ご用心!食べられないんです!
オツネンタケモドキ食不適

紅葉とともに北海道を旅立ち、
東北地方の北部へやってきたので、
このところ、白神山地やその周辺、あるいは、
八甲田山麓から奥入瀬渓流にかけての、
ブナの森を好んで歩いています。

今年は、ブナの実が豊作らしく、
落葉と同じくらい、とは言いませんが、
ブナの実を踏まずに歩くのが困難なほどで、
森で暮らす冬眠前のくまさんたちはきっと、
夢中になってこの実を食べていることでしょう。

ここ東北地方では、秋のブナの実の豊作・不作と、
人里でのくまさんの出没数には相関関係がある、
という研究結果があり、
ブナの実が豊作のときは人里の出没件数は減り、
不作のときは、春から人里へ下りてくるとか。
(くまさんはなぜ春にブナの不作がわかるの?)

まあ、いずれにしても、
森はくまさんたちの生活エリアなので、
常にくまさんの存在を意識する必要があります。

ブナの実をポツポツ踏みながら歩いていると、
大きなダケカンバの倒木を発見!
暗色系の傘をした立派なきのこが生えています。
一見、普通のきのこっぽく見えますが、
傘は革のように硬く、傘の裏にはヒダがありません。
オツネンタケモドキです。

オツネンタケモドキは、秋から春にかけて、
広葉樹の倒木や枯枝から発生します。
年を越すという意味で「越年=おつねん」茸ですな。

傘は径1〜5cm、厚さ2〜4mm、
ほぼ円形で、中央部がくぼみます。
表面は灰色〜淡褐色で細かい毛が密生しますが、
やがてなくなり、暗褐色の地肌が露出します。

傘の裏側は白く、
たくさんの小さな孔が空いた管孔です。

柄は高さ2〜3cm、
ほぼ中心から伸び、表面は灰色〜黄褐色です。

食不適。

まるで革のような肉質ゆえ、
とても食べられるようなものではありません。
これだけの硬さゆえ、
なかなか腐らずにその姿を長く留めるのでしょう。

紅葉が終わりを迎えつつあり、
ブナの森の底が落葉でいっぱいになる頃には、
雪が降りはじめ、長く厳しい冬が訪れます。
くまさんも、オツネンタケモドキも、
誰に邪魔されることなく、
森のどこかで静かに眠っていることでしょう。

このコンテンツでは、
				きのこの食毒に触れてますが、
				実際に食べられるかどうかを判断する場合には、
				必ず専門家にご相談ください。