その頃、
学生時代からつきあっていた彼も私も社会に出て数年。
女子で派遣社員の私は、
会社帰りにお稽古ごとができるくらい
時間の余裕のある日々ですから、
私のほうは、毎日でも彼に会いたい。
けれど、彼は、仕事も覚え始めて、とっても忙しかった。
徹夜続きの日もあったりして、
到底、毎日会うなんて、ムリムリ。
私じれる、彼多忙。
よくあるパータンの2人でした。
でも、そんなよくあるパターンの2人に
よくないパターンが‥‥
ある夜、彼のお兄さんから電話が入ったんです。
彼が、車で事故って救急搬送された…と。
徹夜で仕事して、車で移動中、高速の橋脚に激突。
意識不明。
今すぐ駆けつけたい。
と思ったものの、集中治療室で
意識不明の彼に面会できるのは家族のみということ。
単なる彼女は入れないんです。
私、それまで、眠れない夜なんてないタイプだったんです。
でも、さすがに、夜、眠れない日が続きました。
数日後、なんとか彼の意識が戻って、
お見舞いに行くことができるように。
でも…
かけつけた時、まさかの事態。
知らない年上の女性が、
一人でお見舞いにきてたんですよ。
最初は、会社の先輩かな〜?
くらいに思ってたんですけど…
毎日、毎日、いるんです。
鉢合わない日でも、何か足跡がある。
彼は、死の淵からの生還ですから、
全治数カ月という大ケガを抱えているわけで。
そんな時に、
「一体、誰なの? どういう関係なの?」
みたいなことも聞けないし。
しかも、聞いたところで、その時の彼、
しゃべれないんです。
顎の骨が割れたために、
がっちり固定されていて、口があかない。
今後、脳にも異常が出ないかどうか、
経過観察だった状態。
そんな彼に、詰めよれないですよね〜。
彼の体の心配と
関係のわからない女性の心配
そういう2つの心配と
時と場所をわきまえなければならない
嫉妬心とか自尊心とか
よくわからない複雑で複数の感情を抱えながら、
一体、どうすればいいんだろう…私、という状態。
そんなときに、この歌が流れていたんです。
「あきらめないですべてが 崩れそうになっても
信じていて あなたのことを」
そうだよね。
そうなんだよね。
今は、自分がきちんと立っていることが大切なんだよね。
自分の仕事をしながら、
勉強しながら、
前に進んで。
吐き出したい気持ちや爆発しそうなものを、
なんとか辛抱して…。
そうすることを、この歌から教わりました。
今でも
あの女性が一体誰だったのか。
彼とどんな関係だったのか?
わかりません。
今後も、そのことを、主人に、
訊ねることはないでしょう。
これから、一緒に年老いて、
どっちかがどっちかを看取って…
そのことについては、わからないまま、
終わっていくんだな〜とボンヤリ思います。
それでいいんじゃないかな〜って。 |