サンパチマイクが、生まれる場所。

サンパチマイクが、生まれる場所。

糸井重里、大分県の「ソニー・太陽」へ。

サンパチの愛称で知られる
ソニーのコンデンサーマイクロホン
「C-38B」をつくる工場は、
日本、いや、世界で1か所しかありません。

もっというと、その工場のなかでも、
サンパチを組み立てられるのは、
限られた職人さんのみだそうです。
そんな特別な場所「ソニー・太陽」へ、
糸井重里が向かいました。
そこで見た光景、聞いた話、感じたこと、
全5回にわけておとどけします。
#03 サンパチマイクの樋口さん
佐藤さん
こちらが「C-38B」の作業場になります。
担当は、樋口です。
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▲ソニー・太陽株式会社:プロダクトビジネス部 樋口映子さん
糸 井
ごくろうさまです。
お仕事中にすみません。
お話をうかがってもいいですか。
樋口さん
もちろんです。
ようこそお越しくださいました。
糸 井
いま手にされているものは、
もう完成なんですか。
樋口さん
もうほとんど完成ですね。
写真
糸 井
ここまでくるのに、
どのくらいの時間がかかるんですか。
樋口さん
まとまった数をつくるのに、
だいたい2週間くらいだと思います。
梱包まで入れるとそれくらいかかりますね。
糸 井
梱包も樋口さんが?
樋口さん
はい。
完成品の検査から梱包まで、
ぜんぶじぶんでやります。
糸 井
最後までできるというのは、
やっぱり気持ちいいものなんでしょうね。
みんなでちょっとずつ分担するのと、
またちがうと思うんですけど。
樋口さん
最後の梱包までできるのは、
やっぱりうれしいですね。
糸 井
こういうものって、
いわゆる工芸品にも近いですよね。
中身の部品が多少変わるとしても、
60年前の車がいまでも走ってるってことですもんね。
樋口さん
そうですよね、ふふふ。
糸 井
ごじぶんで使う道具なんかも、
ずっと同じものを使っているんですか。
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樋口さん
新しくつくったものもあるんですけど、
私の前にサンパチをつくっていた方のものを、
そのまま受け継いだりもしています。
糸 井
いまおふたり並んで作業されてますけど、
となりの方とはちがう工具なんですね。
樋口さん
あ、そうですね。
じつはおとなりの田中さんは、
つくっている製品がちがうんです。
田中さんは「C-800G/9X」をつくられています。
糸 井
あ、そうか、ちがんですね。
さっき佐藤さんから、
必要な部品が取り出しやすいように
作業台に工夫をしていると聞いたんですけど、
たしかに部品の数がすごいですね。
樋口さん
詳しい数は言えないのですが、
小さいものを合わせると、
かなりたくさんありますね。
糸 井
それをひとつずつ手作業で‥‥。
つまり、うちにあるサンパチも、
樋口さんがつくられたってことですね。
樋口さん
糸井さん、サンパチをお持ちなんですか?
糸 井
じつはこのあいだ買ったんです(笑)。
樋口さん
そうだったんですね(笑)。
えー、うれしいです。
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糸 井
ほんとうにぜんぶの作業を、
ひとりでやられてるとは思っていませんでした。
音のテストまでされているとは。
樋口さん
さっきご覧いただいた無響室で
完成品の音をヒアリングするんです。
となりに大きな機械があるんですけど、
トレースというもので波形を見たりとかですね。
糸 井
つまり、目で音を確認して、
常に同じ品質になるようにするんですよね。
はぁぁ、すごいですね。
樋口さん
いえいえ。
糸 井
なんかうれしくなっちゃったなぁ(笑)。
ここでサンパチが生まれているんですね。
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樋口さん
よろこんでもらえてよかったです(笑)。
佐藤さん
じつはこのあと、
サンパチの音について詳しいエンジニアを
会議室に呼んでいますので、
そちらのほうにご案内いたします。
糸 井
お仕事中におじゃましました。
お話をどうもありがとうございました。
樋口さん
こちらこそありがとうございました。
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糸 井
(会議室に向かう廊下で)
ここにもサンパチが並んでますね。
佐藤さん
ここに並んでいるのは、
これまでソニーでつくったマイクの一部です。
糸 井
これは、サンパチマイクの前のもの?
佐藤さん
現在「サンパチ」と呼ばれるのは
「C-38B」のことなんですが、
どうして「サンパチB」かというと、
その前に「サンパチA」があったからなんです。
もっというと、その前に「サンナナ」があります。
現在のかたちになるまでに、
じつはけっこう歴史があるんです。
糸 井
サンナナは、ちょっとデザインがちがいますね。
あ、こっちにはガンマイクも。
そもそも「ソニー・太陽」は、
どうしてマイクをつくることになったんですか。
佐藤さん
理由はいろいろあるようですけど、
取り回しの良さとかハンダ付け作業とか、
障がいのある方が活躍できる製品ということで、
マイクロホンになったという話があります。
糸 井
その前の時代もあったってことですよね。
佐藤さん
その前もいろいろありました。
最初はラジオをつくっていましたし、
ウォークマンの時期もあったそうです。
糸 井
そうか、ラジオね。
ぼくはリアルタイムで
ソニーのラジオを知っている世代ですから。
佐藤さん
じつは、サンパチのあとに
「ヨンパチ」というのも販売したんです。
でも、ヨンパチは人気が出ないまま生産終了。
結果、サンパチだけが生き残りました。
糸 井
そういうこともあるんですね。
「風の中のすーばる♪」ですね(笑)。
佐藤さん
はははは。
糸 井
サンパチは「38」だけど、
最近のものは製品番号の数字が大きいね。
写真
佐藤さん
C-80、C-100‥‥。
半端な数字でいうと、
「907」とか「672」なんかもあります。
糸 井
これなんか銀河鉄道だもんね。
佐藤さん
「999」ですね(笑)。
糸 井
いやぁ、おもしろいね。
まさかマイクの工場見学が、
こんなにおもしろいとは思わなかった(笑)。
写真
(つづきます)
2026-04-01-WED