やんなぎゃ、ダメだ。
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東北へ、来た。車で来た。人に会った。話を聞いた。
だが、なにかわかったようなことを言ってもしかたがない。
しかし、なにもわからないでいても、来た意味がなさそうだ。
女川町、午前4時。駅舎と海が見えるトレーラーハウス。
あの日、いま座っているここを、
自分の身体がいまあるここを、
なにが通り過ぎたかを考え始めると眠れなくなってきた。
鴨さんのお話をたくさんきいたからだな。
震災直後ここに立った時のことを鴨さんは繰り返し語った。
「なにも、なにもなかった」
2018年3月10日を飯舘村、相馬、塩釜、石巻、女川と過ごして、
ましてや日付が変わっていま、3月11日である。
そのことを考えるとまったく眠r
はっ!!!うおーっ!!どわーっ!!!
ひえ~~~っ!! あれ~~~~~っ??
稗田阿礼!!!朝7時だ。
女川の空にさんさんと太陽が昇り、
太平洋はキラキラと輝いている。
いや、原稿を書かずに寝たのに
さらに海を見に来たぼくが間違っている。
あわてて書くが、昨日いちにち、
たくさんの人に会ったことで胸がいっぱいなのだ。
貴重なお時間をいただき、お話をお伺いし、
人に会わせていただき、美味しいものをお教えくださり、
良い景色を見せてくださり…
いまふつうに順番に書いてみて、これは、
「ありがたいこと」のすべてだと気がついた。
むずかしいことを考えるのも、なにも考えずに笑うのも、
おいしいものを食べるのも、すべて旅だ。
だが、知らなかった土地で、知らなかった人生の時間をいただく、
つまり、人に出会うことこそ旅のいちばんだなぁ、
といま思っている。
みなさんからたくさん聞いた話については、
古賀さんや永田さんは、人に話を聞くプロだと思っているので、
それを書くのはこの人らにまかせて、
写真を撮る係をがんばった。
きょうはそれを載せようと思う。
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「つながりを、とりもどしたいんです。」
和歌山県うまれで、いまは飯舘村に帰宅するひとたちの
「繋がり」を支援するために走り回る黒田さん。
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「やんなぎゃ、ダメだ。」
避難先から飯舘村に戻り、
もう一度農業を始めたさん赤石沢さんご夫妻。
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「福島、好きになってもらえましたか?うれしい」
地元にうまれ、
健康面から地域の人たちを支える仕事をする佐藤さん。
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「女川の町を、自分たちでデザインするんです。生きるために」
女川町のかまぼこ屋さん「高政」の若旦那、高橋さん。
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車で疾り、風を感じ、そして人に会う。
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きょうはこの女川から南三陸へ。そして気仙沼へ。
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ぼくたちが掲げている言葉は、
#車で気仙沼まで
だが、むろん、「そこまで」の旅などないのだ。