青木 |
安居くんは、実際にカミロボどうしで
試合をやっていない間にも、
頭で思い浮かべるだけで、
話を、どんどん、進めることができる──。
ほんとうの試合は、カミロボの世界の
上っ面のひとつにすぎない。
これはスゴイと思った。
眠る前に陶酔する妄想の世界での
心地よい感じって、あるじゃないですか。
あの感覚を、安居くんは、どこでも
味わえるようなものなのかなぁ、と感じたから。
何も持っていないときにも、
これだけの数のキャラクターで、
遊ぶことができるわけで、それは
多重人格者のようなおもしろさがあるんですよね。
安居くんの作るキャラクターには、
自分の投影が多いから、
悪の自分、おひとよしの自分、物好きの自分、
みんないて、それらが戦っていくんだし。
ひとり遊びもここまで来ると、
ひとり遊びの領域をこえたおもしろさがあるな、
という感じはします。
ここまでできあがっているものは、
広めたほうがおもしろいや、って思ったんです。
ある程度のビジネスになるんだったら、
このおもしろい遊びに関わる時間を、
増やせるというか……。
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自分は、何か企画を立てて
作っている人間ですけど、
今までやってきたことを反省する機会も、
いくつかあったんです。
広告や、アートディレクションって、
よく考えてみたら商品ありきのものでしょう。
商品がないとできないものなんです。
結局は、何もないところから、新しいものを
作りだしているわけではありませんよね──。
すごくイジワルな見方をすれば、
広告って、ただ末端を飾りたてるだけの
作業にも、見えるんです。
商品自体を変えているわけじゃないんだから。
ただ、安居くんのようなものの作りかたって、
ほんとうに、ゼロから、
実際のモノを作っている感じがある。
自分の妄想や欲望のためだけに
作っているカミロボ……これはかなり
クリエイティブな感じがあったんです。
ここには、けっこう素直に
学ぶところがありそうな気がしたと言うか。
安居くんの世界観も、経験値も加わっているし、
ものすごい工夫も、綿密な展開もできているし、
ぼくはここからは、
学ぶことがありそうな気がするんですよ。
クリエイティブに関わるのは、
本来、やっぱりたのしいことですよね。
ここまで、人に隠してまで
たのしんでいる姿を見ることは、
参考になる気がしたんです。
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さっき、立体に興味を持ちはじめた、
と言いましたよね。
このカミロボの前にも、実際にぼくは、
イラストレーターの久保くんと組んで、
「コペット」というものを作っていたんです。
ただ、広告をやっている人間ですし、
今までずっと受注生産で
やってきているものだから、
自分から生産するとなったら、
何をテーマにしたらいいか、よくわからなかった。
だから
「動物だったら、
テーマがなくてもたくさん作れるや」
ってことをしてみたようなもんです。
実際にアイワの広告で具現化できて、
キャラクターライセンスに持っていってしまって、
というかたちで仕事をすることはできました。
ただ、そのときには、
「動物をいっぱい作ればいい」
としか思えなかったんです。
動物がたくさんいることで
生まれる世界観を考えなきゃいけないのに、
この動物たちをどう物語にしていけばいいかが、
ぜんぜん、わからなかった。
結局、物語化はできなかったんですね。
ところが、安居くんのこのカミロボは、
自分の空想の世界を具現化するためだけに
できたものだから、
「物語だらけ」
のところからできているわけです。 |
安居 |
(笑)ぼくの場合は、ただの、
自分の妄想を推し進める道具ですから。 |
青木 |
そこで「コペット」と「カミロボ」を
ライセンス契約できるキャラクターとして、
グッズを作ったり映像を作ったりしてみました。
そうすると、圧倒的に
「世界観のあるもの」のほうが、
誰が見てもリアクションが大きいんです。
キャラクターひとつひとつとしては、
コペットも、カミロボも、大差はない。
そこには、
好き嫌いの差ぐらいしかないんですけど、
数が集まったときには、
ストーリーのあるカミロボのほうが、
圧倒的に引きが強いということが、
実際に人に見てもらうと、よくわかりました。
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まぁ、それだからといって、
カミロボのキャラクターライセンスを
持ってしまうところまでいっていいのか、
というところにはかなり疑問があるんだけど。
でも、「こういう人がいるよ」ということを
広めるのはおもしろいなと思うんです。
漫画家やアーティストは、
安居くんに近いことを、
小さい頃からやり続けてきた人なのかもしれない。
空想の世界を、自分の手を動かして作り続けた人。
だけど、安居くんがおもしろいのは、
それをほんとうに自分の秘めごととして
やってる感じがあるからなんです。
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