第4回 開発が遅れた理由とプレイの世界観について
大変ご無沙汰してしまいました。
こちらの連載がずっと休止状態にありました。
今回、ようやく発売日が決定し(10月18日)、
連載再開となります。
今年にはいってからの8ヶ月間、
開発チームはずっと「最終デバッグ」をしておりました。
デバッグというのは、
バグ(=プログラムの誤動作)を取り除く作業です。
毎日が「ラストスパート」のようなものです(笑)。
こんなに長い期間をデバッグに費やすというのは
あまり普通のことではありません。
なぜにここまでかかってしまったのか、という理由に、
このソフトの特徴が関係してきます。
今回はそのあたりからお話しすることにします。
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地震カミナリ火事オヤジ、
が飼育者のコマンド |
このゲームは、島で生活する北京原人
(そして次世代の人間)。
この「島で生活する」というのがこのゲームのミソで、
要するにいつでも画面内のどこかにいるわけです。
以前の水槽と同様、
この島が閉鎖の生態系、となっています。
雨を降らさなければ木が枯れる、
木が枯れれば酸素が減る、といったように‥‥。
育成者はいつでもそこに介入、
ま、つまり「ちょっかい」を出せる。
くすぐったり、つまみあげたり、はなしかけたり、と。
ちなみに、操作系も、
ヒーター →「地震(=地熱)」
着火 →「カミナリ」
水分 →「雨」
酸素 →「風」
と、天変地異が割り当てられています。
こうやって操作の自由度を高くする、
つまりいつでもどこでも
いろいろなことが出来るようにすると、
どんどんと組み合わせの数が膨大になってくる。
シミュレーションの宿命ですが、
まさに、これがバグ発生の確率を
指数的に増やしてしまったのです。
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カメラ目線で「個人名」を
テレビの中から呼ぶゲーム |
さて、「シーマン」いう人面魚は
いつもカメラ目線で語りかけてるという
大きな特徴があったことに
気付かれた方はいらっしゃいますか?
映画には、役者はカメラをみてはいけないという
不文律があります。
カメラを見るということは、
観客(=カメラ)がそこにいることを
意識させてしまうからです。
それを逆手にとって、御茶の間のテレビで、
アナウンサーが、
「ちょっと斉藤さん!! そこで寝転がってちゃだめだよ!!」
なんて語りかけてくるギャグがあります。
北京原人の生活をのぞきこむという今回の設定でも、
登場キャラクターはユーザーの存在を意識していて、
常にユーザー(カメラ)にむかって話しかける
キャラクターにしたかったのです。
島を360度取り囲む複数のカメラがあるのですが、
原人たちはカメラ目線で、
「こっちへ来い」と指示したり、
吠えたり、怒って石を投げてくる。
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余談ですが、今回のシーマンは、「鳥」です。
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朝と晩、島の山頂に舞い降りては、
飼育者の育児方法について、
姑のようにあれこれと注文をつけるのですが、
このシーマンは「おい、斉藤!!」とか、
「山田さ、」なんて名前で呼びかけます。
これも「テレビの中から呼びかけられたい」
ということを実現したいがための仕様です。
名前を呼ぶというのは実は簡単な仕掛けでして、
日本人の姓を多いものから1000ほど、
すべて録音しただけのことです。
とはいっても「斉藤」ひとつで
11のパターンがありますので、
録音も相当な作業(!)でしたけれどね。
さて整理すると、つまるところこのゲームの世界は、
以下のような図であらわされると思います。
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▲クリックすると拡大します |
こんなことを小さな開発スタジオが
ソフトで実現しようという試みが、
8ヶ月というデバッグ作業となってしまったわけですが、
では、「そこでどんな楽しいことが
盛り込まれているんだよ!?」なんてことについては、
あと6回の本連載でご紹介してゆくことにします。
あ、そうそう、この「メイキング・オブ・シーマン2」の
完結を持ちまして、「ほぼ日」での
「もってけドロボー 斉藤由多加の頭の中」
連載シリーズはめでたく終了となります。
パチパチパチ。
10年ちかくにわたり御世話になった
「ほぼ日」さんと読者の皆さんへの感謝をこめて
あと6回がんばろうと、思っております。
(つづく) |