糸井 |
これはなんだか、全体的に見ると、
金歯みたいですね(笑)。
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横尾 |
ハハハハ、そうだね。
金歯から発想を得たのかもわかんないね!
これはね、糸井さんは未完成のを見てるんだよ。
ネオンなんですよ。 |
糸井 |
いずれ、光るんですね。 |
横尾 |
その赤いのがね、バーッとうつって
ものすごいきれいな光なんですよ!
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光ると、こうなります。 |
糸井 |
はぁぁ。 |
横尾 |
それでね、周りを板塀で囲って。 |
糸井 |
すきまから覗くんだ(笑)。
あのぼうやの頭も、光るんですね。 |
横尾 |
そうそう、
あれもちっちゃい豆電球がついていて
ピカーッと光るのよ。 |
糸井 |
横尾さんは、ふざけかたも
身振りが大きいですね。 |
横尾 |
そう?
さて、ここからが見ものだよ。
註:darlingと横尾さん、次の不思議な空間に
足を踏み入れます。 |
|
糸井 |
・・・ここは? |
横尾 |
今日はまだビニールが敷いてあるから
靴のまま入るけど、
展覧会では、お客さんに靴を脱いでもらうの。
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註:部屋全体に横尾さんのコレクションした
滝の絵はがきがビッシリ展示されています。
床はまるで鏡のようになっていて、
天井の展示が写り込むのです! |
下は、ま、水の底だと思って下さい。 |
糸井 |
ふん、ふん、ふん。 |
横尾 |
水面を歩いてるような気分に
なるでしょう? |
糸井 |
(部屋をぐるぐるっと見回して)
滝もなぁ!
横尾さん、よっく集めたなぁー(笑)! |
横尾 |
インターネットがない時代だったから、
資料を集めるのはたいへんだったんですよ。
いまだったら簡単にできることでしょう。 |
糸井 |
なるほど。 |
横尾 |
(しみじみと)
当時はこれだけのものを集めるの、
たいへんだったんだから。
いまはなんでもねぇ、簡単に
ちょいちょいとできるでしょう? |
糸井 |
そうですね。
でも、ここには「集めたぞ」という
パワーがすごくありますよ。 |
横尾 |
つづいての部屋は
おなじ「滝」のテーマなんですけど、
テクナメーションで、
コンピューターで動くんです。
註:テクナメーションとは、テクニックと
アニメーションをあわせた造語。
固定された絵のなかを、
動きのある滝が、とめどなく流れます。 |
|
糸井 |
ここは・・・視聴覚教室みたいですね。 |
横尾 |
え?
なに教室って? |
糸井 |
視聴覚教室です。 |
横尾 |
ああ、たしかにそうだね。
おもしろいふうにいうよね、糸井さんって。
フフフフ。
さあここで、ワンフロアがおわり。
註:ここでふたりはエスカレーターで
1階に移動します。
ちなみに2階には、横尾さんのグッズを売るショップが。
ほぼ日ハラマキも置かれていました。 |
これが「ポートレート」の部屋。 |
糸井 |
あぁ、懐かしいなぁ。
見覚えのある絵ばっかりですね。
おっ、これこれ。
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1975年の紀伊國屋劇場
「安吾フェスティバル」のためのポスターです。
坂口安吾の部屋の、この散らかりかた!
もう、なんていうの?
当時、ある意味での「価値」に見えたんですよ。 |
横尾 |
そうだね。 |
糸井 |
そういうことをぼくは
横尾さんの、この絵で覚えたんですよ。
すごいことですね。 |
横尾 |
ふふん。
こんなん、まだキレイだけどね。
実際はもっとすごいよ。
万年床があってね。
これなんか見てごらん。
これ、アレじゃない?
蚊取り線香のね、クズね。 |
糸井 |
あ、ほんとだ。 |
横尾 |
もう、いろんなものが散らばってる部屋でねぇ。
すごいね、このゴミのなかで
こうやって書いていたんだからさ。 |
糸井 |
ええ。いや、でもこれが
ある種の美しさに思えたんです。
ここまで堕落しないとダメだ(笑)。
あ、ビートルズも
お世話になってますね(笑)。
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これは、いかにも以前見たような絵なんだけど
なんだかあんまり憶えがないな。 |
横尾 |
あ、この絵がこうやって外に出るのは
ものすごい久しぶりですよ。 |
糸井 |
そうなんですか。
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横尾 |
今回の展覧会は、
コレクターのところに行ったままだったものも
たくさん集めているからね。
ぼく自身も
「この絵は久しぶりに見るなぁ」
という作品がたくさんあるもの。 |
糸井 |
あ・・・これは?
よく知っている絵だけども、
いったい誰のことを描いているのかは
知らなかったな。
「ポートレート」の部屋に入っているってことは
モデルがいるんですよね?
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横尾 |
これはね。誰だと思う? |
糸井 |
えっと・・・? |
横尾 |
ジョン・ケージの肖像なの。 |
糸井 |
あ・・・、
ジョン・ケージのつもりだったんですよね。 |
横尾 |
うん。
これはもう、いまじゃあ
ぜんぜん誰だかわからないよね(笑)。
1965年に描いたものだもの。
もうずいぶんと昔だよねぇ。 |