長嶋、福島共に無念のTKO負け!
世界ダブルタイトルマッチ
長嶋健吾と福島学。
過去日本王座に君臨し、その後長い間待ち続け
やっと実現した世界初挑戦。
しかし勝敗は皮肉にも、
共に序盤の相手選手の一発強打で決まってしまった。
WBC世界S.フェザー級王座決定戦
「シリモンコン・シンワンチャー×長嶋健吾」
WBC暫定世界S.バンタム級タイトルマッチ
「オスカー・ラリオス×福島学」
は8月24日(土)両国国技館で行われた。
現在日本には世界チャンピオンが二人。
WBA世界S.バンタム級驚異のスタミナを誇る佐藤修。
WBC世界S.フライ級テクニシャン徳山昌守。
今回長嶋、福島がともに勝てば
日本に一気に4名の世界チャンピオンが誕生する。
共に日本王者経験者で人気のある両選手の揃い踏みとあって
期待感を爆発させようとする観客であふれ、
両国国技館は満員。
しかし期待に胸膨らませた観客は
逆に世界の凄さ、一発の怖さを
まざまざと見せつけられる結果になってしまった。
まず先陣を切ってリングに登場したのが6位の福島学。
リングに上がっても微笑んでおり、
気負いは全く感じられない。
暫定チャンピオン、ラリオスは若干緊張気味にみえる。
試合前の予想では
手数の多いメキシカンファイター、ラリオスに対し
変則ボクサー福島が足やトリッキーな動きでかく乱し、
どうペースを取っていくかというものだった。
ラリオスは減量苦による不調が伝えられており、
福島に勝機、特に後半には、あるという見方もあった。
1R立ち上がり、ラリオスは動きが硬く、
連打もワンツーまでで
力も入っており決して本調子ではない。
その様子をしばらく確認し、福島は打ち合える距離で
攻撃の突破口を伺った。
しかしラリオスの見事なワンツーがいきなり福島を捉えた。
枯葉が散っていくようにフラフラとなる福島、
上半身と下半身がバラバラとなり
立っていることさえ困難な状況だ。
そこににさらに右パンチを食い、早くも福島ダウン。
必死に立ち上がり反撃を試みて、相打ちの左フックで
暫定チャンピオン、ラリオスをぐらつかせる。
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序盤果敢に攻めた福島(右)だったが・・・
結果的にこの1Rの攻防が全てになってしまった。
ラリオスは1Rのダウンで一発を狙い、
バランスも崩すなどボクシングが雑になった。
しかし福島にはもう自分の攻撃を
イメージ通り仕掛けることができなかった。
それほどのダメージは深かったのだ。
パンチが効いてしまうと
踏ん張ったパンチを打つことができず
パンチ力は激減しスピードも落ちてしまう。
それを見透かし相手は怖がらずにどんどん攻めてくる。
この悪循環にも耐え、必死で打ち返す福島。
本調子ではないといっても暫定チャンピオン。
ラリオスはそんな福島を左ジャブと右ストレートで
確実に捉えて追い込んでゆく。
6Rからラリオスに本来の手数が出てきた。
良いリズムで時に5発もの連打が飛んでくる。
終わりもその武器である連打だった。
左右、左右、右。計5発のパンチが福島を捉えた。
立って堪えてはいたもののレフリーは限界と見て
試合をストップした。
8R2:27、
福島の初挑戦は何もできないまま終わってしまった。
この日のメインは2位の長嶋健吾。
福島TKO負けの厭な流れを振り払うように
集中した顔に力がみなぎっている。
相手は1位シリモンコン。
5年前大阪で辰吉の復活を見事演出してしまった、
元バンタム級の世界チャンピオンだ。
バンタムからS.フェザーへ3階級上げて5年の歳月をかけ、
再び世界頂点を目指す。
長嶋の武器はキレの良いパンチとスピード。
フットワークを使い、出入りで相手を翻弄する。
さらにあのマルコ・アントニオ・バレラの
トレーナーをつとめる田中繊大氏を陣営に迎え
万全の体制を作り世界戦に備えてきた。
シリモンコンはムエタイも経験しており、
その攻撃力ではこの階級でもトップクラス。
隙のない文字通りの世界1位だ。
1R開始のゴングが鳴る。
サウスポーの長嶋は慎重な立ち上がり。
足を使い、相手の右パンチを警戒し、左側に左側に動く。
しかしいつもに比べジャブが極端に少ない。
まさか手が出ないのか?
それを察したシリモンコンは徐々に前に出てくる。
予想以上のプレッシャーに長嶋はロープ際に詰まっていく。
スタミナが万全な1Rで、このプレッシャーは
かなり危険な状態を意味する。
終了間際とうとうコーナーに詰まり、右を喰らってしまう。
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シリモンコンの右が長嶋(左)を襲う
そして2R。
遠ざかるように足を使うも突破口は見つからない。
コーナー際に追い詰められ
逃げ出すように左側に回った瞬間、
動きを読み尽くしたシリモンコンの右フック一発で
長嶋が後頭部から崩れ落ちた。
その瞬間の音はあたかもプロレスでのような
ドスンとした大音量で
そして後頭部を強打したとすぐにわかる
乾いた軽く激しい音だった。
両国国技館は一瞬沈黙した。
それほど凄まじいダウンだった。
しかし長嶋は立ち上がる。
その直後左フックが顎をかすめ、
右フックで再び崩れ落ちる。
しかし右パンチはのレフリーの静止後にだったため
シリモンコンに減点が命じられダウンではない。
しかしダメージは明らか。
足ももつれ、ガードも上がらない。
体が全くいうことをきかないのが見て取れる。
再開後、左から右で再びダウン。
2R 2:22レフリーが長嶋を抱きかかえ
試合終了を宣告した。
長年日本と東洋のリングでトップを誇っていた2人が、
待ちに待ち臨んだ世界戦で
共に、奇しくも序盤の一発を喰らい、
何も見せ場を作れないうちに屠られた。
早くから世界を見据えキャリアを積み、
厳しいトレーニングを重ねてきた2人だったが
たった一発のパンチが
彼らを一瞬のうちに絶望の淵へと落とした。
観客も長嶋、福島両選手が燃え尽きる以前の
一方的な儚い展開に嘆きの声はあげるも、
攻撃にのめり込む怒声さえも送れずに終わってしまった。
世界チャンピオンとは日本人には
本当は手の届かないものなのだと、
あたかも何かに強烈に指摘されているような
錯覚さえ感じてしまうほど、非情な雰囲気が両国に漂った。
この打ち砕かれた状態を打破してくれるのを
8月27日徳山昌守、10月佐藤修の防衛戦に期待したい。
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