倒木学、という学問があります。
いえ、ウソです……。
そんな学問分野はありません(笑)。
しかし、倒木は、観察すればするほど、
無限とも言えるほどの発見があるんですよ。
科学的態度で臨むもよし。
芸術的、哲学的な動機で臨むもよし。
倒木は本当に奥が深いひとつの小宇宙なんです。
(ずいぶん大きく出たな、こりゃ……)
前々からいろいろな場所で、
書いたり言ったりしておりますが、
ぼくは、倒木が本当に好きなんです。
阿寒の森にはいくつも「マイ倒木」があり、
常にローテーションで訪ね歩いています。
倒木は、自然の森の象徴でもあります。
阿寒や白神山地に広がる天然林・原生林には、
必ず倒木があります、というか、倒木だらけです。
無駄だとか、邪魔だとか、危険だとかいう理由で、
人間に片付けられたりしませんから……。
とにかく、ぼくは、
大きな倒木があったら、すかさず近寄り、
左端に座り込んで、上から下まで眺めつつ、
立ったり座ったりして右方向へとじりじり移動し、
その全体を心ゆくまで堪能します。
ぼくが主に注意を向けるのは、
きのこや粘菌がいるか、ということなのですが、
コケ好きな人はコケを、昆虫好きな人は昆虫を、
動物、鳥、植物、土壌生物、菌などなど、
とにかく、自分が興味を持っているものを、
とことん探し、観察しまっくっていただきたい。
ぼ〜っと眺めるも、また、良し、です。
寿命を終えた木々は、無駄どころか、
いろいろな生きものたちの生命活動を、
森の底から支えているという事実。
実に感動的です、はい。
倒木は森の宝物と言っても過言ではありません。
さて。
新緑の白神山地の森を歩いていると、
ちょっと古いけど大きなブナの倒木を発見。
近づく前から、白い物体が目に入ります。
ビンゴ!きのこですね。
その白いきのこは、ダンアミタケ。
低地から山地の林内の広葉樹、
あるいは、枯れた針葉樹から発生します。
材に張り付くように広がり、
段状〜棚状の1〜15cmの傘をつくります。
上面ははじめ白色のち黄褐色を帯び、
環紋を表します。
平面にも見えますが、
傘の上面以外の部分は下向きの管孔です。
段々があって網の目があるから、
ダンアミタケ、という名前なんですね。
食不適。
さもあらん。
触るとめっちゃ硬いんです。
倒木から剥がして齧ったとしても、
とても噛みきれないと思います。
それにしても、倒木を目の前にすると、
あっという間に時間が過ぎてしまいます。
もう、楽しくて、楽しくて。
読者の皆さん、
紳士淑女の嗜みとしての倒木観察。
これからブームになるかもしれませんぜ……。
(なるか!んなもん)