バレンタインですね。
世界中のチョコレートが
どっと集結する勢いは年々、増してるような気がしますけれど、
チョコ好きにとっては嬉しい限りのこの季節。
今年は、こんなパッケージのチョコは、
いかがでしょう?
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黄色いレモンが実る樹々の中を
2羽の小鳥が遊んでるような綺麗な箱。
1羽は、枝みたいに描かれた枠にちょこんと止まってます。
小鳥のチョコレートボックスのほかに、
2匹のリスの箱もあります。
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話に夢中になってる感じのリスたち。
前のリスが後ろを向いてる姿、
連想ゲームでワードを伝えてるふうにも
見えるような見えないような。
もう、お気づきかもしれませんが、
このリスたち、そして、この絵、
ただ可愛いというよりも
なんとなく写実的というか、独特の世界観というか。
素材はメルヘン寄りなのに、
本来の童話っぽいニュアンスを醸しているのですよね。
ほかには、
うさぎと出くわしたハリネズミの箱もあります。
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桜かな?りんごの花にも見える木の下で、
初対面なのか、顔見知りなのか、
見つめ合ってる雰囲気のうさぎと、ハリネズミ。
挨拶してるふうのハリネズミのちょっと顔を上げた姿勢と、
じゃっかん、うつろなうさぎのまなざし。
不思議な組み合わせと、静かな空気感に
とても惹かれます。
子鹿と雉が出会うバージョンも、あります。
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これは、完全に話してますよね。
雉が子鹿の鼻もとで、なにか示唆しているような図。
雉が尾を上げてクチバシを近づけてる姿勢も、
子鹿が視線を落としてちょっと聞き入ってる表情も、
世知に長けた雉に、まだ世間知らずの子鹿が
ひと言、おしえを授かってるような瞬間に見えてきます。
周りも雪景色で、
箱をいろどる柄も柊の葉と赤い実。
まだ春の足音は遠い、冬の森の中のひとコマっぽい
チョコレートボックスです。
さらに、こんな箱も。
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キツネの背中に、フクロウが乗ってます。
まだ色づく前のりんごの木の下でしょうか、
「いつもここにいますけど、なにか?」って表情のフクロウと
「自分からは見えないんですけど、フクロウ、背中に乗ってますよね‥‥?」
って、遠慮がちに訴えるようなキツネの瞳。
なぜ、この構図?
と思いつつ、目が離せません。
キツネの背中にフクロウが乗ってる
チョコレートボックスを贈られた場合、
受け取る側はどんな第一印象をもつのかな?
この不思議な静寂さに箱を開ける手が少し止まるのかな?
なんて想像しはじめると、興味がつきません。
実はですね、
パッケージに目を奪われてしまうこのチョコレート、
中身はもっとすごくて
フランスの“コンフィチュール(ジャム)の妖精”と異名を持つ
女性パティシエの作品なのです。
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クリスチャン・フェルベールさんは
フランスの先駆的菓子職人で、数々の受賞はもちろん
フランスの名シェフ、アラン・デュカス氏や
名パティシエ、ピエール・エルメ氏はじめ
世界中から絶賛される存在。
祖父母の代からブーランジェリーを営む家に生まれて
おとうさんからケーキ作りやチョコレート作りのたのしみを
果樹園を持つおばあさんから果物への愛情や収穫するよろこびを
学ばれたとか。
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すごいのはですね、
旬の果物をスパイスやチョコレートとも絶妙に組み合わせて
魔法のようにおいしいジャムを作り出して、
ジャムという食べ物の概念そのものをくつがえされた!と
称賛するファンが世界中にいるのに、
今もアルザス地方の小さな村の彼女のお店で
手作りを守り続けてるのですよね。
量産すれば‥‥なんて考えがちですけれど、
直径50センチの銅鍋で炊かないとジャムの味が落ちてしまうため
それ以上は一度に仕込めないとのこと。
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(※この写真は「ほぼ日」スタッフが2014年に訪れたときのものです。)
よく、“自然を愛し、自然のなかで暮らし”とかいいますけど、
写真で見る限り、ほんとうに小さな村で
囲んでいるものは自然のみ、以上!
