勝手につくった
「G.F.G.S.」のボーダー。
今週、「5DWメンズショップイシカワ」で登場するのは、
新潟県加茂市のカットソーブランド
「G.F.G.S.」につくってもらった
「5DW」新作のボーダーカットソーです。
「G.F.G.S.」といえば2023年に
リサイクルポリエステルを使った
クレイジーパターンのボーダーカットソーを
つくってくれたブランド。
今回、ご紹介するのは、
店長・石川顕さんが当時から「G.F.G.S.」と相談、
仕込んでくれていた
渾身の新作ボーダーカットソー。
手描きの言葉をグラフィックデザインに落とし込み、
どうにかこうにかプリントした
職人泣かせの手の込んだ一枚です。
言葉のグラフィックを描いた
アーティストの豊田弘治さんには
やりとりされた当時のことを。
苦労の末に製作していただいた
「G.F.G.S」の小栁雄一郎さんにはその製作過程を
ちょっと聞いてみようと思います。
今回は前編後編でお届けいたします。
- ――
- 今回のボーダーは石川さんからいつ頃
発注があったものだったんですか?
- 小栁
- 2023年にはサンプルが出来上がっていたと思います。
かなり温めた企画になりましたね(笑)。
石川さんからのお願いって、
どれも大変だし、時間がかかるものなんですけど、
とにかく一緒にやれるのが楽しいんです。
わざわざ加茂にも何度も来てくれましたしね。
いつもだいたい、いろんな案を投げるだけ投げて
帰っていきますけどね。
- ――
- このボーダーの製作も
やっぱり大変でしたか?
- 小栁
- まあ、そうですね、
石川さんの依頼はほとんどが無茶ぶりですから。
以前、「ULTRA HEAVY」で
Tシャツの真ん中で2色に分かれている
ボーダーをつくったときは、
はっきり言って赤字でしたし、
印刷工場泣かせのものが多いですね。
今回のものは、フリーハンドで描かれたものを
プリントしてと言われましたが、
これもはじめてのことでした。
ですので、フリーハンドのものを
再現する意味を聞いてみたんですけど、
「意味なんてないんだよ、カッコいいだろ」
って言われました。
- ――
- そのフレーズは聞いたことがありますね。
- 小栁
- 本来プリントって、
印刷工場で決められている大きさがあるんですけど、
このボーダーに入る言葉のグラフィックだと
ちょっと入りきらなくて。
分割して、スキャンして、データ化して、
それを印刷工場に送ってとやったんですけど、
石川さんに「なんか迫力ないな」って言われて、
もっと限界まで大きくして刷ってもらいました。
上と下に分けて2回印刷しているんです。
こちらとしては、こういったプリントって
ズレたりしがちですし、
それってよくないという認識なんですけど、
石川さんは「失敗なんてないんだよ。
ちょっとズレててもいいんだよ」って。
- ――
- 正確さよりも、クラフト感なんですね。
言えば、プリントだって
一点一点ハンドメイドみたいなものですしね。
でも、あらためて作業工程をお聞きすると
このプリントだけですごいことになっていますね。
- 小栁
- かなりおもしろいと思いますよ。
石川さんとのお仕事って、
ふつうのアパレルのつくり方とはまるで異なりますから。
ほかのところはシステマチックに進んでいくのですが、
「現場に行かないとはじまらないから行くよ」と言って、
まず加茂までいらっしゃいますからね。
それで、ふんわりとしたイメージで依頼されるんです。
ですので、こちらとしては、
実験を繰り返すような感覚で仕事を進めていくんです。
依頼内容がこれまでにやったことがないものなので、
そこから長~い道のりがはじまります。
- ――
- あらためて、本当にありがとうございます。
- 小栁
- ちなみに生地は、前回つくったものは
リサイクルポリエステルでしたが、
今回はオーガニックコットン98%に、ストレッチ材2%。
素材も石川さんがお持ちだった
「agnès b.」のものに寄せました。
石川さんなりのアニエスがあったのだと思います。
ボーダーの白いほうは白じゃなくて生成りにしています。
この生成りはオーガニックコットンそのものの色です。
ネップ(*1)も入っているので、そういったところも
気に入られていたんじゃないかなって思います。
(*1)糸のかたまり。繊維が絡み合ってできた節。
- ――
- 同じボーダーでも、まるで違いますよね。
ちなみに、小栁さんが
ボーダーカットソー専業になった理由って
あるんですか?
- 小栁
- 実家が縫製業を営んでいたんです。
でも、縫製業は儲からないから継ぐなと親に言われ、
同じ新潟は燕三条の刃物メーカーで働いていました。
40歳を過ぎた頃に、
リーマンショックで実家が倒産に引っかかって、
縫製業を廃業するかどうかとなったときに、
もともと服が大好きでしたし、
兼業で引き継ぐことにしたんです。
最初はアメリカの「CAMBER」(*2)のような
ぶ厚いコットン地のカットソーを
つくろうとしていたんですけど、
日本にはフランスみたいに
ボーダーだけをつくるメーカーってないなと思い、
カミさんがG.F.G.S.の原型を作り
ボーダー専業にしたんです。
マイナスからのスタートでしたが、
石川さんたちとの出会いもあり、
なんとかここまでくることができました。
石川さんは、僕たちみたいな小さなファクトリーが
好きでしたし、すごく応援してくれていましたからね。
(*2)1948年創業のアメリカのブランドで、ヘビーウェイトの無地のスウェットやTシャツをアメリカで生産。
2025-02-22-SAT
(おわりです)
「5DW」による「G.F.G.S.」の
スペシャルボーダーカットソーは
5DW WEBショップにて2月26日(水)AM11時発売!
[STAFF]
企画・プロデュース:石川顕
スタイリング:野崎未菜美
ヘアメイク:勝健太郎
モデル:沖ちづる(168cm)、佐藤岳(182cm)
撮影:吉嗣裕馬
文:小笠原民織