| 糸井 | 
        横石さん、おひさしぶりです。 
          きょうはご足労いただいて、すみません。           | 
      
      
        | 横石 | 
        いえいえ、どういたしまして。 
          たのしみにして来ました。 
          お久しぶりに会えるので。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        最近はいかがですか? 
          上勝の町は。           | 
      
      
          | 
        
      
        | 横石 | 
        まぁまぁ、調子いいです。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        そうですか、調子いいですか。 
          おばあちゃんたちもお元気で。           | 
      
      
        | 横石 | 
        はい、元気で。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        いいですねー。           | 
      
      
        | 横石 | 
        でもね、糸井さん、 
          おばあちゃんたちだけじゃなくて、 
          最近はですね、 
          若い子がすごい増えてきたんです。           | 
      
      
          | 
        
      
        | 糸井 | 
        若い人が。 
          相対的に増えたということですか?           | 
      
      
        | 横石 | 
        田舎へ行って自分の役割を持ちたい 
          という都市部の若者が増えてきたんです。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        あーー。           | 
      
      
        | 横井 | 
        去年ね、糸井さん、 
          期間限定農業体験プログラムに参加したい人を 
          50人募集したんですよ。 
          そしたら応募総数が1500名を越えました。          | 
      
      
        | 糸井 | 
        へえええー!           | 
      
      
        | 横石 | 
        上勝ではたらきたいという若者が、 
          ずらーっと。 
          東大、慶応、早稲田を出たような子たちが。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        はあー。           | 
      
      
        | 横石 | 
        自分が認められたいというか、 
          自分の居場所に立ちたいというか、 
          そういう若者が増えてきたんですね。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        ‥‥来たんですねぇ、時代が。           | 
      
      
        | 横石 | 
        大きく変わりましたね。 
          今まではやっぱりお金とか役職とか名誉とか、 
          国家公務員は安定しているとか、 
          そういう基準でしたけど、 
          今は満足感がちがうところへ来たと思います。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        いや、きょうお話したかったことも 
          まさしく、そういう感じなんです。 
          お金の話。 
          まさに変化の時期ですよね。           | 
      
      
        | 横石 | 
        変化してますね。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        ですから今のお話も、 
          「お金じゃない」っていうことも含めて、 
          やっぱりお金の話ですよ。 
          ものすごくややこしいですけど。 
          でも明らかに物事はそっちへ動いてますよね。           | 
      
      
          | 
        
      
        | 横石 | 
        動いてます。 
          もう確実に来ましたね。 
          今までこんなことはなかったです。 
          一昨年くらいからその傾向が見えて、 
          急速にグーッと伸びましたね。 
          なぜこうなったのかはわからないけれど、 
          そういう流れがやって来ました。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        よく、ぼくが人に言ってることなんですけど、 
          「お金を集めてから手に入るものが、 
           集めなくても手に入るなら、 
           みんなそっちに行くよね」 
          っていう。           | 
      
      
        | 横石 | 
        まさに今、こういうことが。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        つまり、 
          「お金が貯まったら上勝みたいなところに行って 
           自分に合う仕事をしたいんだよなあ」 
          っていう人がたくさんいましたけど、 
          お金を貯めなくても 
          すぐ行けるようになったんですよね? 今は。           | 
      
      
        | 横石 | 
        そうです。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        はあー。 
          それが本当になったのか‥‥。 
          や、うれしいですね。           | 
      
      
        | 横石 | 
        そうですね、うれしいことです。 
          「こうなればいいな」という願望が、 
          実感できるようになってきたので。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        おもしろいなぁと思うのは、 
          日本には1億人以上の人が住んでいるわけだから、 
          「1500人集まりました」っていうのは、 
          1億の内の1500人ですよね。 
          だからそういう意味でいったら、 
          ほんのちょびっとなんですよ、1500人は。           | 
      
      
        | 横石 | 
        ええ、ちょびっとです(笑)。           | 
      
      
          | 
        
      
        | 糸井 | 
        だけど、その1500人は、 
          今まで1億2千万人の中にいなかった。           | 
      
      
        | 横石 | 
        いなかった。 
          昔はほとんどいなかった。 
          ──で、これはもっと来ると思います。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        そうですか。           | 
      
      
        | 横石 | 
        もう、上勝町は、 
          「おばあちゃんの葉っぱビジネス」 
          だけではなくなりますよ。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        はぁー、おもしろいねぇ〜。           | 
      
      
          | 
        
      
        | 横石 | 
        本体が変わってきましたから。 
          若者とおばあちゃんとが 
          コラボレーションするような舞台が。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        できてきた?           | 
      
      
        | 横石 | 
        できてきましたね。 
          そういう舞台が新たに。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        そうですかぁ〜。 
          でも、そもそも横石さんは、 
          永遠に葉っぱビジネスを拡大していこう 
          とは思ってまいせんでしたよね?           | 
      
      
        | 横石 | 
        おっしゃる通りです。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        そうですかあ〜。 
          前にお会いしたときから 
          けっこう時間が経ってますけど、 
          そんなことが起きてましたか‥‥。 
          世の中としては 
          リーマンショック以後の大不況があって 
          絶望感ばかりがかき立てられてますけど 
          上勝ではその逆のことが起こっていた、と。           | 
      
      
        | 横石 | 
        ということになりますね。 
          すごい現象だと思います。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        おもしろ〜い(笑)。           | 
      
      
        | 横石 | 
        見てください、これ、 
          うちの新しい社員なんですけど、こんなんです。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        うれしそうだねぇ。 
          写真の撮られ方がうれしそうだ。           | 
      
      
          | 
        
      
        | 横石 | 
        大手の銀行に受かってた子が 
          それを蹴ってうちに来たりしてるんです。 
          たぶん給料は半分以下になりますよ。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        そうですかぁ(笑)。           | 
      
      
        | 横石 | 
        価値観はお金じゃないんですね。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        でも同時にそういう子たちは、 
          お金を馬鹿にしてる人たちじゃないですよね?           | 
      
      
        | 横石 | 
        ぜんぜんちがいます。 
          お金を馬鹿にする子じゃない。           | 
      
      
          | 
        
      
        | 糸井 | 
        そこがおもしろいところですよ。 
          いやあ、いいニュースですねぇ。           | 
      
      
        | 横石 | 
        ええ。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        ほんとうにいいニュースですよ、これは。  
             
          (つづきます) |