カッサーノ狂乱。
暴れん坊アントニオ・カッサーノが、
またやってくれました。
彼は常に天才ですが、
やっぱり暴れん坊でもありました。
いえ、このところ、ずっと順調だったのです。
レアル・マドリードでのポジティブとは言えない期間の後、
イタリアに戻っていた彼ですが、何回か試合に出ただけで
文句なくサンプドーリアのアイドルになっていたのです。
桁外れなプレイ、決定的で素晴らしいゴールの数々、
すべてに彼の大きな才能が表れていました。
生まれ変わったカッサーノ、新しいカッサーノが、
イタリア代表アズーリのドナドーニ監督を納得させ、
6月のEURO2008に彼を呼ぼうとさえ思わせていました。
すべてが素晴らしい、いや最高に素晴らしかったのです。
しかし悲劇は突然にやってきました。
3月2日の日曜日に、
天才カッサーノは事件を起こしました。
彼がヒステリックで喧嘩っぱやいことが、
まるでお約束だったあの時代に、
一気に舞い戻ったような狂乱ぶりが展開されたのです。
忘れ去られたかに見えたことが、
さらに巨大化して戻って来たかのようでした。
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カッサーノ、激怒。 |
それはサンプドーリアとトリノの試合の終わり近くでした。
2チームは引き分けていたのですが、審判が笛を吹きました。
カッサーノのファールに対するものでした。
別になにも特別ではない、通常のファールです。
カッサーノはその時点まで素晴らしい態度でプレイしていて、
ジェノヴァの観客たちは
新しいアイドルの手柄を賞賛するために、
何度も立ち上がったほどでした。
完璧に美しいゴールや賞賛すべきパスなど、
目に見えて鮮やかなシーンは、疑い深い批評家たちにさえ、
この生まれ変わった新しいカッサーノはEURO2008のために、
代表チームに招集されるべきであろうと思わせました。
それなのに、
カッサーノへの愛情がまさに頂点に達しようとしていた時に、
単純なファールに対してオーバーに反応するカッサーノが‥‥
「ファールじゃない」
彼は、審判に向かって怒鳴り出しました。
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カッサーノはその判定を受け入れず、
無作法な調子で怒鳴り、シャツを脱ぎ、
これ以上なく下品な言葉でののしりながら、
そのシャツを審判に向かって投げつけました。
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こうまでされた審判はレッドカードを引き出して、
もはや本当にヒステリー状態のカッサーノを退場させようとします。
カッサーノは、これに対しても最悪の反撃に出ました。
すぐにおとなしく更衣室には向かうどころかピッチの端にとどまり、
審判を非難するように叫びました。
「こっちへ来い、殴ってやる」と。
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カッサーノの周りをチームメンバーや
トリノの選手たちも取り囲み、
なんとか彼をなだめようとし、
ついには力づくで彼をピッチの外に引きずり出しました。
カッサーノは更衣室で泣き、絶望し、世界を呪い、
そして冷たいシャワーをあびて気を鎮め、
試合が終わったピッチに戻って、
彼が怒りを吐き出した気持ちを理解し拍手する観客たちに
詫びました。
二日後にスポーツ裁判から決定が届きました。
5日間の出場停止です。
でも彼が見せたネガティヴなイメージを、
良い方に戻すのは難しいでしょう。
カッサーノはボールの天才ですが、
本当に残念なことに彼の脳みそは3歳児のままです。
たぶん代表チームへの招集も、これでおじゃんでしょう。
彼の先行きにも暗雲が立ちこめてきました。
くどいようですが
彼ほどの才能は世界中でもまれなのです。
本当に勿体ないことだと、ぼくは思うのです。
訳者のひとこと |
あららら、やっちゃいましたか‥‥
日本では
「勝って兜の緒をしめよ」
などと言われますから、
順調な時ほど気をつけないと
落とし穴が待っているという皮肉な事態は、
今も昔もありがちなことなのですね。
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翻訳/イラスト=酒井うらら |
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