entoan 櫻井義浩さん & 富澤智晶さん フリンジサンダルの改良と、entoanのこれからの2年のこと。

おさいふショルダーの原型は、
entoanのロングセラーのロングウォレット。
でも、構造も、発想も、まるでちがうんです。
このおさいふショルダーの発想から完成までを、
entoanの富澤智晶さんと櫻井義浩さんにききました。
「ロングウォレットにストラップをつけただけ」じゃない、
たくさんのアイデアと工夫がこめられているんです。

>entoanさんのプロフィール

ご購入はこちら

貴重品は手元に。

──
櫻井さん、富澤さん、
ごぶさたしています。
今日はどうぞよろしくおねがいします。
櫻井・富澤
こちらこそどうぞよろしくお願いします。
──
「おさいふショルダー」完成しましたね。
富澤
やっと、かたちになりました。
──
サンプルでは幾度もやりとりをしてきましたが、
最終形を拝見するのははじめてなので
ワクワクしていました。
とっても、いいですね。
革の色もニュアンスがあって‥‥。
富澤
とてもいい色ですよね。よかった。
素材として見たときも「いいな」と思ったけれど、
こうしてかたちになったら、もっとよかったです。

──
そもそもは、
ずっと販売を続けてきた
「ロングウォレット」があり、
そこから「これひとつで出かけられたら」
ということが、ショルダーストラップをつけて
あたらしいものをつくろうとなったきっかけでしたね。
富澤
そうですね、
「ロングウォレット」はおかげさまで
使いやすいという評判をいただいてきて、
entoanでも主力商品だったのですけれど、
みなさんのお財布が小型化する傾向にあり、
だんだんとハーフウォレットに移行してきて。
──
お財布にも流行があるんですね。
富澤
そうですね。もちろんいまも
ロングウォレットは人気商品のひとつなんです。
けれども以前に比べたら
ちょっと落ち着いてきたかな、と感じます。
最近はもうスマホと鍵、カード、
プラス現金を少し、という感じで
荷物を少なく出かけることも増えましたから、
だったらコンパクトで、ショルダーストラップがついて、
「これひとつで出かけられる」ものに
進化させてもいいんじゃないかな、
ということを思っていました。
実際、お客さまからも、そういう声をいただいて。
私自身も、子どもが3人になったことで、
出かけるときの荷物がふえて、
「大事なものは一か所にまとめたいな」
と思うようになっていたのも、きっかけになりました。
子供と出かけるときは
リュックを背負うことが多いんですが、
そのリュックだけじゃダメで。
プラス、手元ですぐに
現金やカードやスマホが取り出せるものがあったら
いいなあと思っていたんです。

──
腰のあたりに、いつもそれがあるのが
安心なんですよね。
富澤
そう、そう! 
その位置に欲しいんですよ。
──
リュックとダブルで使うのって、
すごく便利ですよね。
いちいちリュックをおろして財布を出す、
という手間、あんがいめんどうなんです。
富澤
貴重品は背中にあるよりも
前の、手に近い位置にあるほうが安心ですし。
──
entoanのお二人はオーダーメイドの革靴が本業で、
そこからルームシューズや「こぐつ」が生まれ、
さらに「玄関まわり」というコンセプトで
お財布やポーチなどをつくってこられました。
でもじつは「ほぼ日」では、
トートバッグのご紹介がスタートだったんですよね。
櫻井
そうですよね、いちばん最初は、
大橋歩さんの「a.」(エードット)で、
ぼくの名前で販売をさせていただいたのが
はじまりでしたね。
大橋さんが革のトートがほしいとおっしゃられて、
「ぼくがつくりましょう」と。

