 2025-03-30 |
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・桜が咲いたら1年生になるんだ、と思っている人たちに、東京の桜は咲きはじめたよ。ほんとに1年生になっちゃうんだね。ずっと待っていたのに、そのときが来ちゃったね。
寒がりのぼくは、毎年、毎年、冬が終わることを心から望んでいる。待っていれば春がくるんだと知っているし、待っている。桜の咲く場所を歩くときには、「ここがやがては花の色に染まる」と思いながら通る。そういうことを繰り返しているのに、いざいよいよ開花がはじまると、もうすでに、ちょっとさみしくなっているのだ。うれしいとか、いいなとか、待ってたもんなぁとか、もちろん感じているのに、桜の散ったあとのことを想像してもうすでにさみしい。ややこしいなぁ、人間は。先回りしてさみしがっているのはあほだけれど、そのさみしい気持ちもあるから桜はおもしろいんだよね。
いろんなところの名物の桜も見たなぁ。京都は、ずいぶんたのしませてもらった。じぶんの家のたった一本の桜もありがたかった。桜守の佐野藤右衛門さんの庭が近所だったので、春には何度もそのあたりを散歩していた。他にも、あちこちのお寺に行ったなぁ。角館の「武家屋敷通り」の桜も見たっけな。いちばん圧倒されたのは、やっぱり、奈良の吉野の山桜だった。ぼくの強引な観光案内としては、「エジプトのピラミッドと吉野の桜」は欠かせない。
東京の桜は千鳥ヶ淵と青山霊園がいちばん馴染みかな。上野の桜も偶然のように何度か見ることがあった。谷中の墓地は、吉本隆明さん一家のお花見の場所だった。それぞれの地の「知ってる桜」がどれくらい咲いているか、今年も気にしながら過ごしている。わざわざ座りこまなくても、ひとりで歩くだけでもいい、花見のようなことをしなくなったら、人としていけないな。日曜日は、散歩嫌いの犬は誘わずに、花見をしようかな。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。まだ数回しか桜を見たことがないんだね、幼い子どもって。