◆◆第1回 ホット・グラス・ファイター
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灼熱地獄での闘い。 |
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ホット・グラス・ ファイターのクマだ。
ファイター、闘う人ね。 長年、鉄でゲージツしてきたけど 、今度は『光を宿す物質としてのガラス』でゲージツしてるんだ。ガラスは600度くらいから溶け始めて、1200度くらいでトロトロになるんだ。ガラスというよりも、温度との闘いなんだな。
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頭の中でよ、大きなガラスのカタマリを自由に造形したいって、考えたんだ。これは「フォールディング(折りたたむ)」っていう技法だ。タタミ1畳ぐらいの色ガラスの板をキルン(KILN)ていう釜で、6時間かけて600度まで熱する。それをオレが自らの手でアクションすることによって、ゲージツする。800度でアクションすると、もっとも素直に反応するんだ。
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この時してた手袋は、耐火素材を使ってるけど、こげてるだろ、熱いものは熱いんだ。あと、靴な。この時は普通の靴を履いてたけど、今度はちゃんと考えないとな。
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釜を開けた瞬間から、800度まで高めた温度は急激に温度は下がり出しちまう。600度まで下がると、もう硬くて細工は出来ないんだ。細工は1回しかできないんだよ。もう一回あっためると、ベチャってなっちゃうからな。
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だから、前の晩から頭の中でシュミレートしておくのよ。釜を開けてから考えてたんじゃ、間に合わないからな。1分足らずしか細工は出来ないんだ。その時間ていうのは、あくまで物質の時間であって、オレの時間ではない。物質の都合に、俺の時間を合わせるんだ。なかなかスリリングでエキサイティングだぞ。
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『フォールディング』をやってるのは、世界でオレだけだぞ。なんで世界初かっていうと、熱いからだれもやらないんだな。本当は『フォールディング(折りたたむ)』ではなく『ホールディング(抱きしめる)』と行きたいんだが、それはまだ無理だな。
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理想としては、オレが耐火服を着て、キルンの中に飛び込んで800度のなかでアクションしたいんだ。格闘技に近いね。釜は四角いリングでよ。だから、ホット・グラス・ファイターなんだな。
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オレのゲージツは山梨県・武川村にあるファクトリーで生まれる。東京のファクトリーは狭すぎるし、ノイズがちなオレのゲージツは午後7時にはフィニッシュしなくてはならない。都会はゲージツには不便なんだ。でもここなら、朝から晩までゲージツ三昧だぞ。
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