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糸井 |
『きらきら星変奏曲』ってあるでしょ。
「♪きーらーきーらーひーかるー」
っていう、あの、有名な曲。 |
南 |
うん。 |
糸井 |
あれの作者は、モーツァルトなんですよ。 |
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南 |
あ、そう。 |
糸井 |
‥‥と、いうところまでが、
クイズ番組的な教養なわけだけどね。 |
南 |
エエッ(笑)。 |
糸井 |
で、こないだ、ぼーっとしてたらね、
その『きらきら星変奏曲』が聴こえてきたんだ。
で、ああ、これモーツァルトなんだよな、
って思ってあらためて聴いてたら、
やっぱり、すごい曲なんだよ。 |
南 |
へぇー。 |
糸井 |
なんていうのかな、
ものすごく生意気な感じのする曲なんです、
『きらきら星変奏曲』って。
こう、「どないだ!」って
言わんばかりの先走った曲なのよ。 |
南 |
へぇ、そうなの。 |
糸井 |
で、ちょっとびっくりしちゃって。
クイズ番組によく出てくる
「きらきら星はモーツァルトですね」
っていう雑学として覚えてたのに、
しっかり聴いてみると、
もう、どっかーん! なのよ。
うっとりするっていうか、
まるで、なんだろう、
ジェフべックのギターを聴くようだったんだよ。 |
南 |
ほう、ほう。 |
糸井 |
で、驚いちゃってね、
あたらめて、すげーなと思って
そういう原稿書いたんだけど、
こういう「すげーな!」って
オレが思うようなことってね、書くと、
「糸井さんいまごろ気づいたんですか」
って必ず言われるから。 |
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一同 |
(笑) |
南 |
はははははは。 |
糸井 |
そんな、悪気じゃないにしても、
必ず言われるんだ。
で、まあ、それはぜんぜん、いいんだ。
むしろ「いまさら」っていうタイミングこそ
オレの間合いだからさ。 |
南 |
ふふふふ。 |
糸井 |
だからそれを言われるのは平気なんだけど、
困るのは、そういうことを書くと、
「それはじつはまちがってます」なんて
言われることもよくあって。 |
南 |
ああ、そうなんだ。 |
糸井 |
そうなると、ちょっと面倒だから、
こう、得意分野じゃないことについて
いまさらなことを書くときは、
いちおう、調べてみるわけ。 |
南 |
インターネットで? |
糸井 |
インターネットで(笑)。 |
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南 |
ふふふふ。 |
糸井 |
で、インターネットで調べてみたら、
なんと、『きらきら星変奏曲』の
大元になっているあのメロディーっていうのは
フランスのシャンソンだったって書いてある。
「お母さん、わたし恋をしてしまったみたい」
っていう、恋の歌らしいんだよ。 |
南 |
えッ! |
糸井 |
で、当時、それが流行ってたんで、
モーツァルトが14歳だか15歳だかのときに
それを変奏曲にして弾いたらしいんだ。 |
南 |
ああ、そういうことなの。 |
糸井 |
そう。つまり、流行ってるあの曲を
わたしが見事に弾いてみせようじゃないか、
っていうことでさ。 |
南 |
ふーん、なるほど。 |
糸井 |
つまり、そういう意味では、
「どないだ!」って言わんばかりの
生意気な曲だと感じたことは、
まちがってなかったわけだよ。 |
南 |
あーー、そうだね。
むしろ、そのとおりってことだ。 |
糸井 |
そうそうそう。
自分のつくった曲を披露するっていうより、
若きモーツァルトが自分の技術を
アピールするために弾いてるわけだから。 |
南 |
合ってたんだ。 |
糸井 |
合ってたんだよ。
で、それだけじゃなくて、まだあってね。
その『きらきら星変奏曲』っていう曲は、
『のだめカンタービレ』っていう
映画だかドラマだかで使われてるんだって。
で、それは、大元のシャンソンの
「わたし、恋をしちゃったみたい」っていう
意味合いでもって効果的に使われていると。 |
南 |
ほう、ほう、ほう。 |
糸井 |
っていうのをね、インターネットでね、
ものの30分くらいで知っちゃったわけ。
それだけの情報を、ごそっと。 |
南 |
すごいねー。 |
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糸井 |
すごいよ。
で、おもしろかったっていう思いは
もちろんあるんだけど、それ以上に
「速すぎないか、これ」
っていう気持ちもあるわけ。 |
南 |
そうだねぇ(笑)。 |
糸井 |
ふつうだったらね、
こう、本とか、知り合いの話とかで
ちょっとずつたのしめたのに、
もう、かたまりで、わかっちゃうからさ。 |
南 |
すごいね、インターネットは。 |
糸井 |
すごいよー。ちょっと困っちゃうね。 |
南 |
だから、あれだね、インターネットで
「うちは玄関にカギかけてない」なんていうと
たいへんなことになっちゃうね。 |
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一同 |
(笑) |
糸井 |
そうなんだよ(笑)。 |
南 |
みんなに知れわたっちゃうから。 |
糸井 |
もう、泥棒にバンバン入られちゃう。 |
南 |
泥棒じゃないやつまで来ちゃうよ。 |
糸井 |
だから、ここで、もう一度、
念を押しといたほうがいいね。
あの、伸坊んちの玄関は、
鍵がかかってます。 |
南 |
かかってますから。 |
一同 |
(笑) |
糸井 |
ここまで言っておくとね。
インターネットでこれを読んでる泥棒も、
「ああ、そうか、あいつら
かかってないようなこと言ってるけど、
けっきょく、かかってるんだな」って
思ってくれると思う。 |
南 |
うんうん。よかった、よかった。 |
糸井 |
伸坊んちは、鍵が、かかってる。 |
南 |
そう、かかってますから。 |
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一同 |
(笑) |
|
(ほんと、かかってますから。つづく) |