乗組員のもとじさんもおすすめしていた
映画「トキワ荘の青春」を見た翌日、
トキワ荘マンガミュージアムへ行きました。
この順番の“トキワ荘はしご”が
とてもよかったので、おすすめします。
もとじさんも書いていましたが、
映画「トキワ荘の青春」には
古田新太さん、生瀬勝久さん、
阿部サダヲさん、といった役者さんたちが
駆け出しのマンガ家として登場します。
いまはたいへん名のしれたみなさんも、
1996年の公開当時は
小劇場や自主映画に出ていた若手でした。
実際のトキワ荘での日々は
昭和30年代(1950年後半~1960年前半)と
もちろんもっと前のことです。
ですが、よく知っている役者が
25年前の姿でうつっていると、
若々しさに時の流れを感じます。
正直なところ、平成うまれのわたしにとっては
昭和30年代のトキワ荘と
巨匠といわれているようなマンガ家たちは
歴史上のできごとと人物でした。
名作といわれるその時代の作品も、
実際に読んだり見たりしたのは
藤子・F・不二雄さんの『ドラえもん』と
手塚治虫さんの映像作品くらいです。
そんなわたしには、
25年前の役者たちへの親近感が
この世界を、以前より身近に感じさせたのでした。
1996年の公開当時には
まったく意図していなかったことだろうと思いつつ、
このリマスター版の映画を見たことで
トキワ荘の空気にすっと入ることができました。
そんな感覚を残したまま、
「トキワ荘マンガミュージアム」に到着しました。
入り口にたつ古びた看板に
「トキワ荘だ!」とわくわくします。
▲外観を前に、すでに浮かれています。
実は、もともとの「トキワ荘」は
1982年12月に解体されていて、
このミュージアムはそこから歩いてすぐの公園に
2020年3月に開館しました。
でも、外観も、アパートの中も、
あたらしく再現したとは思えない空間でした。
靴をぬいで、急で軋む階段をのぼった2階が
常設の展示エリアです。
▲すぐ目に入るのが、この廊下。
映画を見ていなかったら、
ただふつうの廊下に見えたかもしれません。
でもスクリーンの記憶がまだみずみずしいので
「そう、これこれ!」となります。
編集者やラーメンの出前が行き来していた廊下です。
▲共同の炊事場。
ここも、さっきまで人が居たような雰囲気。
置かれている小物も
当時のものが再現されているので、
カルピスのパッケージが見たことない包装だったり
タイムスリップしたようなおもしろさがあります。
▲食べおわったラーメンどんぶりもそのまま。
そして廊下の両側にならぶ部屋が、
マンガ家たちが
食べて、寝て、仲間と語って、
マンガを描いていた、4畳半です。
何人かの部屋がまるごと再現されていて
入り口からのぞくように中を見られます。
4畳半という広さを肌で感じつつ、
冬に暖をとっていた火鉢など
せまいなかに広げられた生活の道具から
当時の暮らしの香りが
ただよってくるようでした。
▲15号室は藤子・F・不二雄さんのお部屋でした。
これだけたのしんでいますが、
常設エリアはなんと入場無料なんです。
じっくりとすみずみまで見てから、
1階で開催されていた企画展にも寄りました。
このとき開催されていたのは
トキワ荘の年長者で
映画では本木雅弘さんが演じていた”テラさん”こと、
寺田ヒロオさんの展示です。
直筆原稿のストーリーとまじめな書き込みからも、
おなじ時期にトキワ荘で暮らした
メンバーによる似顔絵からも、
やさしいテラさんの人柄が伝わってきて
おだやかな余韻とともにミュージアムを出ました。
▲目の前には桜の木。これからの季節がたのしみです。
さて、このミュージアムからすぐの商店街には
この町の散策拠点として
案内をしてもらいつつちいさな展示もたのしめる
「トキワ荘通りお休み処」や
マンガや書籍が読める
「トキワ荘マンガステーション」もありました。
さらにこの世界にひたるなら、
商店街でその時代からずっと営業をつづけている
中華料理やさん「松葉」へもぜひ。
藤子不二雄作品によく登場する
「ラーメン大好き小池さん」が食べ、
トキワ荘の炊事場にもあった
あのラーメンが600円で提供されています。
映画を見て、ミュージアムに行って、
この商店街もぐるっとまわれば
かなりトキワ荘にひたれる
満喫コースになるはずです。
わたしのような初心者でもたのしめましたし、
世代もまざってご家族で、もいいかもしれません。
昭和30年のトキワ荘を
さまざまな角度から味わってみてはいかがでしょうか。