っていう環境が、ひしひしと伝わってきます。
しかも、どうもお店は村でひとつくらいの存在で、
魔法のジャムは壁一面にありつつ、
お惣菜や食料品、食器や新聞・雑誌がギュッと並んでる様子も。
いってみれば、村の雑貨屋さんというか、日用品屋さん、
オールマイティーな役割を担ってるっぽいのです。
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(※この写真は「ほぼ日」スタッフが2014年に訪れたときのものです。)
うわさでは、この小さなお店に
ブラッド・ピットはプライベートジェットで
ジャムを買いに来たとも。
わたしだったら、ジャム以外に
惣菜もケーキも、意味なくその日の新聞も
フランス語で読めないのに
記念とか理由つけて買っちゃいそうな。。。
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チョコレートやジャムの魔法ももちろんですけれど、
彼女の生き方、自然とのつきあい方、
おばあさまやおじいさまからのおしえなど全部ふくめて
興味がつきない、魅力的すぎる。。。
とにかく、いろいろインタビューしたくなってしまう存在です。
ほぼ日にはダーリンイトイさんという
すごいジャムおじさんが存在しますが、
いつか、フランスと日本のジャム談義なんてのは
どうでしょう‥‥?
黒豆を炊くとか、あずきを煮るとか、
まだジャムに開眼される前だったと記憶してますが、
炊いたものをひと晩、寝かすーーー
しみこんでいくその時間が大切なんだ、と
静かに語られていた面差しが忘れられません。
「コンフィチュールの妖精とジャムおじさん 夢の対談」
勝手に考えてたら、だんだん楽しくなってきました♪
そんなあかつきには、
ドイツに近いフランスのアルザス地方
ニーデルモルシェヴィル村への旅に、
不肖マリーも同行スタッフとして
まぎれこめないかな?なんて夢想してます。
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(※この写真は「ほぼ日」スタッフが2014年に訪れたときのものです。)
ちなみに、あとさきになりましたけれど、
コンフィチュールというのは、ジャムと訳していいのかというと
そうでもないような塩梅です。
ジャムは英語で、もともとの意味は「ぎっしり詰め込む」こと。
トラフィックジャムっていったら、交通がジャムになってる
イコール、渋滞ですよね。
コンフィチュールはフランス語で、
cinfit(コンフィ)は食材を風味よく保存するという調理用語。
ジャムとして瓶詰めで売ってるものは、
果物を煮込んでペクチンでゼリー状にしてあるのが主流ですけれど、
コンフィチュールは砂糖で果汁を滲み出させて、その果汁を煮詰めたあとに
果肉を漬けるのが昔ながらの作り方といいます。
日本では、糖度が40度以上のものをジャムと日本農林規格で
定義されているとのことですが、
要はジャムは果物ごとしっかり煮詰めるから果肉も小さく、とろみも固め。
かたやコンフィチュールはスパイスやリキュールや、
クリスチャン・フェルベールさんの場合はチョコレートも組み合わせた
オリジナルな風味で、ジャムほど固まっていなくて、甘さも控えめ。
そんなところでしょうか。
ジャムって表記するより、
コンフィチュールの方が洒落てて見栄えするのかな?
なんて、よく知らずに見てましたけど、
そんな次元じゃないことが、充分わかりました。反省。
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えーと、長く熱くなってしまいましたが、
いやいや、チョコレートでした。
バレンタインですからね。
あ、まったく話は変わるのですけれど、
近くのスーパーでも嬉しいチョコ菓子がたくさん
出てます。
HERSHEY'Sは永遠です。
子どもの頃、これ以上おいしいものはない
と思ってました。
今もけっこう、そう思ってるフシはあります。
脳内って凄いですね。
おいしいって刷り込まれたら、
簡単にその記憶を手放しませんしね。
ただ、唯一の不満は、
このエクレアとかシュークリームとかワッフルとか、
スーパーにあるのがバレンタイン時期だけなんですよね。
通年でいいのに。
この“Valentine's Day”ってハートの赤いシールを取る
ひと手間だけ惜しまずに、
なんとかお願いできないものかな、と。
ひそかに毎年、残念でなりません。
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なんのかの言いながら、
おいしいチョコレートに囲まれる幸せな季節。
チョコレートを贈る、という本来の目的は
この部屋ではほとんど失われてるような気はしますが、
今年もチョコレートの話を共有できて
満ち足りた気分です。
どうか、素敵なバレンタインを。
わたなべ まり
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