大阪から車で約1時間ほど北に向かった
能勢の山に、アークさんはあります。
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こんにちはー。おじゃましまーす。
ワン、ワンワンワン!
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犬たちの吠える声が聞こえてきたら、
そこがアーク、動物たちのシェルターです。
こちらは、アークさんの生みの親、
代表のエリザベス・オリバーさん。
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オリバーさんは、
大阪万博の頃にイギリスから来日し、
以来ずっと関西で、
日本の動物たちを助けてきた方です。
きょうは、オリバーさん自ら、
案内役をかってでてくださいました。
アークさんのシェルターに入って、
まず、わたしたちの目をひいたのは、
犬の小屋がとても大きいことでした。
たとえば、このように。
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小屋の周囲をフェンスで囲んであるので、
犬たちは、なかを自由に歩きまわっています。
大きい犬舎には2匹、
小さめのところは1匹で。
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想像していたより、
ずっと広いスペースをとった犬舎が、
たくさん並んでいます。
いわゆる「犬小屋」とは、ずいぶんちがいます。
こういう犬舎のつくりとか飼い方は、
はじめて知りました。
アークさんが考えたものなんですか?
それともイギリスとか外国にある方法なんでしょうか。
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「イギリスでは、犬は家のなかで飼っているので
日本のような犬小屋はないんですが、
これは、イギリスの猟犬用の小屋なんです。
最初の小屋は、アークをはじめたときに
イギリスから運んできました。
こうすると、ひとつの建物に、
寝る場所と遊ぶスペースと、両方できて、
雨の日は小屋のなかで餌を食べられるしね。
能勢の冬はすごく寒いので、
冬の間はビニールシートで囲って、
老犬のハウスには、夜は暖房をいれています」
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「夏はよしずをかけて、日陰をつくります。
能勢は夏がいちばんですよ。
樹が多いから、木陰もできて」
犬たちも、わたしたちを見ています。
ちょっとだけ、ご紹介しましょう。
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この子は、ラッキー。
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こちらは、マイ。
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ムッチーと、ミミとうしお。
ビーグルミックスの親子です。
あ‥‥ふふふ。
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「この子は、7月にイギリスに行きます」
クラッカー、6歳の男の子。
アークさんのホームページによると、
「ホームレスさんに飼われていたが、
ロケット花火を放たれるなどの
危険が及ぶようになったため、アークへ」。
辛いめにもあってきたけど、
新しい家族とあたたかい家が待っている
イギリスへ、旅立つんですね。
「ここには、猫がいます。どうぞ」
はい。
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猫たちが、身を寄せ合って、まどろんでいます。
「猫は寒がりなので、夜はこたつを入れています。
ここにいるのは、飼い猫だった猫たちです。
野良はここに入れたら
ストレスがあるので、入れられません。
それに、猫は相性もむずかしいんです」
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猫より、犬のほうが簡単なんですか?
「犬のほうが、簡単ですね。
犬同士は、相性がよくなければ
ケンカするとか、噛むとかするので、
わかりやすいです。
これが猫になると、ケンカをしないで、
からだにでてしまう。病気になるんです。
それに、犬は散歩をするでしょう。
そのときに、いろいろなことがわかります
でも猫は、世話をする人が、
かなり気をつけて見てないとわからないから」
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さて。アークには、犬と猫だけではなく、
ほかの動物も保護されています。
たとえば、ウサギ。
ギンギツネやアヒルもいます。
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ワォーン、ワォーンー‥‥
ワンワンワン‥‥
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こちらに到着してからずっと、
犬たちの大合唱がつづいています。
キャンキャン、キャンキャン!
あ、ちっちゃい子が。
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1、2、3‥‥6匹!
「この子たち、きのう、
不妊手術をしたばかりなんです」
それで、みんなそろって
エリザベスカラーをつけているんですね。
手術はここでしているんですか?
