あけまして
おめでとうございます。
2018年、
戌年が明けました。
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新年の寿ぎにふさわしく華やかな
とらやさんの子犬柄の羊羹と、風呂敷です。
とらやさん、
赤坂の本店が今年、開店なのですよね。
3年前、2015年に改装のため休業された時の
ご当主の挨拶文、わたしも感動したひとりです。
お店の来し方についてよりも行数を割いた
お客さまへの謝辞が話題になったこと、
覚えていらっしゃる方も多いかもしれません。
(「とらや 赤坂本店をご愛顧くださったみなさまへ」はこちら)
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たまたま、わたしも初めて勤めた場所が赤坂だったので
とらやさんの喫茶には、よくお邪魔しました。
元気だった頃の祖母や母と、夏に宇治金時のかき氷を食べたこと、
後輩と仕事の合間に抜け出して、酒まんじゅうを頬張り、
命の洗濯をしたこと、
友達に頼まれ、彼女をむげに傷つけた男性と向き合って
確か水だけで談判したこと(とらやさん、すみません)
秋限定の栗おこわがあまりにおいしくて、毎日のように
通った年もあったこと。
お店にも、品物にも、
ひとりひとりの思い出がこんなふうに、
沁み込んでいるものなのですよね。
それだけに、年月が経って、
改装せざるを得なくなった建物を新築するという決断は
大変なことかと思いますが、
時とともに変わっていくのは、
誰にとっても何においても必然。
今年、どんなふうに新しい幕が始まるのか、
ファンとしては楽しみな限りです。
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おもかげ、新緑、夜の梅。
どれも、おいしいですよね。
それぞれに思いのこもった、ゆかしい名前がついているのも
好ましく‥‥。
「春の夜の闇はあやなし 梅の花
色こそ見えね 香やは隠るる」(古今集)
春の夜の暗闇は意味のないことだなぁ
梅の花の形や色は見えないけれど、
梅の香りは隠れようがないもの
この歌にちなみ、羊羹の切り口にちらほらと見える小豆を
夜の闇に咲く梅の花に見立てて名づけられたとか。
わたしは黒砂糖の風味のおもかげが大好きで、
おみやげ用に買いに行っては、
せっせと自分用におもかげの小形羊羹を仕入れています。
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とらやさんの子犬に限らず、
日本画には可愛い犬たちがたくさん出てきますよね。
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円山応挙の「朝顔狗子図杉戸」です。
まるっとしてて、可愛いけど‥‥
朝顔って、夏じゃん?と思われたかも。
すみません、
確かに、季節違いです。
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ただ、これ、チョコレートなんですよね。
東京国立博物館限定ギフトです。
これが缶って、素敵じゃないですか!?
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ご存じの通り、円山応挙は江戸時代、
18世紀の京都の画家で写生に通じていて、
朝顔の他にも、柳の下とか、時雨の中や雪の中など
たくさんの可愛い犬たちを描いてます。
この絵は尾張国の明眼院という、
今でいう眼科の障壁画として描かれたとか。
応挙もこの眼科に通い、回復したお礼として
廊下を仕切る戸に、この絵を描いたと言われています。
構図としては思い切って扉の下半分に描かれた子犬たち。
医院に通い、廊下を通る患者さんたちの目線には、
まるで廊下の先で遊んでいるかのような
子犬たちが写ったはず。
こんなふうにさらっとお礼をするなんて、
しかも、病院通いがちょこっと楽しくなるような
仕掛けをするなんて、
さっすが、粋!
芸術が楽しく生活に溶け込んだ江戸の街が
浮かんできそうです。
犬を描いた絵師といえば、
他にも俵屋宗達や、長沢芦雪、尾形光琳、
伊藤若冲、神坂雪佳などなど。
どれも思わず和んでしまう可愛らしさなのですが、
個人的には、神坂雪佳の描いた
まるっとした犬が、
じぃーーっとカタツムリを見つめてる絵が
とても好きです。
やっぱり犬たちは、どの時代にも絵師たちの心を
むぎゅっとつかんできたのですねぇ。
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蓋を開けると、こんな感じです。
早く缶を使いたくて
いつも以上に一気に食べちゃうんですよね、中身を。
そういう癖も直せるものならば…と思う新年です。
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みなさまの新年が
素晴らしい年となりますよう、
心から祈りつつ。
あ、写り込んでる「もちどら」は、
一緒に買って食べてしまった菓子なので、
またの機会に書きますね。
今年も、この部屋をよしなに、
よろしくお願いいたします。
わたなべ まり
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