富澤
バッグをつくったのは、その時が初めてでしたね。
櫻井
つくったことないけれど
「つくります!」と言ったんです。
最初はクリスマス限定で「5個ぐらい」
というお話だったのが、
ほんとうにありがたいことに、
どんどん数をつくらせていただくことになりました。
──
それが最初のバッグづくりだったんですね。
今回の「おさいふショルダー」は
革バッグとロングウォレットがひとつになった、
とも言えそうです。
櫻井
そうですね。
──
でも「ショルダーバッグ」として
容量をふやすのではなく、
ロングウォレットにショルダーストラップがついていて、
これひとつで気軽に出かけられる、
そのコンセプトがとてもいいなと思いましたし、
「大事なものを肌身離さず」ということからも、
とても役立つものだと思います。
個人的な話ですが、
国内線の空港ターミナルで
クレジットカードを失くしたんです。
そのままゲートでかざせば
チケットレスで使える航空会社のカードを、
ふだん入れている財布から出して
ズボンのポケットに入れていたんですよ。
そのほうがスマートだと思っていたんですが、
どうらやハンカチを出すときに落としたらしく、
空港ってカーペットが多いので音で気づかなかった。
よく「旅のときは貴重品を小さなポシェットにまとめて、
機内でも肌身離さず」って言うのに、
自分はやっていなかった。
この「おさいふショルダー」は
そういう意味ですごくいいなって思ったんです。

バッグとしての使い勝手も。

──
このおさいふショルダー、
おさいふ、という以上にものが入るんですよね。
富澤
そうなんです。
試作品を持って国内旅行に行ったんですが、
とても便利でした。
飛行機の搭乗が電子化されたとはいえ、
手荷物の引換券とか、
プラスで紙が発行されるのを一時的にしまったり、
テーマパークのチケットの半券を入れたり。

──
お買い物や食事のクーポン券とか。
富澤
そうです、そうです! バウチャーみたいなもの。
プラス、子どもたちが汚すので、
ティッシュと除菌シート、
さらにリップを入れて、
スマホと現金とカードも入れて。
──
え? そんなに入るんですか。
富澤
入っちゃうんですよ。
──
すごい!
富澤
ちょっとしたものをスッと入れて、スッと出せる。
常にここ(斜めがけして手元)にあったのが、
すごく便利でした。
その旅行で、製品化に自信がつきました。
──
旅行中って、楽しい反面、
考えなきゃいけないこともいっぱいあるし、
「あれはどこへ行ったかな?」みたいな失くしものや、
ポカをやらかすことがあるんですよね。
でも貴重品がここにぜんぶまとまってるのは、
大きな安心材料の1つになるって思います。
通帳と印鑑が必要なお出かけにも便利ですし、
パスポートが入るので海外旅行にもいいですし。
富澤
これひとつでお出かけもでき、
おっきい荷物を持っているときにサブで使うのも。
──
そうですね! 
ところでこのおさいふショルダーは、
富澤さんがメインデザイナーで、
櫻井さんがアドバイザー的な役割だったんでしょうか。
櫻井
そうですね。
「ここ、どうですか?」って富澤に訊かれると、
「こうしたほうがいいかも?」と意見を言う立場でした。
富澤
意見をもらって、だいぶ修正しましたよ。

──
たとえばどんなところを?
富澤
もう、いっぱいあって! 
櫻井
もうなにを言ったか忘れてるくらい。ふふふ。
富澤
これまでのサンプルを持ってきますね。
それを見たら思い出せるかも。

富澤
こんなにあるんです。
ちょっと思いだしました。
やっぱり武井さん(ほぼ日)と櫻井の
「男性の意見」が、今回すごくありがたかったです。
──
ほんとですか!
富澤
ストラップの長さの調整であるとか、
肩当てがほしいとか。
櫻井
最初は肩当てがなく、
細いストラップゆえに
ちょっと女性的な印象だったんですよね。
これをつけることで
ちょっとメンズっぽさが出て、
トータルでユニセックスなイメージがうまれました。
もちろん細いままで使いたいかたは、
肩当てを外してもらってもいいですし。
富澤
‥‥これが最初のプロトタイプじゃないかな。

富澤
これは構造が従来の「ロングウォレット」と
ほぼ同じで、それにストラップをつけた、
というものでした。
全体的に革が薄くて、仕切りが多く、
やわらかさゆえにお財布としては使いやすいんですが、
ショルダーストラップをつけたときに
ちょっと心もとない。
──
ロングウォレットには、
ぱっと開けると全体が見張らせて、
探し物をぱっと取り出せるよさがありますよね。
いっぽう、おさいふショルダーは、
しまっておきたいものはちゃんとしまえるよさがある。
富澤
最初は、バッグらしくしようかと、
ちょっと複雑な構造にしちゃったんです。
そうしたら櫻井が、
「これは面倒だよ。
「複数の動作を、一度にできない? 
二度手間になることは避けようよ」と。
それで次のサンプルをつくりました。
全体を一体化させたんです。

