東京の西を流れるちいさな川沿いでの「みちくさ」は、
これで最後になります。
ゴールに設定していた「ほたるの里」という場所に、
吉本さんと梅田さんが到着しました。
「そっちにちいさな田んぼがあるんですよ」
道案内する梅田さん。
吉本さんがそのあとに続きます。 |
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吉本 |
へええー、
ああ、こんな場所があるんだあ。 |
梅田 |
三鷹市内の小学生や
中学生を対象にして、
農業体験イベントなどをやっている場所ですね。 |
吉本 |
それは、田植えとか、稲刈りとか? |
梅田 |
そうそう。
あとは「ほたるの里」という名前ですから、
初夏のころにはこの場所に
本物のホタルを放して鑑賞する
イベントも行われているようです。 |
吉本 |
本物のホタルが。
東京なのにねえ。
‥‥あ、田んぼがありました。 |
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梅田 |
そちら側が、ちょっと崖というか、
小高い林みたいになってますでしょ? |
吉本 |
ええ。 |
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梅田 |
その上の方に、国立天文台があるんですよ。 |
吉本 |
そうなんですか。
へえ~、いいところですねえ。 |
梅田 |
崖からの湧き水が豊富なので、
ホタルが養殖されているわけです。
そのホタルのエサになるカワニナという貝も、
ここの小川に、いると思うんですが‥‥。 |
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吉本 |
‥‥あ。 |
梅田 |
ん? いましたか? |
吉本 |
カニがいました、ほら。 |
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梅田 |
ああ、サワガニだ。
よく見つけましたね(笑)。 |
吉本 |
かわいい。 |
梅田 |
指をはさまれないでください(笑)。 |
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吉本 |
さ、川に帰りましょう‥‥(放す)。 |
梅田 |
ここはですね、
いつもきれいに管理されているんですよ。
湧き水を利用してワサビもつくられてますし、
カラーという花も栽培されています。 |
吉本 |
ワサビ田まであるんですか。
ちいさな場所にいろんな生き物が
たくさん育ってて‥‥すごいですね。 |
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梅田 |
植物もたくさんありますでしょう?
クレソンがふつうにはえてますし、
オオカワヂシャに、ノカンゾウ、
カラスウリに、ムラサキツユクサ、
ユウガオも見えます。 |
吉本 |
ほんと、たくさん。
‥‥‥‥あ。 |
梅田 |
‥‥‥‥ああ、きましたね。 |
吉本 |
はい、とうとうきました。 |
梅田 |
ポツポツと。 |
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吉本 |
雨が強くなる前に、
最後にもうひとつだけ、
みちくさを教えてください。 |
梅田 |
わかりました、じゃあ、どれにしましょうね‥‥。
ええと‥‥
あ、これとか、どうでしょう? |
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梅田 |
これは、チガヤという名前です。
ちょうど花穂が出てますね。 |
吉本 |
きれい‥‥。
これがチガヤなんですね。 |
梅田 |
はい。 |
吉本 |
昔アシスタントをしてくれた女の子が
「チガヤ」っていう名前なんです(笑)。 |
梅田 |
ほお、いい名前ですね。 |
吉本 |
すごい美少女なんですよ。
‥‥そうか、やっぱりそうなんだ。
きれいなんですね、チガヤって。 |
梅田 |
白い穂が、きれいですよね。 |
吉本 |
うん。 |
梅田 |
これがたくさん茂っていると、
銀色の波が、わーっと風になびいて、
それはそれは、きれいなんですよ。 |
吉本 |
ああ‥‥きれいでしょうねえ。 |
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梅田 |
これが出てくる前の若い穂は、甘いんです。
子どものころに、そいつをよく食べました。
「ツバナ」とか「チバナ」ってよんでましたけど‥‥。 |
吉本 |
食べられるんですか。 |
梅田 |
ええ、サトウキビに近い仲間で、
かじって甘みを味わうだけですが。
『万葉集』に紀女郎(きのつらめ)が
大伴家持(おおとののやかもち)に
贈った歌があって、その歌は
「貴方のためにツバナを採ってきたので
召し上がって肥えてください」
という意味になっているんです。 |
吉本 |
へええ~。
いや、このみちくさの名前は
きっと忘れないです、覚えました。 |
梅田 |
そうですか、よかったです(笑)。
私たちはしょっちゅう自然観察会をやってますが、
名前だけ教えても、参加者の耳の
右から左へぜんぶ抜けちゃうんですよ(笑)。
だからその、名前だけじゃなくて‥‥ |
吉本 |
いろいろ、名前のいわれとか。 |
梅田 |
そうそう、人との関わりとか。
なるべく印象に残るように話さないと、
覚えてもらえないんです。 |
吉本 |
興味を持たれるような
工夫が必要ですからたいへんですよね。 |
梅田 |
説明のための小道具を用意したり、
こういう、テンガロンハットをかぶったりして。 |
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吉本 |
すごくお似合いです(笑)。 |
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梅田 |
まあ、いろいろと工夫をしています。 |
吉本 |
きょうはお話がたのしくて、
たくさん頭の中に入りました。 |
梅田 |
そうですか、それはうれしいお言葉です。
お役に立てましたでしょうか。 |
吉本 |
もちろんです、
ありがとうございました。 |
梅田 |
いえいえ、こちらこそ。
‥‥では、駐車場まで戻りましょう、
雨が強くなるといけませんので。 |
吉本 |
はい。
‥‥あ、梅田さん、傘は? |
梅田 |
いや、このくらいでしたら私は大丈夫です。 |
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今回のみちくさは、
この日2度目に降り始めた雨ととともに終了いたしました。
たくさんのお話をしてくださった梅田さん、
ありがとうございました。
この次は、秋のみちくさをお届けできればと思っています。
また、お会いしましょう。
「のがわでみちくさ」編は、これにて終了です。
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