ほぼ日刊イトイ新聞 - しょうがのお勉強。


写真を見つつ、高知取材の報告会が続いています。
	美郷さんという女性が、高知で農業を営むまでにはなんらかのドラマがあったと。
	はい。まずはこちらをご覧ください。

	畑ですね。向こうには連なる山々が。あなたのきれいさもふくめて、すばらしいです。
	ありがとうございます。
	ここが桐島さんの畑、つまり「桐島畑」というわけですね。
	美郷さんは、この高台からの景色をみて、わあっと涙があふれてきて、ここで暮らしていきたいと思ったのだそうです。

	ほぉ、そんなに。
	美郷さんは埼玉の大学で心理学を学んでいたんですが、ある日、日比野克彦さんの作品を目にして「すごい、この人のところではたらきたい」と。
	うん、それで日比野くんのところへ。
	はい。ですがやっぱり、それだけで食べていくのはたいへんで‥‥。イラストのお仕事をしたり、飲食店を出したりもされていたそうです。
	食べ物屋さんを。
	東京でフリーのイラストレーターをしながら日比野さんのお手伝いをしてさらにお店を維持するのって、そうとうきついことですよね。美郷さんは下北沢の風呂なしアパートに10年住んでいたそうです。
	‥‥日比野ぉ！（笑）
	いや（笑）、イトイさん、日比野さんはいまも美郷さんと仲良くしてらっしゃるんです。何度かこの畑にも来られたそうですよ。
	そうか、ちゃんと応援してるんだ。
	話を戻します。東京で飲食店をされていた美郷さんは知人の紹介で高知の無農薬野菜と出会います。その野菜を手にして、食べてみて、驚きました。「なんて力強い野菜だろう。　これをつくっている人に会いたい」
	おお‥‥。
	美郷さんは四万十に向かい、野菜の仲介人の人に案内してもらって、畑にたどりつきます。

	そこで、畑に感動して涙する。
	はい。東京で苦労を重ねていた美郷さんは、自分のちっぽけさと、大地に根づいて生活している人たちの風景にうちのめされてしまったそうです。そしてそのとき、正一さんと１度目の出会いもあり、そこから、お野菜の宅配がはじまりました。高知から送られてくる箱の中にはいつも、野の花が入っていたそうです。
	あぁ、いいね。
	２度目に正一さんに会ったのは、二泊三日の「農業体験」でした。美郷さんは、そこでもう気持ちをかためたと言います。
	え‥‥。
	「農業体験」を終えて、高知へ車で送ってもらう道中、美郷さんは朝から缶ビールを飲んで自分にいきおいをつけておいて、意を決して、覚悟を決めて、プロポーズをしようとします！
	ええ！
	正一さんの横に座る美郷さん。「結婚を前提に、　おつき合いをしてもらえませんか？」ということばを言おうとした、そのとき‥‥。のどもとまで、そのことばが出かかったときに‥‥。
	‥‥‥‥。
	正一さんのほうから‥‥ 「いっしょに農業をやってくれませんか」
	ええええーー！！
	すべては３カ月の話なんですよ。ふたりは２回しか会ってないんです。

	うーん‥‥ あらゆる意味で、すごいね！！
	すごいですよねぇ。
	たった３カ月だけど、惚れますよ、わかります。
	わかりますか。
	わたしたちも畑の野菜を食べさせてもらったんですけど、これがほんとに‥‥ね？
	おいしかった。そのまま食べちゃえるんです。

	生き生きしてるねぇ（笑）。
	ここの景色、おいしい野菜、それを一所懸命につくる男性‥‥。ひっくるめて、すばらしいんですよね。男からみても、「惚れる」というのはわかりました。
	これもひとつのすてきな生き方だなぁ、と。
	なるほどねー。すべては「ここの野菜はうまい」から始まったことなんだ。 ‥‥すごいね、ほんと。

	そういうお話をうかがっているうちに、ぼちぼちしょうがが煮えた時間に。みんなで作業場へと戻りました。

	しょうがは煮えたかな？
	中はもう、香りがすごくて。
	ここにいるだけで、のどがスースー。
	しょうがは、こんな具合になっていました。

	正一さんが、味をチェックします。

	砂糖が入っていないので、ここではまだ辛いしょうがの汁です。
	しょうがのスライスをとりだします。

	いっそう強く、しょうがの香りが。

	このスライスはどうなるんですか？
	乾燥させるもの、冷凍させるもの、そのまま加工にまわすものにわかれます。入浴剤やお菓子などに加工するのだそうです。
	そうですよね、もったいないですからね。
	一度、漉してから。

	ふたたび釜に戻し、ここで砂糖を加えます。

	桐島さんでは「粗糖」を使っていました。
	精製しきっていない砂糖ですね。風味とコクはあるけれど、黒糖ほど強くはない。
	はい。粗糖を加えたら、糖度計で計ります。

	１本ずつ、手作業でビンに入れて。

	しっかりと熱湯で消毒し。

	ラベルを貼って。

	かわいいミニミニレシピもつけて。

	完成でーす。

	美郷さんが描いたこういうマークも、かわいいんですよねー。

	こういうのはやっぱり、日比野くんのところにいた人ですよね。
	できたてのシロップをお湯でわって、いただきましたー。



	こうちゃん、かわいい～。
	というわけで、高知での２日目は、まるまる「桐島畑」さんにお邪魔いたしました。みなさん、ありがとうございましたー。

	バイバイのときに、こうへいくんが、どんぐりをくれたんですよ～。

	こうちゃん！　またね！おばちゃんたち、また会いにいくからね！
（取材３日目に、つづきまーす）