富澤
このフタの部分のかたちは櫻井が決めました。
「かぶせ」とか「フラップ」と呼ぶんですが。
──
ああなるほど、この形が変わることで、
直線でお財布ぽかったデザインが、
バッグ寄りになったんですね。
富澤
そうですね。
櫻井
フラップの端がめくれないようにということと、
女性だけに寄りすぎない印象にしたかった。
富澤
ロングウォレットのように
フラップを三角にするか、
ちょっとラウンドにするか、考えたんですが、
私だけだと、デザインの細部が
どうしても女性っぽくなっていくんです。
──
それぞれにチャーミングですよ。
でも結果的に「これだ」と決めた最終形が、
「今のベストの答え」ですよね。
富澤
はい。
あと、後ろ側のポケットも
構造を変えたんです。
櫻井
最初はペタンコのポケットだったので、
スマホが入れにくかったんです。
それでマチをつけました。
──
おお、iPhoneのPRO MAXが入るサイズなんですね。 

時間をかけた革のセレクト。

──
ほかに、たとえば、時間をかけたことはありましたか。
櫻井
革選びには時間がかかりました。
富澤
そう、革を探すのがたいへんでした。
適度な張り感と、
厚みがしっかりあるものじゃないと、
ショルダーとしてかたちにならなかったんですよ。
それで最終的に決めたのは
「コンチェリアオットチェント社」
(conceria 800 S.P.A)という、
イタリア・トスカーナのタンナーのつくっている革です。
北ヨーロッパの食肉牛の副産物である革を使い、
1970年代の創業からずっと
植物タンニンなめしを行なっている革の会社です。
独特な「バケッタ製法」という、
動物性油脂をしみ込ませて仕上げる手法をとっています。
櫻井
さらに、表面をちょっと起毛させているんですよ。
──
起毛?
櫻井
革のツルツルの表面にヤスリをかけて、
ちょっと毛足があるようなかんじで仕上げた革なんです。
──
ああ、なるほど! 
それで張り感がありながら、
ソフトな印象があるんですね。

富澤
そうなんです。厚みはあるけれど、
コシがない革だと、この形が維持できない。
かといって、ベルトに使うような、
すごく厚くて硬い革も違う。
それでコンチェリアオットチェント社の
この革に行き着きました。
これ、一番厚いところで
1.8mmある革を表にして、
1.2mmの革を裏面に張り合わせています。
──
1.8mmの革っていうのは、革靴で言うと‥‥。
富澤
メンズのブーツに使うことがある厚みですね。
一般的なレディースの靴は1~1.2mmくらいですから、
1.8mmは靴にはちょっと厚めの素材です。
──
つまり外側の革は2枚を貼り合わせることで
すごくしっかりしたかたちをホールドした。
その分、中は柔らかい素材を使っているんですね。
たとえばコインケースは布製。
富澤
そうですね、布にしました。
それから、カードホルダーは、
取り外せるタイプのものを入れています。
これは「ほぼ日」のみなさんと
試作品を使っていただき意見をいただくなかで
「こうしてみようか」と。

──
「メンズの薄手の長財布のように
スマートにカードの出し入れができたら」
ということでしたね。
このホルダー単体に
カードスリットが6つ、
札入れの部分が1つあります。
財布からカードの出し入れがしづらい、
という問題がこれで解消しました。
これ、ジャケットの内ポケットに入るので、
カードのみで出かけるときにも使えそうです。

ポケット、スリットがたくさん。

──
札入れの場所が多いのも
このおさいふショルダーの特徴ですね。
富澤
カードホルダーのほか、
さらに3箇所、お札を入れる場所があります。
たっぷりと中の見えるマチ付きのポケットが2つ、
ぺたんこのスリットが1つ。

──
なるほど、コインケースの前後に
広いマチのある部分が2つ、
いちばん表側にマチのないスリットが1つ。
マチがあるほうは、フラップを開くと中が見えますが、
マチのないほうはお札が隠せる仕様ですね。
富澤
これも櫻井の意見なんですけれど、
「開いたときに、
小銭やお札などお金が見えるのが嫌だよね」と。
櫻井
開けたらぜんぶ見えるのって、
お財布に特化したロングウォレットでは
利点だったんですけれど、
おさいふショルダーにしたとき、
中が見えすぎることに違和感が出たんです。

