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きょうは、金色に輝くリキュール、
リモンチェッロのお話です。
ここ数年のイタリアでは、リモンチェッロが、
食前酒としてのベルモットや、
イタリア人の食後の習慣であるエスプレッソに替わる
飲み物になりつつあります。
色の美しさ、地中海の香り、
ほどよいアルコール分などが
人々の心をつかんでいるのです。
リモンチェッロが生まれたのはナポリの近く、
ソレント、アマルフィ、カプリのあたりです。
通説では、1900年初頭にカプリの小さな宿で
産声を上げたと言われています。
当時、その宿では
マリア・アントニア・ファラーチェという婦人が、
レモンとオレンジのたくましく育つ庭を世話していました。
そして、その小さな宿の小さなバールでは、
お祖母さんのレシピによって作られた
レモンのリキュールが名物でした。
これがリモンチェッロが公に世に出た
最初の場所だったというのです。
ただ、「発祥の地」ということでは、
アマルフィでもソレントでも
「うちが最初だ」と言っているようです。
確かに、より美味しいリモンチェッロ作りで大切なのは、
「ソレント産のレモン」を使うということです。
ソレントのレモンは大きく、
皮も厚ぼったくざらざらしており、
普通のレモンと違うのが一目で分かります。
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リモンチェッロがヒットした理由のひとつに、
どの家庭でも作れるということがあります。
ただし、純粋アルコールと、砂糖と、
ソレント産のレモンさえあれば。
(編註:日本では純粋アルコールを
一般的に入手することはできません)
その「本物のソレントのレモン」は、
どこでも入手できるというわけではありませんが、
大切なのは、化学的な処置がされていないことです。
そうでないと、そのリモンチェッロの仕上がりは、
まずくて飲めないということになります。
酒造所の人のような気分で、
家でリモンチェッロを作るのは素敵で、
なんだか刺激的です。
友人たちを招いてパーティーをして、
食後にコレを出したら盛り上がるだろうな、などと
想像するのも楽しいものですし、
自分自身も気持ちがウキウキしますよ。
だって、今やリモンチェッロは
酒店などですぐに買えますから、
わざわざ自宅で作る人は、
ミラノにはそう多くありませんからね。
仕込むビンを選ぶのも楽しみのひとつです。
できるだけ500mlより小さいビン、
それも「色付きガラス」のものではなく
できるだけ「透明」なガラス製を選ぶのがコツです。
リモンチェッロの、まるで年月を重ねた黄金のような
独特の黄色を眺めては、ウキウキできますからね。
ビンの形も自分のお気に入りが見つかれば、
もっと楽しいでしょう。
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家に人を招いた時だけではなく、
友人たちの誕生日やクリスマスなど、
あらかじめプレゼントにするためのボトルも、
ぼくは用意しました。
クリスマスは冬で、リモンチェッロは
夏向きの飲み物ではありますが、
金色はクリスマス・カラーのひとつですから、
よしとしましょうか。
リモンチェッロを食前酒にする時は、
普通の大きさのグラスに注ぎ、
レモンかオレンジ一切れと氷を足し、
炭酸水を少し注いで混ぜます。
ガブ飲みしてはいけません。
いとおしむように、少しずついただきます。
食後酒には、キンキンに冷やしたリモンチェッロを、
そのまま小さなリキュールグラスでいただくのが
良いでしょう。
食後にエスプレッソ替わりに飲めば
消化を助けてくれますし、
禁煙したい人にも、もってこいです。
というのは、イタリアでは、食後やコーヒーの後に
タバコを吸う人が、まだまだ多いのですけれど、
小さなグラスでリモンチェッロをキュッと飲めば、
タバコは良くないな、わかってるんだけどねと、
ちょっと後ろめたい気持ちで吸うタバコを、
何本かは節約させてくれるでしょう。
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では最後にフランコ流レシピのご紹介です。
「帰れソレントへ」を口ずさみながら、まいりましょう。
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ソレント産レモン 大7〜8個(皮のみ)
アルコール 純度95%以上 1リットル
ミネラルウォーター 1リットル
砂糖 800グラム
材料のレモンは、皮をアルコールに漬け込むので
無農薬栽培のものが良いでしょう。
使用する前に、ぬるま湯で、
たわしを使いながら汚れを落とします。
ワックスが使用されているようなら、
念入りに洗いましょう。
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レモンの皮をできるだけ薄く剥いて、
果肉との間の白い部分もできるだけ取り除きます。
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この部分が入ると、出来上がりが苦くなるので。
果肉も入れたくなりますが、
絶対に入れてはいけません。
果肉は別にとっておいてください。
密閉できるビンに、用意したレモンの皮と、
アルコールを入れ、
1週間から10日冷暗所に保管します。
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レモンの皮から、天然の色素と香りが
アルコールにとけ込んで、
レモンの皮が白くなったら、取り出します。
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ミネラルウォーターに砂糖全量を加え、
砂糖が溶けるまで鍋などで加熱します。
この場合、沸騰させなくても、
80度前後で砂糖が溶けますので、
白濁した砂糖水が、透明になればOKです。
10分ほど、砂糖水を冷ましたら、
一気にレモンアルコールに加えます。
すぐに白濁して、リモンチェッロの完成です。
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可愛い瓶などに小分けして、冷凍庫へ。
この状態でもアルコール分が40%以上ありますので、
凍りません。
キンキンに冷えたのが美味しいのです。
甘くて飲み口がいいのですが、飲み過ぎると
一気に酔いが回りますので、お気をつけて。
レモンの果肉は、白い部分を取って、
一口大に切り、小分けして、冷凍庫に保存を。
夏場の暑い日に、冷凍果肉と
ミネラルウォーター、砂糖(ガムシロップ)や
お好みで蜂蜜を入れてミキサーにかけると、
天然ビタミンたっぷりの
美味しいレモンジュースが楽しめます。
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また、オレンジ(アランチャ)を使用して
同じレシピで作るアランチェッロも、
お試しください。
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