2週間後、ふたたび
数名の乗組員(佐藤、甲野、井澤、岡村、菅野)と
糸井重里とともに
スコップ団に参加しました。
今回は民家のスコップです。
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2階まで浸水していたおうちでした。
津波の泥の線が2階まで来ています。
団長の平さんからは
「手がつけられてない家だから
よく見てしてください。
泥に大事なものがまじってるから」
という指示がありました。
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天井も崩れかかっています。
住むには危険です。
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ふすまの残骸や
崩れた壁をときどきかぶりながら
スコップで泥をすくい、
デッキブラシでかき集めていきます。
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団長の平さんは言います。
「ここのおやじさんは、ここにはもう住まない、
って言ってます。
このあたり一帯、次の計画が決まったみたい。
それでも、こうやってスッキリ
きれいにしようと、ぼくらは思ってます」
スコップ団、今日は
40人ほどのメンバーが集まっています。
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平さんは話します。
「このスコップ団に、
100人来てくれた日もありました。
でも、最初は
3人だったんですよ。
3人のときは、大変だった。
でも徐々に、ひとり増えて、
また誰かがひとり連れてきて、という感じで」
糸井
「いっぺんに、というのじゃなく
少しずつ増えたのが
よかったのかもしれないですね。
だから、みんなの考えてることがきちんと伝わるし、
それぞれの方が自発的に動いていくのでしょう。
平さんがおっしゃるように、
壊すかもしれないけどきれいにしよう、
というのは、いい考えだったと思います」
平
「はい。柱は丈夫なので、ほんとうは
ほとんどの家が住めます。
でも、たとえ壊すにしても
あきらめがつきますよね。
徹底的に探しものをする、という意味でも
スコップするのはいいと思う」
人力で、目で見ながら掘るのが、
大切な探しものを見つけるための
最適のやり方です。
力技だけではない、細やかさ、やさしさ。
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平
「俺がよく言うのは
自分ちだと思ってやってください、ということです。
自分ちだと思えば、みんなかなり
気合入れてきれいにしてくれますから。
泥を掻いて、手探りで
大事な指輪とか、母子手帳とかが
ないかどうか見て、
何もないとなったら、捨てます。
おかしなもので、ここに何がありそうだなと
だんだんわかるようになってきました。
からっぽのポーチひとつ出てきても、
娘さんが縫ったものだと意味がある。
こっちが『意味があんだろうな』と思って
取っておいても、そうじゃない場合もあります」
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平
「スコップ団のTシャツは、背中に
FUCK SAIGAIって書いてあるんです。
がんばろう、とかいろんな言葉があるけど
俺も友達が死んだし、
スコップ団の中には
母ちゃんが死んでる奴もいる、
子ども亡くしてる奴も、
嫁さんいなくなった奴もいて、
みんな頭にきてっから。
だから、FUCK SAIGAIにしました。
今日も、あそこに嫁さん流された奴いるけど、
ここでは気を遣ってられないです」
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「じゃあ、ぼくもスコップ1本いただけますか」
と言って、糸井は泥を掻きはじめました。
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スコップ団は、いつものとおり、
もくもくと作業します。
「これは、要るかな?」
「そっちからほうきで落としてくれる?」
という声も聞こえます。
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私たちのふだんの仲間である
「ほぼ日」の乗組員も、糸井も、
現場に溶け込んでしまって誰が誰やらわかりません。
完全に、そこにいるただのひとりとして
できることをしています。
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スコップ団の荷車の上には、
この家の「大切なもの」が
すこしずつ、積み上げられていました。
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(スコップ団のこと、火曜日につづきます) |