糸井 |
それでは、特別賞について。
そもそも、これは「作品」なのか、
というところから話し合って、
特別賞という新しい枠まで
できてしまったという、
「バイオ洗剤とれるNo.1」です。
そうですね、じゃ、卓さんから、まず。
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佐藤 |
はい。この作品は、
環境に配慮した汚れ落とし、
つまり、洗剤みたいなもので、
いわゆる形をもった作品ではない。
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糸井 |
そうですね。
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佐藤 |
すばらしいコンセプトを
もったものだと思うんですけど、
利益率も悪そうですし、
おそらく大企業は取り組みにくいでしょう。
資料によれば、それをご年配の方々が
奮起しておつくりになっているそうです。
そう聞くと、なんというか、
デザイン性はなくても勇気づけられる。
こういうものを受け入れることが
「作品大賞」っぽくていいんじゃないか、
というふうにぼくは思いましたね。
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ひびの |
これが、特別賞に選ばれたのは、
なんと言っても、この作品大賞の前から
糸井さんが使っていたっていう、
そのひと言が力強かったですね。
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糸井 |
そうなんです。
前に一度、「ほぼ日」に
まったく違う企画のことで
メールをいただいたことがあって、
そこからこの洗剤を知って取り寄せたんです。
そしたら、すごく落ちるんですよ。
なんにでも使えるし、おまけに環境にもいい。
ぼくこれで、頭まで洗いましたから。
ちょっと独特のにおいがあるのが
玉にきずなんですけどね。
で、その人たちが今回応募されていたので
「へーー」と驚いてたんです。
ただ、ふだんからこれを使ってるので
逆にぼくは票を入れなかったんです。
でも、ほかのみなさんにも引っかかったようで
それならということで、後押しを。
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大橋 |
いわゆる作品とか、
「ものをつくる」ということとは
ちょっと違ったものですよね。
でも、はっきり目にみえる形をもってなくても
「作品」になるといえるのかもしれません。
例えば、四角い部屋の中に座らせられて、
ノイズの音が流れてきて、
「はい、これはコンテンポラリーアートです」
って言われると、それが現代美術の
ひとつになってしまうように。
実際には、形をもったものが
つくられているわけではないのだけど、
「作品」と言ってしまえば、
作品になるのかもしれない。
そんな風に思いましたね。
しかも、これは間違いなく実用品として
成り立ってますから。
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糸井 |
ああ、いまおっしゃったことは、
「ほぼ日刊イトイ新聞」そのものとも
共通することがあるかもしれません。
というのは、もともと「ほぼ日」って
文書を中心にしたウェブサイトだったんですけど、
商品とか、イベントをつくれるようになったとき、
そういうものすべてを含めて、
コンテンツなんだよって言い方をしたんです。
つまり、「誰かが考えた結果」が
ものという形の、コンテンツになっている。
文章で書く記事も、イベントも、商品も、
みんな「誰かが考えた結果」なんですよね。
この洗剤も同じで、
いわゆる作品としての形は取らなくても、
「こういう洗剤をつくろうよっ」という
「誰かが考えた結果」として
実現したものの形だと思うんです。
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佐藤 |
ええ、そう思います。
こういうものも認めることが
「作品大賞」というものの
今後の可能性を広げていくでしょうし。
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糸井 |
そうですね。
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佐藤 |
まぁ、正直、これ、
プロダクトのデザインとしては
これからという感じですが。
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一同 |
(笑)
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桐島 |
「ほぼ日」で名前と容器を変えて
売り出してくださいよ。
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糸井 |
ない話じゃないですねぇ(笑)。
考えていきたいと思います。
さて、つぎは、みなさんが
ひとりひとつずつ選ばれた個人賞について
ひと言ずつ、コメントをお願いします。
じゃあ、「ペンギンのパラシュート」を
選んだひびのさんから。
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ひびの |
はい。これ、バリエーションを増やして、
価格もぐっと控えめにして、
普及させたいなあと思いますね。
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糸井 |
もう、普及のことを(笑)。
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ひびの |
はい。
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一同 |
(笑)。
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ひびの |
この仕組みで、ほかにいろいろ
つくれると思うんですよね。
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桐島 |
いろんな動物のパラシュートを
つくってみたり?
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ひびの |
そう!
もっというと、パラシュートだけじゃなくて、
この素材でバッグにもなっていたりしたら、
とても楽しいじゃないですか。
だから、これで終わりにしないでほしい。
じゃないと、私がつくっちゃうぞ、
みたいな気持ちですよ。
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一同 |
(笑)。
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糸井 |
受賞者にプレッシャーをかける審査員(笑)。
つぎは、かれんさん。
なにを選んだか教えてください。
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桐島 |
私がいちばん好きなのは、
今回の大賞を受賞した
「カンカンバッチ」なんですけど、
もうひとつと言われたら、この手帳
(「一詩一冊・雨二モ負ケズ手帳」)です。
このこだわりに対しての敬意です。
もうここまでこだわられたら、
値段は見ないで買ってしまうでしょうね。
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糸井 |
これに関しては、
バイヤーの仕入れとしてではなくて、
ひとりの買い物客として、ですよね。
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桐島 |
はい。
どちらかというと、
外に開いている作品というよりは
内向きの作品だと思うんですが、
特別な紙、特別な革を使っていて、
伝統的な製本技術で仕上げてある。
細部へのこだわりが気に入りました。
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糸井 |
この手帳は、
アイディアの切り口のひとつに
宮澤賢治が持っていた手帳と、
その詩のことがあるんですが、
その部分については?
