1/12/2002
シベリア鉄道の旅 DAY 17 PART 1
モスクワで、オクジャワさんの足跡をたずねて。
6時半起床。
Aerostarはとても綺麗なホテルで、
他の都会と変わらない。
昨晩はプーシキン広場(渋谷みたいな中心地)で
ネオンや見慣れた看板などに
囲まれている中で撮影したり、
大勢の若者を久々にみたりして、
少しずつ感覚が戻ってきた。
だけど、朝起きてからずっとCNNを見ていて、
ENRON倒産とか事件がたくさん起きていても、
世界のニュースをとても遠く感じる。
‥‥自分はいったいドコにいるんだっけ?
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今日も空は灰色。
でもあったかくて、気温は−2℃から+2℃くらい。
シベリアに来て初めて、プラスの気温かも。
今日は一日中盛り沢山の予定。
このシベリアの旅の大きな目的の一つ。
吟遊詩人であり、ミュージシャンであり、
画家であり、絵本作家でもあった、
“ロシアの心”と呼ばれる
ブラート・オクジャワに出会いに行くため。
ロシアに行くと決まってから、
オクジャワという人がいると知り、
彼の作品を見たり聴いたりしているうちに、
その繊細さや、自然に対する感謝の念、
見えないものを表現しようとしていたことなどに
心を打たれてしまった。
でも、オクジャワさんはもう数年前に亡くなられている。
私達は今日、オクジャワさんの生きていた風景をたどり、
オクジャワ婦人を訪ねる。
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まず、ロケバスで10分ほど移動し、並木通りに到着。
ここはオクジャワさんが好きだったという並木通り。
ここはニューヨークのようであり、
パリのようであり、イギリスのようであり。
“都会の中の自然”が常に一つのテーマとしてあった
オクジャワさんは、よくここを散歩しながら
様々な“音”を聞いていたという。
彼の歩いていた時と今とは、
そんなに変わりはないはずだから、
彼に聞こえた音が私にも聞こえるはず。
その音を探しながら、想像しながら、
ゆっくりと散歩してみた。
ここに住んでいる鳥も、その頃と変わらないだろう。
鳥のさえずり、ブーツで雪を踏み締める
キュッキュッという音
(シベリアの深くサラサラな雪とは音も少し違うのだ)、
車の行き交う音。
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たぶんこの公園は夏にはもっともっと人でいっぱいで、
恋人達や親子連れ、子供達、
犬が走り回っていたりするのだろう。
木の枝はもう芽がふくらんでいた。
秋も紅葉が美しいだろうな。
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背丈が人間の腰ほどもある
巨大なボルゾイのような黒い犬が走ってきて、
飼い主と遊んでいるので、遊ばせてもらう。
飼い主のお兄さんに
「ベンツと同じ値段」だと自慢される。
投げた木の枝を全速力で取って戻って来たり、
上に投げるとキャッチしようとして飛んだりする。
飛ぶと私の背丈くらいまで来るのでちょっとこわい。
でもすごくしつけられた従順な犬。
誇らし気な飼い主。
世界中どこでも、都心に住んでいる人は
「ペットは友達」と、人間と同等の扱いをする気がする。
比較的田舎の地区のほうが、
動物を動物として扱うのだな、
とシベリアの田舎を旅してきて思った。
やっぱり都市の暮らしには、
友達としての生き物の存在が必要になるのかも。
家族が必要。
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広場では、クリスマスツリーにたくさん付いている
<NIVEA>と描かれた宣伝用のオーナメントの
取り外しをしていた。
取り外された飾り付けを
小さい子がうれしそうに持ち帰っていた。
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木でできた、妙な動物のシーソーが雪の中
ポツンとあったのも印象的。
ロケバスが停めてあった角の酒屋で、
クルーを待っている間、
雨宮さんとお土産にウォッカを買う。
メジャーなウォッカのオーソドックスな瓶から、
飾っておきたい繊細なものまで、
様々な瓶が並んでいて、迷ってしまう。
半透明の綺麗な瓶と、
小さくてかわいいサイズのFLAGMANを購入。
記念すべきマイ・ファースト・ウォッカ(笑)。
自分が呑むためじゃないけれど。
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オクジャワさんがずっと住んでいた地区を散歩する。
昨日の夜ちょこっとだけ訪れた街道、
昼間来てみると全然風景が違う。
オクジャワさんが生れ育った家は、
アルバート通りの裏にある、小さなアパート。
お店の間の小さなトンネルのようなところをくぐると、
アパートの中庭にでる。
大きな木が日光をさえぎり、
壁に這うツタが緑の湿った空気を濃く出している。
アパートは工事中だったけれど、
ヨーロッパの路地裏の隠れ家という感じで、心地いい空間。
そしてオクジャワさんが植えたという4本の木に感動。
彼が小さい時に、庭に植えたのだそう。
70年弱の年月そこにあって、彼が居なくなっても
同じ場所で生き続けている。
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途中、お腹がすいてマクドナルドに寄る。
お店やキオスクなどがたくさん並ぶ繁華街の中、
ロシア語の「マクドナルド」に、
なぜかやけにハシャいで、
むだに写真を何枚も撮ったりして。
今まで、ふかしたジャガイモとか蒸した魚とか
天然な食べ物ばかりで健康的に過ごしてきたので、
ジャンクフードがやけに新鮮。
たまには、うれしい。