──
わかります! 
見えちゃうのも嫌だし、不用心ですし、
見るほうもちょっと
「いいのかな」って気持ちになります。
ここが「おさいふだけれど、
ショルダーバッグでもある」ゆえの悩みですよね。
富澤
そうですよね。
それで、コインケースも最初はファスナーの
ついていないタイプだったのを
ファスナー付きに改良しました。
スマホは裏ポケットに入れることにし、
本体を開けても
お札や小銭が見えないように工夫しました。
──
なるほど
お札を入れるとき、千円札は見えるほう、
一万円札は見えないほう、
というふうに使い分けても良さそうですし。
聞けば聞くほど、
多くの工夫があることがわかります。
話が戻りますが、革の色もいいですよね。
ニュアンスカラーというんでしょうか、
ブラック(nero)
グレー(smog)
ブルー(marine)
ワイン(chianti)の
4つの色がありますが、
どれも日本の製品にはあまり見ない色で、
さすがイタリアだなあって思います。

櫻井
いいですよね、
この革がやっぱりよかった。
──
さすがに白い服と合わせるときは、
移染(こすれて、薄いほうに濃い色が移ること)は
気をつけたほうがいいですよね。
デニムでもなんでもそうですが、
濃い色の製品についてまわる問題です。
富澤
そうですね。これは
タンニンなめしの革製品の宿命ですね。
今回のもので言うと、
ブラック(nero)とワイン(chianti)。
しかも起毛をしているので、
していないものに比べると
すこし移染しやすいんです。
この問題については、かなり悩んだんですけれど、
気になる方は薄い色をお選びいただくか、
合わせる服を濃色のものにしていただく、
そういうふうに対処していただけたら。
──
使っていくと落ち着いてくるものですよね。
富澤
はい。だんだん起毛もとれて、ツヤが出る頃には、
あまり移染しない状態になるはずです。
──
それから、金具にゴールドを使っているのが
高級感につながってるように思うんです。
これは最初からゴールドで
考えてらっしゃったんですか?
富澤
これは悩みました。
私がゴールド派で、
櫻井はニッケルにしたいと。
櫻井
ぼくはいつも「銀色っぽいのがいいな」と言うんです。
これは、好み。
「真鍮にしようか」とも言いましたね。
でも真鍮は経年変化で色が変わるのが個性なので、
おさいふショルダーには合わないだろうなと。
──
ニッケルや真鍮のほうが男性的かもしれませんね。
でもゴールドは、やわらかさと高級感が出る。
櫻井
ゴールドにもいろいろな色があるんですが、
これは、キラキラ感を抑えたゴールドを選びました。
──
スナップボタン、形もかわいいんですよね。
ちょっとだけ膨らんでいる。

富澤
このスナップボタンもかなり探しました。
「いいな」って思う金具はあっても、
同じデザインで大小2つのサイズが欲しかったので、
選択肢が狭かったんですが、
巡り合えてよかったです。
凹凸の凹の部分の金具も、シンプルでいいなと思って。
──
ありがとうございます。こういう細部が、
全体の佇まいのきれいさを引き立てていますね。

ここ最近のentoan。

──
この「おさいふショルダー」は久しぶりの新作ですが、
ほかにも新しいこと、何かあるんでしょうか。
櫻井
あたらしいルームシューズをつくりました。
現行のものから、
ちょっと靴寄りに進化したタイプをつくったんですよ。

──
わぁ、いいですね! 
entoanのルームシューズ、家で愛用しています。
でもこれだったらサンダルっぽさがあるので
オフィスで履くのにも、いいかもしれませんね。
飛行機の中やホテルの部屋で履くのにもよさそうです。
櫻井
自分らしいものがつくれたなって思ってます。
アッパーにはシマウマの革を使いました。
なかなかめずらしい革なのですが、
野生動物ならではのワイルドな質感が魅力です。
手縫いのステッチは
デザインで入れているのもありますが、
傷の部分の補強も兼ねています。
 
クッション性もよくなりましたよ。
これ「こぐつ」と同じ構造なんです。
──
あのかわいい「こぐつ」と! 
なるほど、雰囲気が近いですね。
同じかたちで
大人靴があったらいいなあと思っていました。
櫻井
ちなみにこれが「こぐつ」の次男バージョンです。
パワーアップした「こぐつ」というか。

