2025年の「海大臣」。

まずは残念なおしらせから。
有明海の海苔は、今年も不作です。

最盛期の2002年に日本国内で
100億枚とれた海苔ですが、
今シーズンは55億枚ほどにおちついています。
地域それぞれにすこしずつ用途が異なることから、
単純な比較はできないものの、
海大臣のふるさと・有明海の状況は
あまり明るいものではありませんでした。
かつて生産量日本一をほこった
有明海・佐賀産の海苔の収穫量ですが、
今、兵庫県に一位の座を明け渡し、
取引価格も、各地で平均して、
4年前の倍になりました。

有明海の生産者たちのあいだで
どんな努力が行なわれていたかを
相沢さんにききました。
まず、秋芽の海苔ですが、
一番摘みは、昨年ほどの良い出来ではないものの、
今後に期待できそうだぞ、という、
なかなか評価のできる海苔がとれました。
そこで、秋芽は、3回収穫したところで
海からあげて冷凍網に張り替えるのが通常ですが、
今シーズンは、なるべく秋芽の量を確保しようと、
5回まで収穫を行なっています。
秋芽の一番摘みの評価が高いのは例年通りですが、
二番、三番、四番、五番と回を追っても、
味が思ったように育たないまま、
しかし全体的な海苔不足が影響し、
収穫した海苔の価格は落ち着かず、
むしろ、徐々に高騰していきました。

「海苔屋は、すこしでもうまい海苔を
適正な価格で集めようと必死でした」

と相沢さんは言います。

ある程度育った海苔を冷凍しておき
海が冷たくなってきてから使う「冷凍網」の張り込みは、
通年ですとクリスマス近くの大潮の日。
でも今シーズンは年が明けても
有明海には秋芽の網が張られたままでした。

同じ有明海でも佐賀と福岡の漁協は
それぞれ冷凍網を別の日に張る決断をし、
より遅くに張った福岡は、
海が冷たくなって海況がよくなっていることから
いい海苔がとれるかもしれないという
期待が集まったのですが、残念ながら、
思うようには味が育たなかったといいます。

ちなみに今シーズンの有明海では、
赤潮の発生や、海水温が1.7度~2度高いことなどが、
海苔が育ちやすい海況をじゃましたのだそうです。

林屋海苔店の相沢さん、
思い切った決断が功を奏す。

今シーズンの「海大臣」選考会に
相沢さんが持ってきてくださった海苔は、7種類。
例年ですと10種類以上、多いときは20種類ほど
集めてくださるのですけれど、
この数の少なさからも、
今シーズンの「あまりよくなかった」状況がわかります。

7種類すべてが福岡産。
そのうち5種類が秋芽の一番摘み、
2種類が冷凍網でした。
さらに秋芽のうち3種類は同じ生産者が、
張り込む日、収穫する日を微妙に調整し、育てたもの。
ちなみに「育てる」というのは、毎日2回船で沖に出て、
海水温や塩分濃度(雨の日は薄くなるのです)をみて、
網を上げたままにしたり、調整したりする作業。
海苔を育てるのは一年のなかでも
いちばん寒い時期ですから、たいへんな仕事です。

ちなみに「昨年、すばらしい海苔をつくった」
生産者のかたも、ことしは出来が‥‥、
という状況が多々あったそうです。

そんななか、相沢さんは、昨年の経験をいかし、
「秋芽の一番摘み」に賭けました。
もしかしたらそのあとが期待できないかもしれないし、
そこからもっとおいしい海苔がとれればそれでいい、と。
そして現実は、後者に。
結局「秋芽の一番摘み」を超える
深い味の海苔は、ほとんどとれなかったのだそうです。

並んだ海苔の色は、どれもうすい緑色。
ツヤのある海苔もありますが、
「小穴が多く、すこし曇っている」と表現してきた
海大臣のおなじみのすがたとは、すこし違いました。
けれども「ほぼ日」の海大臣は見た目ではなく、
じっさいに食べてみて選ぶのが通例。
例年のように、まずはそのまま食べてみて、
そのあと、糸井重里が親しくしているおすし屋さん
「はしぐち」さんにお手伝いいただき、
すめしを巻いて食べてみてそれぞれが考え、
その後、合議でことしの「海大臣」を決めました。
選考委員は7人。
糸井重里、相沢さん、飯島奈美さん、
そして「ほぼ日」の
「海大臣」担当チームが参加しました。

結果は、驚くほど一致。
相沢さんが思い切って買い付けてくださった
「秋芽の一番摘み」のなかの4種類
(それも同じ生産者の海苔3種類を含む)を
「海大臣」としてみなさまにお届けしましょう、
ということになりました。

お米と合わせると味がひらく。
今年の海大臣は、そんな海苔です。

なんどもしつこいことを言いますが、
今シーズンの「海大臣」は、
“あの、とんでもなくおいしい海苔が採れた年”
のものとはちがいます。
「まずは、そのまま食べてみてください」
とは、言いづらい。
けれども、お米や料理と合わせたときに、
ぐん! と加速するように、味が出ます。
審査はすめしでしたけれど、
お米と合わせたときの実力はたいしたもの。
「ごはん点が高い」と糸井重里は言いましたが、
ほんとうにそのとおり。
これまでに発表した飯島奈美さんの海苔レシピから
ごはんと合わせた料理をまとめましたから、
それも参考に、今シーズンの「海大臣」、
おめしあがりください。

海大臣 二〇二五夏販売
5,500(税込・配送手数料別)

原材料:乾海苔(国産)
内容量:30枚
賞味期限:2026年8月
保存方法:直射日光・高温多湿はお避け下さい。