| 糸井 |
ぼくはゲラのときに一度この本を読んで、
書籍の形でまた読み返してるんですけど、
あらためて思ったのは、
「出てくる人と著者が、仕事が好きだ」
ってことですね。
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| 赤坂 |
ああ、それはあるかもしれない。
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| 糸井 |
全部これ、仕事の話をしてるんですよね。
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| 赤坂 |
そうです、そうです。
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| 糸井 |
「この技術は俺はここで覚えた」とかね。
職人さんにろくろの回し方の話を
聞いてるのと同じなんですよ。
それは、赤坂さんの個性というか、
赤坂さんがそこに光を当ててるわけで。
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| 赤坂 |
ああ、そうですね、
でも、あんまり自覚してないですね。
自分では、わからないです。
読んだ人から、
「出てくる人が聞き手を
信頼してるのがわかる」って
言われることもあるんですけど、
それも、そうなのかなと思うぐらいで、
よくわかんないんですよ、自分では。
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| 糸井 |
だから、それも同じことで、
つまり、話す相手が
「ちゃんと仕事してるんだな」ってわかったら
ちゃんと丁寧に接するんですよ。
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| 赤坂 |
ああーー。
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| 糸井 |
好きだの嫌いだのを超えて、
ちゃんとしてる人には
ちゃんとしなきゃなっていうのは、
誰でも感じることですから。
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| 赤坂 |
そうですね。
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| 糸井 |
この本のなかにも、ときどき、
そういう場面が出てきますよね。
たとえばデッドボールをぶつけたり
ぶつけられたりっていう話があるけど、
仕事としてきちんとやってるときには
ただ怒ったりはしてないじゃないですか。
そのへんの、
「仕事に対するフェアプレイ精神」
みたいなものが気持ちいいんですよ。
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| 赤坂 |
そうですね。
村田が斎藤隆にぶつけられて、
ぶっ倒れてるときに、
当時キャッチャーだった谷繁を見上げて、
「シゲ、信じてるからな」って言う場面とか。
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| 糸井 |
あそこは強烈ですよねぇ。
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| 赤坂 |
はい。書いてて、好きな場面でした（笑）。
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| 糸井 |
村田選手って、
けっこうしゃべるんですよね。
ちょっと不器用なイメージがあるから、
寡黙な感じがしないでもないけど、
ちゃんとことばにできる人、というか。
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| 赤坂 |
ええ。ずっと口は動いてるっていう（笑）。
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| 糸井 |
そんなに言葉にできる人、
なかなかいないですよね。
語ってる思い出話も全部的確だし。
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| 赤坂 |
はい。
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| 糸井 |
達川さんなんかも
よく覚えてるなぁって思うし。
だから、キャッチャーってとにかく、
記憶の塊ですよね。
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| 赤坂 |
そうです、そうです。すごいです。
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| 糸井 |
谷繁もそう、村田もそう、
書かれてる人、みんなそうなんですよ。
キャッチャーというのは、
「ことばの人生」なのかもしれないですね。
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| 赤坂 |
かもしれないですね。
言われてはじめて気づきましたけど、
山中（潔）さんなんかも、
いろんなことをすごくよく
覚えてらっしゃる方なんですよ。
山中さんって、
名門のＰＬ学園からカープに入って、
達川さんとの正捕手争いに競り負けて、
そこからホークス、中日、日ハムと
あちこち渡り歩くんですけど、
そのとき「あそこでこう言われた」ってのを、
すごくはっきりと覚えてらっしゃる。
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| 糸井 |
はっきり語ってますよね、山中さんも。
出てくるキャッチャーがみんなよくしゃべる。
しかも、記憶がぜんぜんブレてない。
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| 赤坂 |
そう。全部、重なるんですよ。
あれは、すごいなと思いますね。
というのも、ある人に聞いたエピソードを、
別の話に別の角度から聞いてみると、
ぜんぜん違うっていうこと、
あるじゃないですか。
ところが、この本に出てくる人の話は、
何人かに聞いても事実がピタッと重なる。
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| 糸井 |
そういうことを全部、
自分ひとりで取材して確認できて、
さらに自分ひとりで
記事にできるっていうのは
赤坂さん、ラッキーだよねえ。
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| 赤坂 |
すごくラッキーだと思います（笑）。
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| 糸井 |
「キャッチャーだけで本にしよう」って
言い出したのは、赤坂さんなんですか？
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| 赤坂 |
いいえ、いまの『週刊現代』の編集長です。
「赤坂さんと親しくしてる野球選手って、
キャッチャーが多いよね。
村田でしょ、達川でしょ、
デーブでしょ‥‥」って（笑）。
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| 糸井 |
ふーん。人からそう見えてたんだね（笑）。
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| 赤坂 |
いわれてみれば、っていう感じで。
でも、谷繁（元信）とじっくり話したのは
この取材がはじめてでした。
里崎（智也）とは、まったくの初対面なんです。
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| 糸井 |
じゃあ、また、知り合いが増えたんだ、
キャッチャーに。
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| 赤坂 |
（笑）
（つづきます） |
