166:「地球写真展 -2-」
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「むむ、ここは事件現場だな。
書き込まれたメッセージの位置から察するに、
被害者の手はかなり長いものと思われる。」
「あまりいいかげんなこといわないでくださいよ、先生。」
「しかし、この男。ここ通るたびに、
思い出し怒りしてるんだろうな。それつらいなあ。」
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「地球人が機動性を犠牲にしてまで、
前肢を連結して移動する現象についての考察・(1)」
過去のレポートでは雌雄組と同性組によって、
手繋ぎ率が有意に変化する理由がわからなかったが
精細な再調査の結果、
雌雄の場合に限って心臓の鼓動が高まるといった
特殊な反応がみられることが判明。
つまり一層の体温上昇効果がみこまれることが、
この手繋ぎ率の差を生みだしていると思われる。
証明として先日、調査した印刷媒体「anan」による
雌に理想とされる雄の要因に
「おもしろい人」「やさしい人」とならび
「あたたかい人」という文字列を発見した。
地球人の平均体温は36.5度。
カラフルな疑似表皮や暖房機器を発明してはいるが、
体温調節機能はお世辞にも強いとはいえない。
体温の高い雄は生存率が高まり、
冷え性の多い雌にアピールするのだろう。
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「えー、ボス。ターゲットは午前中だというのに
朝マック後、爆睡。しばらくして、がばっと飛び起きたと思うと
Mサイズのオレンジジュースの上に
鏡をセットして念入りにメイクをはじめました。
このままじゃ日本の将来はどうなりますか?どうぞ。」
「あー。さぞプリティーになるだろうね。」
ジャムにもならず
フルーチェにもならず
タルトにもムースにもならず
つぶれずに
虫にも喰われず形よく
旬でもないのに
まっ赤に染まる。
そんな勝ち組だけが
羽織ることをゆるされる純白のマント。
エリート街道をひた走る一団には
あまりに画一的にすぎると
批判の声もあるとかないとか。
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バックナンバー「地球写真展」はこちら。
https://www.1101.com/paper/1999-07-09.html
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