2025-01-18 |
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・「生活のたのしみ展」が終わったものだから、「ほぼ日」のほとんど全員が「振替休日」でした。ぼくも、ぽっかーんと空いた日というのは慣れないので、どうしたものかと迷うかと思ったら、自然に本を読みはじめていました。あれこれの読みかけをすべて脇に置いて、若い作家の小説を手に取りました。『ゲーテはすべてを言った』(鈴木結生)です。帯に「芥川賞候補作!」とありましたが、受賞しています。タイトルがたまらないじゃないですか、ゲーテといったら偉人のなかの偉人です。いまたしかめるために検索したら「ドイツの詩人、劇作家、小説家、自然科学者、博学者(色彩論、形態学、生物学、地質学、汎神論)、政治家、法律家とありますが、とにかくWikipediaを読むだけでも時間がかかります。小説は、主人公が「ゲーテ研究者」です。もちろん、ゲーテ研究者を描くわけですから、膨大なゲーテ研究にかかわる記述が際限もなく出てきます。そう思うと、衒学的で感じわるいかなぁなんてね、ちょっと思ってしまいかけたのですが、そうじゃなかった。専門的な知識や引用やらが止めどなく続きますが、それが「ひけらかされている」感じじゃないのです。大図書館に紛れ込んだような知識や引用がずっと続きます。書くのに原典や表記(スペルなども)を確認するだけでも、大変な労力がかかるんじゃないかと心配したりしますが、作者がそれを苦にしているように思えない。文章を書くことをたのしんでいるように感じられるから、慣れないことばや概念が出てきても気にならないんです。もちろん、めんどくさいことを語ったりしてるんですよ。でも、登場人物たちの描かれ方は、やわらかいんです。「なにが描かれていくのか?」、理解を後回しにもしながら夢中になって読んでいるこの感じとは、高校生のときに布団に入ってからも読み続けていた夢野久作『ドグラ・マグラ』に似ているかもしれません。血湧き肉躍るなんてことはないですよ。だけど、なんとなくユーモラスで、ミステリーじみていて、途中でやめずに7合目くらいまで読み進めています。ぼく自身は、書くことの好きじゃない人間なのですが、書くことをたのしんでいる人を見るのは、とても好きです。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。水木しげるさんが戦地に持っていったのもゲーテでしたよね。