あけまして
おめでとうございます。
おだやかなお正月を
迎えていらっしゃるでしょうか。
今年は、
黄金色のマドレーヌからはじめるのは、
いかがでしょう?
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焼き菓子、
おいしいですよね。
生クリームやバタークリームの豊かな味わいも、
チョコレートやフルーツの特別感も捨てがたいけど、
バターの香りたっぷりのシンプルな
焼き菓子の風味は、なにものにも代えがたい。。。
と、思いませんか?
同意を求めすぎてて、こわいですか?
年のはじめから。
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それにしても、見てるだけで
いい香りがただよってきそうな、この気配。
なんか、ちょっと気持ちを切り替えたい時は、
ひとかけらの菓子が一番ですよね。
ん?わたしだけじゃないですよね?
これも。
このマドレーヌ、
実は、あの銀座に本店のあるミキモトさんが
作っているのですよね。
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あこや貝から生まれる真珠だから、
貝の形の菓子=マドレーヌを作っているのだとか。
これがですね、
とてもしっとりとしていて、
不必要なものをまったく足していない感じで、
実に、おいしいのです。
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宝石は、きれいだなぁ〜と思うものの、
身につける機会も限られるし、そもそも手が届きにくいし、
詳しい方ではないのです。
ただ、祖母から若い頃の母へとか、
父が結婚当初、母に贈ったものにミキモトさんの品が多く、
それを受け継いだわたしが
気づけば長いこと、ミキモトさんとお付き合いを
させていただいているのですよね。
真珠をつなぐ糸を取り替えていただいたり、
磨いていただいたり。
昔の品は、真珠そのものの素晴らしさも
然ることながら、留め金の部分の細工なども
本当に細やかで美しくて
職人さんの手仕事に見入ってしまいます。
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今では当たり前のように、世界中の女性たちに
愛されている真珠ですが、
ミキモトの創業者、御木本幸吉翁は
真珠の養殖を世界ではじめて成功させた人物。
高値で取引されていた真珠をめぐって
世界中で乱獲され、絶滅に瀕していたあこや貝の養殖を
三重県、英虞湾で始めた時には
「無理なことを」とも「おおぼらふき」とも言われたとか。
でも、幼い頃から機械の改良や発明が好きだった彼は
信念を貫いて、有限実行。
養殖に成功したあと
アメリカで発明王エジソンに会った時には、
こんな言葉をかけられた記録が残っているといいます。
「私の研究できなかったものが、2つある。
ひとつはダイアモンド、いまひとつは真珠です。
あなたが動物学上からは不可能とされていた真珠を
発明完成されたことは、世界の驚異です。」
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御木本幸吉翁は
地元の鳥羽湾の景観を愛し、
伊勢志摩の国立公園制定にも貢献していますが、
外国人記者に対して、こう話しています。
「これからの日本は観光に力をいれなければ。
わたしは日本中を公園にしたい。」
日本の森林率(国土に占める森林の面積)は、67%
全体の3分の2を緑に覆われていて、
どの地方にも美しい景観がひろがっていますよね。
今年で、翁の没後66年ですが、
自然や生物と共生していくこれからの道筋を
標しているような言葉のように感じます。
マドレーヌがおいしい、
ってとこから書いてきましたけど、
年初には、ふさわしいような言葉にたどりついたような気も。
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で、マドレーヌですけれど、
菓子の名前の由来は、いろいろ説がある中で
18世紀のフランスロレーヌ地方のコメルシーという町で
はじめてこの菓子を焼いた女性の名前から
というのが有力とか。
この地方を治めていた公のパーティーで、
料理長と喧嘩して帰ってしまった菓子職人に代わって
マドレーヌという名のメイドさんが、
ほたて貝の殻を使って焼き菓子を作り、大好評を博したため
喜んだ公が彼女の名前をそのまま菓子につけたと
言われてるらしいです。
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ちなみに。。。を、もうひとつ加えると、
フランス女性にも多いこのマドレーヌという名前、
正式にはMarie Madeleine(マリー・マドレーヌ)
つまり、聖書のマグダラのマリアのフランス名だそうです。
最古の新約聖書が書かれているギリシャ語では
Maria Magdalene(マリア・マグダレーネー)。
大女優マレーネ・デートリヒの本名も
Marie Magdalene Dietrichで
Marlene(マルレーンまたはマレーネ)はその愛称と聞くと、
菓子の名前ひとつから、どれほど聖書によって
つながった文化圏なのか、あらためて実感します。
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とにかく
おいしいものは時代を超えて、愛され続けますよね。
ものすごく大雑把なまとめですけど。
そして言い忘れるところでした。
このミキモトマドレーヌ、
銀座などミキモトのお店でも販売していませんし、
オンラインでも買えないのです。
ミキモト真珠島に電話して、
店員さんと話して、数を伝え、賞味期限を聞き、
郵送していただく。この手順です。
なんでも便利な時代になりましたけど、
個人的には、この手法、けっこう好きです。
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今年も、きっといろいろあるでしょうけれど、
ひとつひとつ、丁寧に乗り越えられる年になると
いいですね。
あこや貝は、
異物が貝の中に入り込んで、吐き出せない時、
長い時間をかけて、その異物を包むようにして
真珠質を形成して、真珠を作り出すのだとか。
貝だけじゃなく、ひとも
つらいこととか、かなしいことに
できるだけぶつからないようにしても、
どうしても出くわしてしまう時もあるはず。。。
そうしたら、あこや貝を真似て、
体内にとどまる悲しみとか苦しみを
自分の気持ちでくるんで、つつみこんで
真珠みたいにきれいな心根に昇華できれば、
いいですね。
今年も、たくさんよいことが
ありますように。
また、この部屋でお目にかかれることを
たのしみに。
わたなべ まり
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