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その次のオクジャワさんゆかりの場所は、
角にロシア式の大きな教会がある
モスクワ版スクランブル交差点。
でもその交差点でスクランブルしているのは
人間じゃなくてトロリーバスの配線。
オクジャワさんの名曲「真夜中のトロリーバス」の
舞台になったのがこの交差点だ。
次から次へとトロリーバスが行き交う。
オクジャワさんは真夜中に
バスに乗るのが好きだったらしい。
曲の中で、トロリーバスの乗客は
目も合わせずに黙々とバスに運ばれている。
静かな、空気が止まった空間。
そして「沈黙の中に善意が満ちているんだ」──。
このワンフレーズに涙がでそうになる。
オクジャワさんは、
空気の中に存在する感情を知っていた。
陽がくれてきた頃、本格的に雨が降ってきた。
吟遊詩人の集まるライブハウスへ向かう。
通りすがった魚屋さん? の看板がやけに可愛い。
映画に出てくるみたいな、冷たい雨の降る路地。
地面が黒くてかって、
どこからかコツン、コツン、という
トレンチコートを着た男性の足音が聞こえてきそうだ。
上からのライティングが
静かに曲を迎える黄色いドアには、
シンプルなギターの絵。
さすがプロパガンダの国、
ポスターや看板のデザインが素晴らしい。
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地下に降りていくと、
そこはニューヨークのライブハウスのよう。
今夜の出演者は、オクジャワさんを敬愛する
シンガーソングライター、クラマレンコさん。
クラマレンコさんは
ピーウィーみたいな懐かしい感じの(笑)
30代の男性。
ものすごーくいい声をしている。
ギターを演奏しながら次々と
シンプルなメロディーの曲を披露する。
客層は様々。もっとおじさんの世代の人が
しっとりと呑みに来ている感じかと想像していたら、
20代くらいの人達がグループで来ていたり、
明るい雰囲気。
みんな一緒に歌を口ずさんだりしている。
アンドレイさんに歌詞の内容などを
説明してもらいながら聴いていると、
私も聞き覚えのあるオクジャワさんの曲も
何曲が演奏していて、お客さんと合唱になったりする。
途中でクラマレンコさんが休憩を取って、
テーブルまで話に来てくれた。
(他の客は皆もう知り合いになったから
今日の新しいお客さんである
私達のところに来たんだよ、と言う。)
本当に気持ちの良い声で、自分の想像の中の
「ロシア語で歌う人」の声にぴったりだった。
オクジャワさんのスピリットを継いで
こうやって歌い続けている人が、何人もいるのだ。
オクジャワさんが本当にロシアの人々に
愛されていたのだと、感じる。
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ジョアン・ジルベルトの
トリビュートアルバムに
参加しました! |
『フェリシダージ・トリビュート・トゥ・
ジョアン・ジルベルト』
9月3日発売!!
東芝EMI/TOCT−25177/
¥3,000(税込)
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9月に初来日したボサノヴァの神様、
ジョアン・ジルベルト初来日記念アルバムに
ナタリーワイズと一緒に1曲参加しました。
ジョアンのカヴァーを中心に、
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<参加アーティスト>
宮沢和史・畠山美由紀+Cholo Club・
小野リサ・THE BOOM・
Nathalie Wise&坂本美雨・
Ann Sally・青柳拓次・
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ナオミ&ゴロー・Dois Mapas・
中村善郎・AURORA・
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くわしくはこちらのサイトへ。
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“aquadrops”が誕生しました。 |
aquadrops(アクアドロップス)は、
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美雨さんからのメッセージをどうぞ! |
aqua drops...
揺れる水の粒。
したたる、春の慈雨。
冷たい水に触れる、指先。
透明感のある繊細なエレガンス、
毅然としたハードさ、フェミニンな揺らぎ。
耳から首筋、鎖骨へのしなやかなラインは
女性の美しさの象徴のような気がします。
そこを、水滴が一粒流れ落ちるような...。
そんなイメージを抱いています。
幼い頃から、母親や友人や自分のために
ビーズでアクセサリーを作るのが
好きでたまりませんでした。
最近、人を綺麗に見せるラインの洋服が
どんどん消えていき、
女性がドレスアップして行く場所も少なくなった。
そんな中で、おもわず背筋がピンと延びるような、
髪をキュッとアップにして出かけたくなるような。
生活の中で愛しい人や物を
真っすぐに見つめられるような。
自分が大切に作ったピアスを
耳にかける時に感じる、そんな気持ちを、
身につける一人一人にも感じてもらいたいと思い、
一つ一つ作り始めました。
坂本美雨
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http://www.miuskmt.com/
限定通信販売もスタート! aquadrops取り扱い店
<20471120>
東京都渋谷区神宮前3ー29ー11
03ー5410ー2015
12時〜20時
<RICO>
渋谷区恵比寿西2ー10ー8
03ー5456ー8577
12時〜20時 |
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