても何でも、
偶然のことっていっぱいあるじゃないですか。
子どもが急になにかをはじめたがったりね。
そういう流れに乗っていけばいいんじゃないかな。
──
親がその流れを作るんじゃなくて、
なるようになっていく。
田中
あとはね、1歳とか言葉を話しはじめた子を
育てているとしたら、ぼくが推奨するのは、
あったことをいろいろ書いて
残すことですね。

メモでも自分宛てのLINEでも、なんでもいいんだけど、
「こんなこと言った」とかよくあるじゃないですか。
おもしろいことを言っても、1年後には忘れちゃいます。
そういうことを書いていったらいいんです。
──
そのときに書いたものって、
いつか子どもに見せるんですか?
田中
あ、それはね、子どもからしたら
見せられてもそんなに嬉しくないと思うんです。
親からあれこれ見せられても
「うざいなあ」ってなるでしょう?
でも、親にとってはすごく大事なものなんです。
あの頃はこんなかわいかった、
こんなことをやってたなって確認できますから。
──
昔の日記やメモを見返すのは、
「なんのために子育てしてるんだっけ?」
と立ち返るのによさそうですね。
田中
うんうん、そう思います。
初心に帰るっていうね。
──
あ、そういえば娘から言われたことで、
「本当に『子どもが幸せになることば』読んだ?
『不幸せになることば』を読んだんじゃないの」
と、逆手に取られたことがありました(笑)。
田中
あはは、それは娘ちゃんすごいわ。
ありがたいですね。
──
ストレスが溜まるときもありますよね。
言うことを聞いてほしいとか、
自分の都合で焦ったり、感情的になったり。
その折り合いがつかなくなると怒ってしまい、
あとで反省することがあります。
田中
そもそも「怒る」っていうのは、
目の前の現実を受け入れない
ってことやからね。

「なんで思い通りにならないの?」っていうのは、
赤ちゃん返りというか、退行ですね。
子どもに返ってわーって泣いたり怒ったりを、
親が子どもにやっている感じです。
──
親である自分の退行なんですね。
自分が子ども時代に親からされてきたことが、
影響するってよく言われますよね。
田中
それもあるでしょう。
自分がその立場になったら、
その役割の人はどう振る舞うのかっていう
モデルの影響が大きいですからね。
自分の親がどうしていたかとか、
先生がどう言っていたかとか、ですね。
──
父や母をモデルにして演じることになるわけですね。
ということは、自分が親として振る舞うときに、
気持ちのコントロールができるようになっていれば、
子どもたちが大きくなって親になったときに、
もっと子育てがうまくいくかも?
田中
うん、そう思います。
さらに大きな話をすれば社会全体でも、
悪い流れが断たれてきていると思いますよ。
20~30年前だったら、
親や先生から怒鳴られるのは当たり前。
正座させたり、走らせたり、
体育会系だったら殴ったり蹴ったりもね。
だけど、そういうのはダメだって
だんだん広まってきたじゃないですか。
いまそんな場面を見たら、ちょっと引くでしょ?
──
うわぁ‥‥って思いますねえ。
家庭でも、学校でも、職場でも、
そうであってほしいなっていう方向に
変わってきてますよね。
田中
社会全体で変わってきていると思いますよ。
昔は普通だった悪い慣習がありましたよね。
親が怒鳴ったりして言うことを聞かせるとか、
伝えるために怒鳴ったりすること自体、
手を出していなくても
「暴力」なんです。

そういう手段しか教えてもらっていなかったら、
同じような場面で子どもに手を上げてしまいます。
でも、そうじゃない方法で伝えたいですよね。
──
カッとなると冷静な判断ができませんよね。
どんなことを意識したらいいですか。
田中
まずは、子どもが「怯(おび)えている」
っていうのを
意識することからはじめましょう。

叱られる子どもの立場になってみれば、
怯えていると思うんですよ。
自分が親になって、たとえ意識していなくても、
子どもの時に怖かった「親」の役割を
果たそうとしているんだと思うんです。
「大きい声はダメだ」「叩いたらダメだ」、
それを意識するのはもちろんだけど、
「監禁もダメ」やからね。
──
閉じ込めたりすることですか。
田中
いや、閉じ込めるだけやなくて、
長い説教をすることだって監禁にあたります。
昔はね、とにっかく説教が長かった。
ぼくは60歳なんで、いまは違うと思いますが、
学校の先生の説教がもう長くて長くて。
誰かひとりが悪いことしてるだけで、ずーっと説教。
そんな長い説教を家でやったらダメです。
「怒鳴ってもない、叩いてもない」って言うけど、
「聞きなさい」とずっと説教したら、
それはもう監禁罪みたいなもんですよ。
自由を奪うっていう暴力やから。
──
わかりやすい暴力はしていないし、
どこかに閉じ込めるようなことでなくても、
違った形で押し付けてしまうんですね。
(つづきます)
2026-02-01-SUN
2月4日(火)午前11時発売
ほぼ日の「おちつけ」グッズに
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「おちつけ」グッズの新アイテムを、
ほぼ日ストアにて販売をはじめます。
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ほぼ日の「おちつけ」五角鉛筆(3本セット)

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バッグやお洋服などに、飾って「おちつけ」。
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ほぼ日の「おちつけ」アクリルキーホルダー

660円(税込)
発色がきれいなアクリル製のキーホルダーに、
レーザー加工で「おちつけ」の書を刻印。
鍵や小物を取りつけて、おちついた日常を。