櫻井
縫い目の糸を外すと上がポコってぜんぶ取れるので、
修理がしやすいんです。
一般的な製法の革靴って、
修理をするのに、
最初の解体がたいへんなんですよ。
富澤
ありがたいことに、
entoanの靴は長く履きたいからと
修理を依頼してくださるかたが多いんです。
これまで、修理のしやすさを優先した
靴づくりではなかったんですよ。
でもこれからつくる靴は、
先々の修理のしやすさも考えて
構造に取り入れようと思っているんです。
櫻井
こぐつの構造を靴に展開していこうというこころみは、
ルームシューズからスタートして、
男性バージョンの紐靴や、
レディースバージョンの靴へと
進めていく予定です。
──
いいですね! 
それがこれからの目標ですね。
櫻井
そうですね。今、こぐつよりちょっとおっきい、
18cm、19cmあたりの靴をつくっているので、
そこから今度は大人のほうに行こうと思っています。
──
富澤さんもなにか練っていることがあるんですか。
富澤
そうですね、サボをつくりたいなと。
これ、ずっと言っているんですけれど、
木靴ではない素材を考えると、
なかなかいいものが見つからなくて。
スポンジより硬いんだけれど、
ゴムより少し柔らかく、
粘りがあるような素材があったら、
木よりも履きやすいかなと思って
いろいろ探しているんですけれど、
なかなか難しくて。
素材から開発するのはロットの問題がありますし、
entoanではまだまだ難しい。
でもあきらめずに考えていこうと思っています。
下の子どもが保育園に行き始めたら、
もうすこし動ける時間ができますから、
そこから本格再始動かなって。

──
お二人の新しい展開、たのしみです。
富澤さん、櫻井さん、
今日はありがとうございました。

(おわり)

2025-03-24-MON

entoanは、靴職人の櫻井義浩(さくらいよしひろ)さん、
富澤智晶(とみざわちあき)さんのふたりが、
オリジナルデザインで、手づくりの靴をつくる工房です。
セミオーダーの革靴をはじめ、
鞄や小物、最近では家具などにも着手。
素材の良さ、ていねいに仕上げるその技術と
しずかに「もの」と「ひと」をみつめるセンスで
注目を集め、その活動の幅をひろげています。

櫻井さんは1984年生まれ、靴職人。
大学で会計の勉強をするも、卒業を前に進路変更、
ちいさな頃から好きだった「靴」の世界にとびこみました。
エスペランサ靴学院で基本的な靴づくりをすべて学んだあと、
在学中からアルバイトをしていた靴修理の会社を経て、
クリエイターの独立支援をおこなう
「浅草ものづくり工房」内に「entoan」を設立。
3年間、浅草をベースに活動を続けたのち、
2012年、埼玉県越谷市に工房を移転しました。

富澤さんは高校卒業後、文化服装学院に入学、
ファッショングッズ基礎科で
シューズ、バッグ、帽子、ジュエリーの基礎を学びます。
2、3年生はシューズ科に進学、
3年生の夏にエスペランサ靴学院と合同で行った
靴のファッションショーで櫻井さんと出会いました。
卒業後、婦人靴メーカーに就職し、販売と企画を経験。
そののち、靴のアッパーを作る
製甲職人のもとで1年間働きます。
大量生産ではなく、ひとつひとつ人の手で
ものが生まれる経験と、一流の製甲職人の生きた技術を
学べたことが、富澤さんの転機となったそうです。

やがて櫻井さんの「entoan」が軌道にのり、
仕事が忙しくなってきたことをきっかけに、
富澤さんも正式に参加。
ふたりでものづくりをはじめ、
公私ともにパートナーとして、現在に至ります。

現在では年に数回の展示会をおこなうほか、
工房にショップを併設、
また最近ではネットショップにも力を入れ、
展示と販売をおこなっています。

ふたりはもちろん
オーダーメイドの革靴をつくることが本業ですが、
あまり革を使ってつくりはじめた小物も好評。
「ほぼ日」ではこれまでにトートバッグ、ポーチ、
ウォレット、パスケース、ルームシューズ、
フリンジサンダルなどを販売してきました。

entoan official website:
http://www.entoan.com/