ほぼにちわ、
「みちくさの名前。」を担当しています山下です。
今回は番外編でお送りいたします。
なぜ、このタイミングで番外編なのか。
まずはこちらのページ、
「名前その3 ミツバツチグリ」を
ご覧いただけますでしょうか。
このページを更新したその日に読者のかたから、
「きょうのみちくさ、ミツバツチグリではなく
ヘビイチゴの仲間なのでは?」
というメールが届いたのです。
いただいたメールは、このような文面でした。
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こんにちは!
ぼくは代々木公園の近くに住んでいて
仕事場に通うのに代々木公園を毎日のように通り、
目についた植物をホームページにアップしたりして
公園内の植物はよく見ているつもりです。
「みちくさの名前。」で
ミツバツチグリがちょっと気になったので
メールさせていただきました。
今回ミツバツチグリとして載っている写真は
ぼくにはヘビイチゴか
ヤブヘビイチゴのように見えます。
ミツバツチグリでしたら
土中に「クリ」があるかと思うので
掘って根を見て確認されてはいかがでしょう?
(S.I) |
え?! とあわてて、
すぐに柳生真吾さんに連絡をして確認しましたところ、
「ご指摘どおりかもしれません、
そのふたつは似てるんですよ」
というお返事が。
そこで急きょ、あのような注意書きのようなものを
冒頭に加えさせていただいたのでありました。
「調査をして、その結果を後日必ず報告します」
という約束を添えて。
というわけで、
そのお約束通り(ちょっと時間が経ちましたが)、
先日、代々木公園で調査を行ってまいりました!
果たして、根っこに「クリ」はあるのか?!
「クリ」があったら、ミツバツチグリ。
「クリ」がなければ、ヘビイチゴの仲間。
さあ、どうなんでしょうねえ。
ちょっとした探偵気分で、
乗組員調査隊(2名)は代々木公園へやってまいりました。
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雨模様だったあの日とちがって、
この日はぽかぽかとした小春日和。
「あ〜、きもちいい」などとつい言ってしまいますが、
いけません。ピクニックではないのです。
これは調査なのです。
まずはとにかく、
問題となった植物を探さなくては。
ミツバツチグリのお話を聞いたその場所は、
もちろん覚えています。
ええ、忘れるものですか。
それは、まちがいなく、あっちのほうです。
行きましょう!
(行く)
さあ、このあたりですよ!
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‥‥なんとういことでしょう。
その場所は、こんな壁でぐるりを囲まれていました。
工事。
どうしよう‥‥。
ここで見つけた植物なのに、これじゃあ調査は‥‥。
いやいや、広い公園です。
あの植物は他の場所にもきっといるはず。
探しましょう、歩き回って探すんです。
‥‥あれ?
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な、なんだか様子が‥‥。
みちくさは? あのみちくさたちはどこに?
この前きたときは、こうだったのに。
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それが、こうですよ。
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床屋さんにいったばかりの野球部員の頭のように、
つるんと「みちくさ」が刈られています。
どうやら、大規模な草刈りがあった様子。
こんなふうに「クズ」がわんさかはえていた場所も、
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こんなにすっきり。
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これだけクズだらけだった池も、
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いまはみごとに、つるりんと。
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つまり、これはピンチです。
代々木公園が坊主頭になってしまいました。
でも、なんとしてでも、あのみちくさを探さないと。
すこしでも緑がありそうな場所を見つけては、
はいつくばるように探すこと数十分。
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それは、とうとつに見つかりました。
発見したのは、
カメラ担当で同行した乗組員・田口です。
「あ! これ! これとちゃいますか?!」
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ちゃいません! これです、きっと!
あのときの写真がこれで、
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きょう見つけたのを拡大したのが、これ。
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緑の色合いがじゃっかんちがいますが、
これは同一植物と判断していいですよね?
「ええんとちゃいますか!?」
田口も賛同してくれたので、
いよいよさっそく、根っこを調べることに。
出るのか? 「クリ」は!
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掘ります。
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根っこを傷つけないように。
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土をはらい落としましょう。
さあ、どうだ!?
果たして「クリ」はあるのか!?
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ん〜〜〜〜、ないっ!
これは、ないっ!!
クリっぽいものは、ないですよね?!
「ええ、ふつうの根っことちゃいますか!」
と写真を撮りつつ、乗組員・田口。
そういうわけでみなさま、
こちらで紹介したみちくさはどうやら、
ミツバツチグリではないようでした。
(S.I)さんのおっしゃるように、
ヘビイチゴの仲間なのかと思われます。
その後、さらにいろいろ調べてみましたら、
「キジムシロ」という植物も
これによく似ていることがわかりました。
(Googleの画像検索で3つの植物を見てみてください。
ほんとにそっくりなんですよ)
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と、いうような調査結果を
柳生真吾さんに報告しましたら、
こんなにていねいなメールをいただきました。
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やっぱり1年を通じて
観察している人がいちばんなのです。
代々木公園については、
メールをくださった(S.I)さんにかないませんね。
冬に向かう葉っぱは、本来の典型的な形をしていません。
寒さに耐えるためにもっとも適した形にかわります。
冬のその姿を、僕たちはいちばん目にしていない。
1年を通して見ている人だけがわかる、
地味な冬の姿かもしれませんね。
それを見分けた(S.I)さん、さすがです。
ミツバツチグリもヘビイチゴも同じバラ科。
もともと似ている上に、冬の姿を見て、
間違えたのでした。
自宅のある八ヶ岳ではヘビイチゴもミツバツチグリも
一発でわかるんだけどなぁ‥‥。
とにかく、僕の間違いにしてください(当然か!)。
柳生真吾 |
柳生さん、ありがとうございました。
すてきなお返事をいただけて、ほんとにうれしいです。
読者のかたからメールをいただいて、
調査に出かけたことも、とてもたのしかったです。
なによりもそのおかげで、
「ミツバツチグリとヘビイチゴは似ている」
ということが強く印象に残りました。
そんなわけでみなさま、
「みちくさの名前。」はこれからも、
「たぶん」をつけながらでも
植物の名前が言えるようになるコンテンツとして
続けてまいりますね。
次回シリーズは、3月の上旬にはじめる予定です。
すこし春めいてきましたが、
「冬の都会のみちくさ」というようなテーマで。
どうかたのしみにお待ちください。
番外編の最後に「おまけ」を少々。
調査を終えてから、
代々木公園でなんと「サクラ」を見つけたのです。
まだ2月なのに、ほらこんな!
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サクラでしょ?
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写真を撮っていた知らないおじさんに訊いてみました。
「これ、サクラですよね?」
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「たぶんね、彼岸桜」
と、おじさんは言いました。
別の知らないおじさんにも訊いてみました。
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「おそらく、河津桜。
静岡の有名なサクラだよ、今ころ咲くんだ」
「たぶん」と「おそらく」をつけて、
ふたつの名前を教えてもらいました。
どちらが正しいのかはよくわかりません。
でも、花の名前を訊ねたことで、
ふたりの知らないおじさんと
思いがけずおしゃべりすることができました。
カメラのことや、鳥のこと、そしてお仕事のことも。
とてもたのしい内容だったのですけれど、
それはまた、別のお話。
(番外編、おわります) |