もちろん、
バレンタインです。
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「バレンタイン」といっても
「プレゼント」とか「本命」とか「告白」
という意味ではないことを
おそらく共有してくださっているのではないかな
と、思うのです。この部屋では。
わたし自身、遅まきながら気づいたのですけど、
ここでは「バレンタインです」といったら
ただ「チョコレートです」の意味です。
そうはいっても
「贈り物としてはさておき‥‥」とか
「本命の方へだと素っ気ないかもしれませんが‥‥」とか
チョコを書くにあたって
バレンタインという時期のもつ
甘やかな雰囲気に配慮してるふうを装って
きたりしてきましたけど、
もう、まぎらわしいなと。
「バレンタイン」は一直線に
食べたいチョコを書く。
こういう理解でお願いできれば幸いです。
ん? ずっとそうでしたよね? と
思われてる気も
なんとなくしますけれど。
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ひと箱で、
160年を味わえるチョコだそうです。
ノイハウスは、
チョコレートの本場ベルギーの首都ブリュッセルに
本店を置く1857年創業の老舗。
薬局として開業したジャン・ノイハウス氏が
お客さまが飲みやすいようにと
苦い薬をチョコレートで包んだことから
160年に及ぶ歴史ははじまったといいます。
そういえば、マリー・アントワネットも
「薬が苦い。。。」と飲みしぶったことから
おかかえの薬師が工夫して、
薬を包むオブラートみたいなチョコレートが誕生したという
逸話もあった記憶が。
薬師、そうとう苦労したんでしょうね。グッジョブ。
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このボックスは、“HISTORY”と名づけられていて
ノイハウスの歴史が14粒のチョコレートに
ぎゅっと詰め込まれているとか。
それぞれに名前と
そのひと粒のあらわす年が記されています。
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例えば、1857年のGalerieは
創業の場所をあらわしていて、
1912年のJeanは
ノイハウスの3代目、ジャン・ノイハウスJr のこと。
彼は、ボンボンショコラの発明者だそうです。
ボンボンショコラといったら、
チョコの中に、やわらかいチョコ(ガナッシュ)とか
ナッツのペースト(プラリネ)とか、
お酒(リキュール)とかいろいろ入ってる、
板チョコじゃないタイプを指しますけれど、
バレンタインのチョコといえば、ほとんどがそうですよね。
断然、板チョコを贈る派もいらっしゃりつつも。
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大航海時代、コロンブスがスペインに持ち帰った
カカオは、だんだんとホットチョコレート、
つまり飲み物として人気を博し、
産業革命を経て、やっと固形のチョコレートへと変貌。
同時に機械化で世界中に広まっていくわけですが、
ここまでは、まだ“飲む”か“固い”形態だった
みたいです。
それを、なかにやわらかいフィリングを入れて
ボンボン(ひと口サイズの砂糖菓子)みたいな
形のショコレートを生み出したのが、
3代目のジャン・ノイハウスJr氏。
歴史でも“中興の祖”とかいいますものね。
家光とか、3代目はキーなのかな。
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薬局を開業したおじいさんを継ぐ3代目としては
薬を包む形態に、知恵をしぼったのでしょうね。
言われてみれば、
オブラートみたいに薄いとしても
チョコで薬を包むより、
中がやわらかいチョコに薬を混ぜて? 押し込んで?
処方する方が、むずかしくなさそうです。
で、このボンボンショコラは
チョコレートの概念を変えるくらい
すごい発明で大人気だったけれど、
それまでのチョコレートより、もろくて
運ぶ時にこわれやすいのが難点。。。。
そこで、1915年のLouiseというひと粒に
つづくわけですが、
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ルイーズは、
ボンボンショコラをエレガントな箱で売るという
解決策を編み出したジャン・ノイハウスJrの妻。
きれいな箱で売り出されたことで、
チョコレートは“薬を包む”以上に“ギフト”に
シフトしていったわけですよね。
今年のバレンタインも
思い思いのギフトボックスに包まれた
チョコレートが並んでますけれど、
その中身のボンボンショコラの発明は夫で
最初のボックスをデザインしたのが妻なんて、
なんとパーフェクトなチームワーク。
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えーと、
14粒ぜんぶ紹介してたら、相当な長文になるので
このへんでやめます。
このHISTORYという箱を開けると小さな冊子
というか、ブックレットが入ってて
英語でそれぞれ詳しい説明が添えてあるのですね。
正直にいうと、端折りながら訳すことに
若干つかれてきたので、ご興味のある方はぜひ
原文をゆっくりおたのしみいただければ。
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チョコレートの説明を
こんなふうに読みつないでいくと、
世界史そのものがダイレクトに
つたわってくるのですよね。
新大陸のメソアメリカから
ヨーロッパにもたらされて、
最初は飲み物として王族・貴族の間で流行って
王女さまのお輿入れのときに別の国にわたって
そのうち庶民にも広がって。
コロンブスも出てくるし、
ナポレオンの大陸封鎖令も関係するし、
産業革命で飛躍的に生産量は上がったけど、
相変わらずチョコは貴重で人気なものだから
帝国主義の到来でカカオ栽培が
植民地のアフリカやインドネシアに拡散した結果、
過酷な労働問題といった負の側面も生まれていく
という。。。
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それほど貴重な嗜好品だっただけに
名だたる老舗が、それぞれの国に。
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イタリアのカファレルは
創業1826年。
現在も、200年近く前に誕生した
トリノの街に店を構えているといいます。
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こちら、
オーストリアの首都ウィーンのデメルは
創業1786年。
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パッケージの
色使いやイラストにも
伝統の重みを感じさせるのは、
さすがです。
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スペイン最古のショコラティエは
1797年創業のアマリエ。
アマリエの3代目は
チョコレートにかける情熱と
同じくらいの熱量で芸術を愛し、
アルフォンス・ミュシャのパトロンとしても有名。
バルセロナを芸術の都へと高めるひと役を買った
存在でもあるそうです。
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チョコレートの代名詞のような老舗は
もちろん、まだまだほかにも。
とにかく、深いですなぁ。。。
勝手に綴っただけだけど、
いやぁ、満足。
チョコをつまみながらだと、もっと満足。
この部屋では、
今年も完全な自己満足に終始した
2/14でしたけれど、
どうか、よいバレンタインを♥
わたなべ まり
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