「そうです。ふつうの動物病院では、
こんなに小さいうちはしないですけど、
手術の時間も短いし、傷は1センチもないくらい。
手術が終わって30分もすれば元気になるから、
まったく問題ありません」
ちびっ子たち、元気いっぱいです。
アークさんの犬たちはすべて
不妊手術をしてから里親にでるんですよね。
「そうです。かならず。
引き取ってから手術をすると約束しても
完璧に守られるとは限らないから。
10匹里親にだして、9匹ちゃんとしたとしても、
もし1匹しない子がいたら、
それでゼロになる可能性がありますから」
その1匹の生んだ子どもやそのまた子どもが、
また家をなくしたりしたら‥‥
ゼロというか、簡単にマイナスになりそうです。
「だから、犬も猫も、
かならず不妊手術をしてから里親にだすんです」
いっしょにいるこの子たちが、親ですか?
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「両方メスで、白いほうのゼンヤッタが母犬です。
茶色の子はいっしょに飼われていたひまわり。
どうしても子犬のほうが人気があるけど、
でも、犬も猫も寿命は15、16年です。
小さい時期は短いし、子育てだってたいへん。
それを考えれば、成犬を飼うほうが楽なんですよ」
そうか、いっしょに過ごす時間は、
おとなになってからのほうが、
ずっと長いわけですね。
ところで、この子たちもそうですが、
中型犬が多いような気がするのは
気のせいでしょうか。
「中型犬、多いですよ。
もっと以前、アークの犬は、
ほとんどが雑種の中型犬でした。
でも最近は、ブリーダーの廃業などで、
小型犬を保護することがずいぶん増えてます。
10日ほど前にも、あるブリーダーから、
小型犬をメスばかり16匹、引き取ったところです」
16匹も!
「ほかのブリーダーの手にわたると、
また同じことになってしまいますから。
まだオスが残っているんですけど、
スペースの問題があるので、
先にメスを保護してきたので、
このあと6匹、オスがきます。
いま、クリニックにいる子もいるので
行ってみましょう」
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「はじめてアークに来た子は、一回ここに入って、
ワクチンや、必要な治療、手術の準備をします。
この子たちが、ブリーダーから保護したメスですね」
みんな‥‥やせてますね。
「毛玉がひどかったのでね。
でも、こないだの16匹は、
ずいぶん問題が少なかったほうです。
がんとか目の病気にかかっていたり、歯石とか、
もっとひどい状態で保護することも多いですから。
病気をもっている子は里親にだせないですし、
健康を取り戻すまで、治療とケアをします」
クリニックの奥には、
トリミングと、食餌の用意をする場所があります。
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壁には、びっちりと書き込まれた
食餌のメニューと手術のスケジュール。
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ごはんもおやつも、
みんなそれぞれ、個別のメニューで
用意されています。
これは、とにかく人手がいりますね。
「いま、スタッフが30人、
ボランティアが週末で10人くらいですね。
その人数で犬180匹と猫150匹をみています。
犬や猫の数は、これでも前よりは減ってるんですよ。
以前は、犬だけで300匹いたことがありますが、
そのときは、ケアするのも2匹ずつ。
いまの数なら1匹ずつのケアができます。
人とのふれあいに慣れていない犬も多いので、
里親と暮らす前に、人に慣れるという意味でも、
One to one、1匹ずつのふれあい、
コミュニケーションが大事なんです」
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きっと、人間にひどいことをされて、
人をにくんでいる犬も、いるんでしょうね。
「そういうことも、ありますね」
それは、治るんでしょうか。
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「外観の問題は治りやすいけど、
こころの問題は、やはり治りにくいです。
犬も猫も、スタッフにはたいがいすぐ慣れるけど、
だれにでもフレンドリーにというのは、
時間がかかる子もいます」
そういう場合は、
ずっとここで暮らすことになるんですね。
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「そう、とてもむずかしければ。
いまは老犬に多いですね。
何年も前にアークに入って、ここで暮らしてます」
(明日につづきます) |