UEFAチャンピオンズ・リーグとカンピオナート、
勝利と敗退、
それをめぐる論争と、いさかい。
そんな話題でインテルは
イタリアのスポーツ紙の一面を占拠しつづけていますが、
このところ、その喧噪は、
スポーツ紙にとどまらない事態になっています。
バロテッリ選手にまつわる騒動が、
あらゆる次元の論争をあおり、
イタリア政府の介入までが
要求されるに至っているのです。
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マリオ・バロテッリへの“合唱”。 |
マリオ・バロテッリは、1990年、
シチリアのパレルモで、
ガーナの出身の両親の間に生まれ、
すぐに北イタリアにあるブレシャの
バロテッリ家へ養子に出されました。
幼少のころから、
ブレシャの小さなチームである
ルメッザーネでプレイし、
後に、インテルが彼を購入。
17歳でセリエAに出場、
正真正銘の才能ある人物として
すぐに話題になります。
その年のコッパ・イタリアで、バロテッリが、
準々決勝戦の対戦相手だったユヴェントスに
2ゴールを入れて敗退させたことを、
ユヴェントスのティフォーゾたちは、
いまだに根に持っています。
バロテッリがピッチに下り立つたびに、
肌の色のことで彼を傷つけ続けるのです。
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そしてこの数週間というもの、
事はさらに緊迫してきました。
というのも、
インテル・ユヴェントス戦でなくとも、
ユヴェントスのティフォーゾたちは競技場に出かけ、
インテルで活躍するバロテッリに対して、
人種差別的なことを一斉に
“合唱”するまでになっているのです。
「バロテッリは黒人だ、
イタリア人は白人だ」と。
今までこうした“合唱”のことで、
ユヴェントスは厳しい罰金を支払って来ました。
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11月25日のUEFAチャンピオンズ・リーグの試合が
ボルドーで行われた時にも、
この、禁じられているはずの
人種差別のヤジが起りました。
この無作法な行為は、イタリア国内のみならず、
UEFAの全ての催しにまで広がっているのです。
そして、イタリアではユヴェントスを罰するために
政府の介入が要求されました。
そしてUEFAは人種差別についての調査を始めました。
12月5日にトリノで行われる
ユヴェントス対インテル戦に、
バロテッリは出場するでしょう。
その際に大きな事故の恐れが予想されるため、
インテルの監督であるモウリーニョは、
門を閉ざす、つまり無観客にすることを要求しています。
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それにしても、
インテルにまつわる論争、いさかいは尽きません。
去る11月24日にバルセロナ行われた
UEFAチャンピオンズ・リーグの試合では、
イタリアの列強チームが
ヨーロッパの列強チームと対戦しましたが、
インテルは敗退しました。
2対0という点数の差よりも問題にすべきは、
プレイそのものが総合的に冴えなかったことです。
モウリーニョ監督は
UEFAチャンピオンズ・リーグに勝利するために
インテルに雇われたのですが、
いまだに決勝トーナメント進出が決まりません。
来る12月9日の対ルビン・カザニ戦に、
ホームのサン・シーロに勝つ必要があります。
インテル会長のマッシモ・モラッティは
対バルセロナ戦の直後、
「モウリーニョを解雇する!」
というほど激怒していましたが、
契約上、あと3年間分の給料を
支払わねばならないので、思い直しました。
モラッティは、モウリーニョを
解雇こそしませんでしたが、
かわりに彼をひどく批判しました。
「インテルの選手たちは
バルセロナの選手たちより優れているのだから、
負けの責任は全て監督にある」と。
まったくオーバーな言いっぷりではあります。
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モウリーニョも、すぐに反論しました。
「インテルは1965年から
UEFAチャンピオンズ・リーグに優勝していない。
だから明らかに私のせいではない。
インテルは、世界チャンピオンの監督である
リッピすら崩壊させたが、
私はすでにイタリア・スーパーカップや
スクデットを勝ち取っており、
今シーズンのスクデットも勝ち取ろうとしている。
私には奇跡は起せない、
ひとりの監督にすぎないのだから」と。
モラッティ対モウリーニョの平和は
長続きしないように思えます。
次にインテルが負けた時、
戦いが再開するのは目に見えています。