だんだんと晩秋から冬に近づいて、
色づいた葉っぱが舞いはじめる街路樹も、
夕方5時くらいを過ぎると、とっぷり暗くなる空も、
湯気の立つ鍋ものや湯豆腐がおいしくなる食卓も、
まわりのもの全てが
季節の移り変わりを映し出してるみたいですよね。
なんて言ってたら、今年ももう立冬。
遠くに見える富士山の頂上にも、
うっすら刷毛でかいたような
積雪が見られるようなりました。
すっぽりと真っ白に雪化粧するのも、もうすぐかも。
過ぎゆく秋の名残りを惜しみつつ。。。
秋といえば、鹿です。
ん? 唐突ですか?
でも、古今集とか、俳句の季語とか、花札とか。
(あ、ちなみに「鹿の子」は夏の季語で、
「孕み鹿」は春の季語だとか。)
とかく秋は鹿のイメージ。。。
百人一首の
奥山に 紅葉ふみわけ鳴く鹿のこえ聞く時ぞ 秋はかなしき
みたいな。
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話はまた飛ぶのですが、
ちょっと前に食品関連の機器を
大々的に展示する博覧会のような会場に
招いていただいて行ってきたのですね、本業で。
そしたら、食品加工からパッケージから、
食器洗浄から全般にわたる機械が展示してあって、
例えばじゃがいもの芽をセンサーで関知して
アームが最短距離でささっと動いて剥く、
なんて先端技術を目の当たりにしてきたのですが、
そこで最も足が止まってしまったのが、
菓子を作る機械だったわけです。
ときどき、店頭にもありますよね。
今川焼のたねを流し込んで、餡を落として、
もうひとつたねを流し込んだ容器も
ベルトコンベアーで進んできて
パタッと合わせるような。
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なかでも、この鹿まんじゅうを作る機械は
いつまでも見てしまいました。
一応、仕事だったので
(一応じゃないですね、ちゃんとです)
「じゃあ、次に行きましょう」と
誘導してくださる係りの方に促されつつ、
よほど、わたしが未練たらしく見えたのか、
あとで鹿まんじゅうをいただきました!
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可愛くないですか?
前を向く鹿と、振り向きつつ座ってる鹿の姿。
春日大社の神が白鹿に乗って
奈良に降り立ったという伝説から
雌雄の神鹿をかたどったとか。
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残念なことにその時には
まだ製品化されてなかったのですが、
今秋、めでたく商品となったとか!
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試食でいただいたものは、ほのかに温かくて、おいしくて、
その場で完食でした。
(そんな来場者は、そういない感じではありましたが。)
ちなみに中は白餡で、生地もしっとりと甘すぎず、
ゆっくりと陽の傾いていく
午後のお茶受けなどには最適です。
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そして、鹿といえば、もうひとつ。
ご存じ、鹿もなかです。
この鹿も、凛と上を向いている佇まいが素敵ですよね。
こうばしさの香る皮と、優しい甘さの餡が絶妙で、
さすが奈良を代表するおみやげ菓子かと。
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正倉院の柄がモチーフとなっているパッケージも
可愛らしくて、新鮮です。
万葉のころが偲ばれる奈良は、訪れる度に、
心のふるさとのような懐かしさとか
あたたかさを感じますが、
そうなんですよね、
その当時は斬新でビビッドな舶来ものが
波打つように入ってきた地。
あらためて正倉院柄を見ると、
その新しさにハッとさせられます。
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そうこうしてるうちにも、冬の足音は近づいてくるような
ここ最近の日の短さ。。。
急に冷え込んできて風邪も流行ってるようなので、
どうか、あたたかくして、良い初冬を。
わたなべ まり
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