
|
糸井 |
さて、話をびゅーんと戻しまして、
今シーズン、二軍監督を務めました。 |
 |
川相 |
はい。
|
糸井 |
思うんですが、二軍の監督っていうのは、
一軍に比べると、なにが目的なのかが
わかりづらいポジションだと思うんです。
たとえば一軍だと、「とにかく優勝!」
みたいなことがありますけど、
二軍は、また違いますよね。
|
川相 |
そうですね。
|
糸井 |
象徴的にいうと、
「二軍」ということばと、
「ファーム」っていうことばは
意味が大きく違っていて、
「二軍」だったら、
当然、勝たなきゃいけないし、
一軍に上げる即戦力な選手を
つくらなきゃいけない。
一方、「ファーム」だったら、畑ですから。
|
川相 |
「育てる」ということですね。
|
 |
糸井 |
そう、若い選手を、数年先を見据えて
地道に育てるということをやらなきゃいけない。
|
川相 |
ぼくがやろうとしてたのも、そっちでした。
|
糸井 |
ああ、やっぱり。
|
川相 |
今シーズンのいちばんの目的は
二軍選手全体の底上げでした。
というのも、ドラゴンズはいま、
二軍でじっくりと若い選手を
育成しておかないと、
正直、将来困るだろうと感じたので。
|
糸井 |
なるほど、なるほど。
|
赤坂 |
荒木、井端も30代ですからね。
|
 |
糸井 |
じゃあ、未来に向けて。
|
川相 |
はい。
いま変えないとダメだと思ったんです。
残念ながら、続けられませんでしたが‥‥。
|
糸井 |
うーん、それはやっぱり、
川相さんの、将来に向けての
「二軍の底上げ」という目標と、
一軍ののぞむ「即戦力を」という意向が
ずれてしまったということでしょうか?
|
赤坂 |
まあ、外から見た印象で言うと、
今年の中日はやっぱり打線が
非常に苦しかったと。
チーム打率は2割5分台でリーグ5位。
チーム得点数にいたっては
巨人、阪神と100点以上差がありますから。
落合さんも、打線を組むのに
毎日、四苦八苦してました。
そこで、得点能力の高い選手を、
二軍からひとりでも上げたい、というときに
そのイメージに沿ってないと
思ったんじゃないですかねぇ。
|
 |
糸井 |
その違いだねぇ、やっぱり。
|
川相 |
あと、ぼくの意図としては、
ファームの雰囲気を変えたかった
というのがあります。
というのも、ドラゴンズって、
ファームから上がっていく選手たちが
いつも同じような人たちで、選手によっては、
自分はもう一軍に上がれないんじゃないか、
っていうふうに感じているように思えたんです。
ですから、まずは、
選手の目の色を変えさせなきゃダメだと。
|
糸井 |
なるほど。
|
川相 |
ですから、ふだん使われないような選手を
思い切って試合で起用したりして、
どんな選手にもチャンスがある、
というところを伝えていったわけです。
|
糸井 |
効果はありましたか。
|
 |
川相 |
半年やってきて、
効果があったと自分では思ってます。
漫然とやっていた選手が
きちんと自分のポイントを
アピールするようになって、
目の色が変わってきた。
まぁ、試合には勝てませんでしたが、
内容としては、とくに野手のほうは
充実したな、と思いました。
|
赤坂 |
二軍のチーム打率は2位くらい?
|
川相 |
いや、チーム打率は1位です。
ウエスタンで1位。
|
赤坂 |
盗塁数が2位。
|
川相 |
そう、ソフトバンクに続いて2位。
で、犠打数が1位!
ダントツです(笑)。
|
 |
糸井 |
だって、川相監督だからね(笑)。
|
 |
赤坂 |
(笑)
|
川相 |
まぁ、そういう感じで、
チームの成績は4位でしたけど、
手応えはすごく感じられました。
|
糸井 |
そういう話を聞くと、
自分がおつき合いがあったせいかも
わからないですけど、
やっぱりぼくは、川相さんって
「藤田(元司)さんちの子」
なんだなと思うんです。
|
 |
川相 |
ああ、そうですかね(笑)。
|
糸井 |
藤田監督の時代にいた人たちが持ってる
独特の野球観があるような気がするんですよ。
だって、藤田さんは、
勝つことが義務づけられていると
いわれていた巨人のなかで、
「勝つことよりも大事なことがある」
って言った人ですからね。
|
川相 |
そうですね。
しかも、一軍でさえ、そうなんですから、
ファームはもっと勝ち負け以外のことを
大事にしなければいけない。
|
糸井 |
そうですよね。
|
川相 |
一軍レベルの選手でも
監督からそういうことを言われるわけですから
二軍の選手だったら
もっとそうあるべきじゃないかなと思います。
実際、ぼくが入団した当時は
そういうことをよく言われましたから。
須藤さんや藤田さんに。
|
 |
糸井 |
あーー、そうですか。
|
川相 |
そういうことばっかりでした(笑)。
技術の練習もしましたけど、それ以上に、
「勝ち負け以外のこと」
「野球以外のこと」について、
何度も言われました。
野球以外のことのほうが
多かったかもしれません(笑)。
|
糸井 |
(笑)
|
川相 |
いやぁ、ほんとに、そうです(笑)。
(つづきます) |
 |