「ほぼ日」では、
「ライフ・イズ・マジック」でおなじみのパルト小石さん。
小石さんのご本業は、
(言うまでもないことですが)マジシャンです。
ボナ植木さんとコンビでご活躍を続ける
ナポレオンズのHPは、こちらからどうぞ。
そんなパルト小石さんが、
プロのマジシャンを続けながら、ことしの6月、
「小説家」としてのデビューを果たされました!
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小石至誠
徳間書店/1365円(税込)
著者名は“小石至誠(こいし しせい)”。
これは、小石さんの本名です。
「ライフ・イズ・マジック」の、
こちらやこちらの回でも、
ご自身の小説をたのしくご紹介されていますが、
ここでもあらためて
『神様の愛したマジシャン』の内容はもちろん
そもそもなぜ小説を書かれることになったのか、
そのあたりからお話をうかがってみました。
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「そもそもですか?
う〜ん、なんででしょうねえ‥‥
ほぼ日さんでエッセイを書くことになったのも、
8年前に糸井さんから『何か書きませんか』って
おっしゃっていただいて『あ、はい』と(笑)。
エッセイなんて書いたことなかったんですよ。
でも、やりはじめたら面白くて、
いろいろとアイデアも浮かんだりして、
メリットとかデメリットではなくて、
有意義なことができているなあと思ってたんです。
で、そしたら今度は徳間書店のかたから
『小説を書いてみませんか』って言われて、
『あ、はい』と(笑)。
わりと運命論者なので、声をかけてもらえたことで
何かあるのかな、と思うほうなんです。
たぶん有意義なことになるだろうと。
とはいうものの、小説ですからね、
ほんとに書けるかどうか心配ですよ。
そしたら知り合いの作家さんがこんなこと言うんです。
『いやあ、小説なんかね、編集の人と1年くらい
飲んだり食ったりしてればできちゃうよ』って。
これが頭の8割くらいを占めちゃいましてね(笑)。
ところが世の中そう甘くはなくて、
編集者のひとと何度か食事には行きましたけど、
気がついたら『締め切りが』って言われてるんです。
汗がタラーですよ。
まず、おもむろに電卓を取り出しまして、
ぜんぶのページ数を入れてみました。
それから「÷」を押し、締め切りまでの日数を入れて
「=」を押したら‥‥「5」って出た。
1日に5ページ?
これはいったいどういうことかな?
と思いながら仕事で地方に行って帰ってくると、
今度はこれが「10」になってる(笑)。
これはまずい! と。
さすがにがんばりまして、10を7にして、
7を5にして‥‥。電卓ばっかりいじってました。
だから、もうほんとに、
これは電卓が書かせてくれた小説なんです(笑)。
内容は、単純にいうと4年間のお話です。
大学1年生から4年間。
大学に入って、マジックのサークルに入って、
2年、3年とがんばっていろんなマジックをやったり、
様々な経験を経て、いよいよ卒業の時期になって、
「こんなことやってる場合じゃないよな」
「でも普通になっちゃったら終わりだよ」
「とはいえプロになるのは厳しいぞ」
「俺、銀行に行くわ」
「でもなあ‥‥」
「おまえ、食えなくなるぞ」
さあどうする? という‥‥。
そのあたりの話を重たくならないように、
青春小説として軽やかに書いたつもりです。
ぼくも大学の研究会にいたんで実体験はあるんですが
これは自伝ではありません。
フィクションですよ、フィクション。
実在するマジシャンを連想させる登場人物が
出てくるかもしれませんが、
実在するかたとは一切関係ありません、
ということでたのしんでいただければと思います(笑)。
あとはそうですね、
マジックのタネ明かしも、ちょっとしてるんです。
この本の場合、
それはもう言っちゃったほうがいいと思ったので。
マジックの裏側はある程度みせてしまって、
いたずらに謎を印象に残したりしないで、
人々の心の動きを読み進んでもらいたいと。
“マジックの小説”と聞くと、
ミステリとか推理小説? と思うでしょ?
でもほら、ぼくはマジックが得意ではないので(笑)。
一冊の青春小説として、ご愛読いただけると幸いです」
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