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フランコさんのイタリア通信。 |
ジェラートひとつで、子どもにもどれる!![]() ![]() 今年もイタリアに、 夏を先取りする暑さが到来しました。 毎年この暑さを迎えるころ、 イタリア人たちが猛然と思い出す 「ある情熱」があります。 ジェラートへの大いなる情熱です。 イタリア人の創造力が、 ジェラートの色や香りを通して表現されている、 とぼくは言ってもいいと思っています。 たとえ誰かが、 中国やインドでは2500年も前に、 氷をくだいては砂糖や果物で甘みを付けていたと、 言ったり書いたりしたとしても、 ジェラートはまさにイタリアの特産物であると。 たしかにインドでは、 ムガール帝国の皇帝たちが 騎士たちをヒマラヤの山に送り、 雪や氷を持って来させ、 暑さと闘うためのスペシャルな冷たい食べ物を 用意させたそうです。 しかし──、 世代から世代へ伝えて「ジェラート」を生んだのは、 イタリアなのです。 そしてイタリアのジェラートは、 いまや世界中でもっとも有名なのです。 ![]()
うれしいことに日本でも 「ジェラート」という名前が浸透しましたね。 2002年のW杯の時のことを思い出します。 アズーリのキャンプ地だった仙台や、 東京の上野の駅の近くに、 イタリアの三色旗をつけた屋台が出ていたのを思い出します。 そこにはイタリア語でこう書いてありました。 【veri gelati artigianali(手作りの本物ジェラート)】 ジェラートの歴史が語るところによると、 最初の偉大なジェラート職人は イタリア人のフランチェスコ・プロコピオという人で、 彼は1686年にパリで世界最古のカフェと呼ばれる 「ル・プロコップ」という店を開きました。 そのカフェは世紀をまたいで、 時の文学者たちがつどう場所となったそうです。 ヴォルテール、バルザック、ヴィクトル・ユーゴーなども、 イタリア人の作ったジェラートをパリで食べていたのですね。 最も美味しいジェラートを作るイタリアの州は、 素晴らしいフルーツに恵まれているシチリアですが、 消費においては北イタリアの都市で、 特に若者を中心に、正真正銘の流行となりました。 ミラノでは、若者たちが夜のしめくくりとして、 家に帰る前にジェラテリーア(ジェラート専門店)に集まり、 ジェラートを味わいます。 もしかして、ディスコでの踊りより、 レモンやクリーム味のジェラートのほうが好きなのかも。 ![]() そして、数カ月のうちに 今いちばん人気のあるジェラテリーアになったのが、 カステルヴェトロ通りの 「“Il massimo del gelato”(ジェラートの極限)」 と呼ばれている店です。 あまり広くない通りに面した小さな店なのですが、 夜には、ほぼ全部が二重に駐車される車で、 その通りが塞がってしまうほどです。 その店はほんとうに小さいので、 人びとは店の外で歩道に立ち止まって ジェラートを味わいます。 それも、まるで宗教の儀式のように、黙りこくって。 サッカーについて話したりしない、 彼女の話なんかしない、政治について語ったりもしない、 とにかく話をしない、それでじゅうぶん。 口の中にひろがるフルーツやチョコやクリームの 香りが良すぎます。 一言でも話をしようものなら、 せっかくのジェラートの魔法が消えてしまいそうです。 口に含んだ瞬間に、無邪気だったあのころ、 人生には楽しい事しかないように思えて、 誰もが数年先におとなになれば見つけるであろう悪意など、 考えもしなかったろに戻してくれる、 ジェラートの魔法‥‥。 そう、子どもに戻れる、 それがジェラートがかける本当の魔法なのです。 ![]()
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2007-04-24-TUE
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