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桐島 |
すいません、
それはどちらでもいいですね。
正直、私には、なくてもいい。
どちらかというと、
惹かれたのは、ものとしての魅力。
製本とか素材の素晴らしさです。
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糸井 |
なるほど。
どんどん行きましょうか。
大熊さん、どの作品に個人賞を?
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大熊 |
僕は、この「がらすのはんこ」を選びました。
単純に、ガラスとはんこの組み合わせって、
見たことなくて、とても新鮮に映ったんです。
オブジェとしてもすごくかわいいし、
作家さんが端材を使って、
そういうこぼれたところから、
作品をつくるっていう発想にも
おもしろさを感じましたね。
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ひびの |
私もこの作品、好きでした。
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糸井 |
これは、
どうやってつくっているんでしょう。
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大熊 |
きっと、削っているんだと思いますよ。
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糸井 |
それじゃあ、ものすごく
手間がかかっているんですね。
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ひびの |
そう思いますね。
ガラスって、本当に手間がかかるんですよ。
私は体験会のようなところで
つくってみただけでしたけど、
それだけでも大変さがわかりましたから。
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糸井 |
では、大橋さん。お願いします。
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大橋 |
私は、ワイシャツをリフォームした
この服(『かっぽう着』)ですね。
この審査会場には3着しか
届いていないみたいですけど、
書類で見たときに、たくさんの
違った種類のかっぽう着が並んでいて、
その雰囲気がたまらなかったんです。
なんていうんでしょう、
みなさんの選んだものに比べると
ちょっとふつうだったかしら、
とも思うんですけど(笑)。
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桐島 |
いえいえ、私もこれ、気になってました。
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糸井 |
うちのスタッフのなかでも
かなり評判が高かったそうですよ。
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大橋 |
そうですか(笑)。
たしかに、ふつうだったかしら、
なんて言うと、
この「かっぽう着」を
つくった方に悪いですね。
この「かっぽう着」は、
ほんと、好きです、私。
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糸井 |
ありがとうございます。
じゃあ、卓さん。
びっくりしたといえば、僕は、
卓さんが選んだ作品みて、
本当に驚きましたよ(笑)。
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佐藤 |
(ニヤニヤしながら)
この、ふくろうです。
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一同 |
(笑)
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佐藤 |
この、「ふくろうの砂時計」を
選んだ理由も、理屈も、
語りたくないくらいです。
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糸井 |
ふふふふふ。
理論派のあなたが(笑)。
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佐藤 |
ただ、もうなんか、
心を惹かれてしまったというか‥‥。
「なんてかわいいんだろうっ」て、
そう思っちゃったんです。
これ僕からしたら褒め言葉なんですけど、
こういう置物って、
「どうしようもない」感が
あるじゃないですか?
木彫りの置物みたいなね。
ダサいのはわかっているけど、っていう。
「お前、僕が買ってやらなきゃ、
誰が買ってくれるんだ」みたいな感じ。
本当に‥‥‥‥かわいいっ。
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一同 |
(爆笑)
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糸井 |
正直、卓さんが
普段デザインしているものには、
まったく通じないですよね(笑)。
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佐藤 |
はい。まったくないです。
でも、こういう微妙な置物、
じつは、大好きなんです(笑)。
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糸井 |
こんな佐藤卓、見たことない!
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一同 |
(笑)
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糸井 |
細井さんは、
このお椀(「手つき椀」)ですね。
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細井 |
はい。この作品は、置かれているときから、
自然に指を入れて、こう持ち上げたくなった。
つまり、作者の意図したとおりに、
手に取らせる力が作品にあるということです。
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糸井 |
ああ、なるほど。
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細井 |
別な言い方をすると、つくり手の
「熱いものを入れたときは、
こう持てばいいですよ」という思いが
この形から明確に汲み取れたんですね。
そして、そんなふうに浮かび上がってくる、
つくり手の「思い」が、なんというか、
とても「いい人っぽい」って思えたんですよ。
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糸井 |
あーー、わかります。
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細井 |
これがいいのかどうかわかりませんが、
僕は、個人的な傾向として、どうしても、
「いい人かどうか」を尺度に
作品を見てしまう癖がありますね。
「すごい稼いでやるぞ」とか、
「俺って、こんな腕がいいんだぞ」
みたいなことのために
つくられている作品というのは、
なるべく選びたくない(笑)。
まぁ、勝手な意見かもしれませんが、
買い手が、もののつくり手と、
長く付く合うためにそこを見るのは、
案外、大切なことなのではないかなぁ
って思うんです。
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糸井 |
ありがとうございます。
じゃあ、ぼくの個人賞について。
このバナナ
(「無着色の木でできたバナナ」)
なんですけど、この作品は、
とにかく、手抜きがないんです。
もうそれにびっくりしちゃった。
なんていうのかな、
どこまでも同じ心で
ひとつの作品をつくっている。
そのつくる心の平らかさ加減に、
感心させられたんです。
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佐藤 |
うん、うん。
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糸井 |
あと、もうひとつ、バナナって、
自分にとっての永遠のアイテムなんです。
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佐藤 |
永遠のアイテム?
それはどういう意味ですか?
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糸井 |
‥‥そう言われると困りますね。
永遠のアイテムは、
永遠のアイテムですよ。
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一同 |
(笑)
(つづきます) |