【24】コンクリートもサジ加減が大事。 
 
   
 
コンクリートを打つところに立ち会うことができました。 
今回はそのレポートです。 
工事箇所は1階の壁の一部。 
高さは70センチ、幅は6メートルぐらいでしょうか。 
現場に来ているのは岡さん以外に3人。 
いずれも古い友人で、 
岡さんがあらかじめ連絡を取って呼びました。 
建築とは別の仕事をもっていながら、 
休みの日を利用したりして来てくれるのだそうです。 
「ありがたいことに、 
 多くの人が喜んで参加してくれます。 
 別の用事とかち合った時は、 
すごく残念がってくれたり‥‥」 
と岡さん。 
この日は久しぶりに見る顔もありました。 
手伝いに来てくれたYさんとは、 
会うのが3年ぶりとのこと。 
蟻鱒鳶ルの工事は、友人と顔を合わせる 
良いきっかけにもなっているようです。 
■優れた料理人の手さばき 
作業が始まりました。3人が地下に降りていきます。 
地下には砂や砂利を保管している区画があり、 
その前にはYさんとHさんが陣取りました。 
  
▲砂と砂利を保管する区画が地下に設けられている 
Yさんが砂や砂利をバケツに採り、 
Hさんはそれをハカリに載せています。 
バケツで計量された砂と砂利は、 
同じく地下にいる岡さんの前に 
次々と積まれていきました。 
  
▲砂や砂利はバケツに採られハカリで計量 
岡さんの仕事は、ミキサーを使って材料を混ぜ、 
コンクリートをつくることです。 
まずミキサーのなかにセメントを投入。 
そこにHさんが用意した砂や砂利、 
そして水と混和剤(コンクリートの性能を 
上げるとされる材料)を加えます。 
  
▲ミキサーに材料を投入している岡さん 
それぞれの材料をどれだけ入れれるか、 
正しい量は決まっているのですが、 
微妙に変えたりもしているそうです。 
この日は、水の量をほんの少しだけ減らしました。 
前日に雨が降ったので、 
砂や砂利が湿っていると見ての判断です。 
レシピに縛られずに、 
状況を見て柔軟に対応するというわけですね。 
「サジ加減というやつです。 
 自分で料理をつくるときに、 
 塩や砂糖の入れ方をちょっと変えるのと同じ」 
なるほど、このあたりは 
優れた料理人に通じる手さばきです。 
ミキサーが動き出してから数分後、 
時計を見ながら岡さんはミキサーを止めました。 
練り上がったコンクリートはドロドロの状態。 
これを箕(み)に取り出します。 
  
▲練られたコンクリートは「箕」を使って、 
手渡しで1階へと上げられる 
箕とはチリトリのような形をした道具で、 
ここではプラスチック製のものを使っています。 
「バケツだと取り出しにくいので、箕が便利。 
 一人でコンクリートを運ぶのに 
 ちょうどいい大きさだし」 
と岡さん。この道具のおかげで、 
効率が上がったとのこと。 
箕に入ったコンクリートはYさんを介して、 
1階へと持ち上げられます。 
それを受け取ったFさんは、 
すぐさま型枠の中へ流し込むと、 
長い棒のようものを取り出して、 
コンクリートに突っ込みました。 
これはバイブレーターという機械で、 
震動させることによって 
材料を均質に行き渡らせる効果があります。 
バイブレーターを作動させると、 
ドロドロとしていたコンクリートは、 
次第にトロンとしてきます。 
練ったばかりのコンクリートというのは 
固体と液体の中間にあるのだな、 
ということがわかります。 
  
▲型枠にコンクリートを流し込んでいるところ 
  
▲バイブレーターを突っ込んで締め固める 
■あとは居酒屋へ‥‥ 
岡さんのミキサーで 
一度につくれるコンクリートの量は、 
およそ50リットルぐらい。 
重さにすると120キログラムほどになります。 
それだけでは1日分にしても全然足りないので、 
これを繰り返して行います。 
コンクリートを練ってつくる1回分を 
1バッチと言いますが、 
この日の作業は17バッチを数えました。 
それでも少ない方で、人手を多く集めた日には、 
1日のうちに30バッチもやったことがあるそうです。 
現場は手慣れた感じで、 
テキパキと作業が進められていきました。 
その様子は、昼のかき入れ時を迎えた 
食堂の厨房をのぞいているような感覚です。 
とはいえ、ピリピリした感じは全然なくて、 
ラジオからはナツメロ歌謡が流れているし、 
無理をせず楽しみながらの共同作業といった感じです。 
これなら繰り返し現場を手伝いにくる人がいるのも 
わかる気がします。 
いや、コンクリートは重いし、汗かくし、疲れるし、 
たいへんな仕事であることは確かですが。 
そんなことを考えているうちに 
今日、予定していた作業が無事に終わりました。 
「おつかれさま!」 
あとは近くの居酒屋へ直行。 
飲んで、しゃべって、一日の疲れを癒します。  |