おしい!食べられるんです!
アカハツ 食
写真と文章/新井文彦

北海道で見られる、いちばんポピュラーな木は、
おそらく、トドマツではないかと思います。
ぼくは阿寒湖周辺の森をいくつかのエリアに分け、
1日か2日ごとに順次巡って写真を撮っているのですが、
トドマツが生えていない森はありません。
と、いうか、どの森も、樹木の主役はトドマツです。

かつて、北海道大学の五十嵐恒雄名誉教授が、
3年にわたって阿寒国立公園のきのこ調査を行い、
森林ごとに発生状況を集計したところ、
発生種類数が最も多かったのが、トドマツの森でした。
(次いで、ミズナラの森)
きのこ好きの人、北海道へ来たなら、
トドマツの森は、要チェックですよ!

トドマツも、エゾマツも区別がつかない!
という人に、トドマツ特徴を簡単にお教えします。
幹が白っぽくて平滑で、緑色の地衣類の付着が多い。
(エゾマツ系は、赤黒っぽい鱗片状ではがれやすい)
葉の先端が2つに割れているので、
てのひらで触ってもあまりちくちくしない。
(エゾマツ系は、尖っているので触ると痛い)
松ぼっくりが、枝に上向きにつく。
(エゾマツ系は、垂れ下がるように下向き)

この写真ではちょっとわかりづらいのですが、
右側の太い木がアカエゾマツで、
左側にたくさん見られる木がトドマツ。
まあ、百聞は一見にしかず、なので、
詳しく知りたい人は、ぜひ、図鑑を見るなり、
インターネットで検索するなりしてみてください。

いつものごとく前置きが長くなりましたが(笑)、
夏から秋にかけてのトドマツの森で、
簡単に見つかり、かつ、簡単に同定できるきのこ。
それが、アカハツなのであります。

傘の直径は5cmから10cmくらい。
真ん中がぺこっと凹んでいます。
毒々しいほど鮮やかなオレンジ色をしてますが、
このきのこ、食べられるんです。
しかも、けっこうおいしいです。

何回も引用させていただいております、
山と溪谷社『日本のきのこ』増補改訂新版によれば、
「バターで炒めながら細かくつぶし、
 オムレツにすると格別な味わい」
とのことです、はい。

同じく食べられるアカモミタケと似ているのですが、
アカハツの特徴は、触ると、青くなること!
肉を傷つけると、オレンジ色の乳液を分泌しますが、
それも、徐々に青っぽくなっていきます。
アカモミタケの場合、
触っても青くならず、乳液もずっとオレンジ色のまま、
かつ、柄に、クレーター状の窪みが多数あります。

ハツタケは言わずと知れた、食用きのこの代表格ですが、
アカハツは、その、赤色バージョン、と言えます。
お味は、本家ハツタケに軍配が上がりますが……。

そうそう、トドマツと言えば、
葉っぱをちぎって匂いをかぐと、
森のエッセンスを凝縮したような、
たまらなくいい香りがするんです。
糸井重里さんも感動してましたよ〜。
「阿寒きのこの森」にも、トドマツ登場)

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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