白井 ぼくが愛してやまない、 コットン100％の「ハイブリッドラマ」。 FIROがスタートしたときからの 名刺がわりにもなっている素材ですが、 染めるのも縫うのも、あつかいが本当にたいへん。 なかなか思いどおりにならないし 手間がかかって毎度苦労させられますが、 コストに見合わなくてもこれは残していかなくちゃいけない。 素材界の“宝”なんです。 気軽につかえないし、 リスクもあって続けることもむずかしいですが、 そんなことを悠々と超えるほどの 着心地のよさがあるからやめられない。 ぼくは１点１点目で見ているから つづけてこられているのだと思います。 じぶんの体がもつかぎり、 協力してもらえる染屋さんや縫製メーカーさんがいるかぎり、 ハイブリッドラマはつづけていきたいですね。

佐伯 この夏はほぼハイブリッドラマで過ごしました。 身のまわり品で手ばなすものが増えていくなかで、 ハイブリッドラマはずっと手元においておきたいもの。 ハイネックのカットソーはお気に入りのひとつ。 一見同じように見えても、毎年、毎シーズンごとに サイズやシルエットを見直しているんですよ。

オーバーサイズというほどではないですが、 ほどよくゆとりのあるシルエットをキープしつつ、 ことしは身幅や肩幅をややコンパクトにしています。 裾も以前よりしぼっていて、 ウエストでしぜんにとまりブラウジングするように。 ネックのつまりの感じも、 つかずはなれずやさしいフィット感です。

生地に厚みがないから、 インナーとして着てもじゃまになりません。

白井 ハイブリッドラマの厚手のものがほしくて 何年もかけて試作していたのですが、 ようやく納得いくものができました。 ハイブリッドラマの４代目にあたる、 「ハイブリッドラマ４」。 強撚した綿糸をスムース編みにしたのにやわらかいという、 本来なら相反することが両立できた、奇跡の生地です。 生地をつくるにあたって、 やわらくて落ち感があることはゆずれませんでした。 強い撚りをかけるとゴリっとかたくなってしまうんですが、 原綿のランクを上げることで、 やわらかさもかなえられました。 スムース編みは、両面つるっときれいな編み地になって 伸縮性もいいんですが、ウレタンが入っていたりすると、 のびて縮んだときにポコッとかたちが 残ってしまうことがあります。 でも、これは強撚しているので、のばしても元どおり。 のびかたも倍以上、の約2.3倍のびますから すごく着やすいと思います。 厚手ゆえに白でもほとんど透けませんので、 ぜひ素肌に直接着てみてください。

佐伯 素材じたいがすばらしいので、 誰もが着やすく、きれいに見える シンプルなかたちを選びました。 首元もつまっていますが、 ぐいんとのびるので脱ぎ着も苦になりません。

袖丈はやや長めなつくりなので、 袖口でとまって、くしゅっとニュアンスがうまれます。 デザインとして効いているのが、着丈の前後差。 後ろのほうをやや長くすることで、 一枚で着ていただいたときに 外着としての見え方がつよまります。

白井 ハイブリッドラマはコットンですが、 ウールのアイテムもFIROのもうひとつの自信作。 14.5マイクロンという、 極細のスーパーエキストラファインメリノを使っています。 「繊維の宝石」といわれるベビーカシミヤと同じくらいに 繊維が細く、上品な光沢があって、とろっとろでやわらかい。 カシミヤでもそうですが、 ふつうこれだけやわらかいと毛玉ができやすいのに、 これはふしぎなほど毛玉になりません。 自宅で洗濯できるように、 染めの工程で「スケール」とよばれる 毛のウロコ状の表皮をとっているんですが、 それが結果的にピリングしないひみつかもしれません。 チクチクする感じもないですし、 にわかにウールと信じがたい着心地を、 一度でいいから体験してみていただきたいです。

佐伯 FIROのハイネックワンピースが好きで、 このかたちのウール素材がほしいと リクエストしてつくっていただきました

ここ数年、冬があまり寒くないから、 これぐらい薄手のウールがちょうどいい。 もともと厚手のセーターが大好きなんですが、 温暖な気候のせいで出番が減っているくらいで‥‥。 フルレングスの丈感でＡラインがきれいですし、 スリットは入っていませんが足さばきはらくらく。 たっぷりとした生地の分量がありますが、 落ち感があるので着やせして見えると思います。 これにアウターをはおれば、 真冬も乗り越えられそうな気がします。

カーディガンは一般的なものより襟ぐりを狭めに。 これぐらいつまっているほうが 品よく見えて、着やすいと思いませんか？

このカーディガンもコートやジャケットの下に、 春夏にはちょっと寒いときのはおりとして、 季節を問わず着ていただけるかなと思います。