江戸が知りたい。
東京ってなんだ?!

テーマ4 明治大正の女学生ブーム!

その2
お正月は「学生雙六」。
女は清楚に男は武骨に。

ほぼ日 この「すごろく」なんですけど、
面白いですね〜。
雑誌の付録ですか?
小山 男の子は「学生」って雑誌があって、
女の子は「少女世界」っていう雑誌が
あったんです。
ほぼ日 つまり、今でいうと、
学研やベネッセ的な?
小山 そういう感じの、お正月号です。
ほぼ日 つまり、全国的に流通する雑誌の
お正月号の付録に、
東京での学生生活をすごろくにしたものが
ついてたわけですね。
これ、ええと、女の子からいきましょうか。
ゴールはなんなんですか?
小山 ゴールは卒業なんですよ、女の子は。
ほぼ日 あ、卒業か。そうか。
小山 右下から見るとふりだし。
新入学で、どうやら先生に
部屋に連れて行かれる。
ほぼ日 あ、寄宿舎に入るんだ。
小山 そうなんですよ。
ほぼ日 で、ええと、左に回るの?
上に行くの?
小山 サイコロを振るわけですね。
で、なんの目が出ると
どこに進め、と指示が出るんです。
ほぼ日 そっか、時間軸じゃないんですね。
どんなコマがあるのかな。
「帰省」。これ、柳行李に
荷物を入れて、パラソルなんか持っちゃって。
小山 ハイカラになって帰ってくるんですよ。
やっぱこれはすごいことだったと
思うんですよね。パラソルですよ。
ほぼ日 都会であかぬけて、ね。
びっくりしちゃいますよね。
隣の家の幼なじみの太助君とかが、
「おめえ、オキヌちゃんか?」とか言って
赤くなっちゃったりして。
「オキヌちゃん、変わったな、モジモジ」
とかいって。
小山 あはははは。
ほぼ日 あ、すみません、勝手にドラマが。
隣が「運動会」ですね。
都会の女学校の運動会。
憧れだった運動会。
その上が‥‥。
小山 「同級会」。
寄宿舎で、同じ学年の子が集まって
茶話会をしてるんでしょうね。
ほぼ日 仲良くしましょうねって。
そして、ああ、やっと勉強してる。
小山 「自修」ですね。
ようやくお勉強が入りましたね(笑)。
ほぼ日 ほんと(笑)。
この子たち、
学生生活を謳歌してますよね。
ピアノを弾いてるのは‥‥
小山 「学芸会」。
ほぼ日 遊んでばっかですね(笑)。
その上は? 着物着て舞ってますよ。
小山 「記念会」それから「遠足」「雪の日」。


ほぼ日 「雪の日」ってコマがあるんですか!
ははーん、このコマの意味は、
こんな雪の日でも
女学生はオシャレだってことですね。
この外套がオシャレなんですよ。
この女学生のコート。
チェックのコートを着て行くわけ、
手袋をして。
これは田舎じゃありえない!
小山 (笑)。
女学生のチェックの外套は
実物を展示していますよ。
ほぼ日 さぞかしかわいらしかったんでしょうね。
それから「當番」。
あ、またやっと勉強が。
でも「試験前」なのに、
芝生の上で、おほほほ、なんて(笑)。
で、「卒業式」と。
‥‥やっぱり勉強してませんね。

小山 実際はちゃんと厳しく躾けられ、
お勉強していたんでしょうけどね。
このすごろくでは
誇張されてるんでしょうね。
ほぼ日 ここに描かれているのは、
夢の学生生活って感じですね。
小山 そうなんですよ。すごろくって、
ふろくとしては、やっぱり、
ひじょうに人気のもので。
ほぼ日 いま見ると、美術的にも面白いですね。
かたや、男子学生にいきましょうか。
これは「学生」って雑誌、
男の子向けの雑誌ですかね。
これねぇ‥‥女学生と大違い。
なんというか、むさくるしい(笑)。
この違いはなんなんだ。
小山 (笑)ほんと、比べるとすごいですよね
ほぼ日 スタートは入学試験ですね。
次が「勉強家」だ。
女学生とちがって勉強させられてるなあ。
女学生は「おほほ」なんて、
芝生で自習してるのにね、
この人はね‥‥。

小山 頭抱えてうなってますね(笑)。
ほぼ日 「茶話会」もあるんだけれど、
お茶を飲んでるというより、
むしろ議論してますよね。
小山 言論を闘わしてますね。
ほぼ日 体育もきつい。
「ボートレース」。
小山 ボートレース。隅田川で、
けっこうされてたんですよ。
ほぼ日 ちょっと六大学っぽいですよね。
小山 そうですねー。
ほぼ日 体育会系の匂いがしますね。
「夏休」もね、あの‥‥。
小山 ひとりで山登ったりして。
ほぼ日 ひとりで山登ったりしてる、
やっぱりね、マッチョですよね。
それから、こっちはなんだろう?
小山 次は、「野球」です。
これは、相手が「S」って書いてあるから、
早稲田大学と交流試合をしていた
憧れのシカゴ大学かな?
っていう感じがするんですね。
ほぼ日 シカゴ大学と、交流試合を!
絵はがきにもありましたもんね。
その横がおかしくってね‥‥。
小山 「アイドルボーイ」。
ほぼ日 アイドルボーイってなんですか?
小山 idleは、本来の意味で
「怠けてぶらぶら遊んでいる」
っていうことですね。
目的見失ってますね。
ほぼ日 草むらで、ビールと缶詰で、
すごい世を拗ねた顔でね‥‥。
小山 これ、おもしろいのは、
すごろくの作りがヘンで、
入学試験で2が出ちゃうと、
もう即刻アイドルボーイなんですよ(笑)。
ほぼ日 あはははは! ダメだ!
小山 もう、だから、いきなりダメな人に。
ほぼ日 いったんアイドルボーイになると、
2が出ると「不合格」で、
4が出ると「放校」退学ですね。
5が出ると「負傷」、
6が出ると「お気の毒様」なんですよ。
お気の毒様って!
道が閉ざされちゃいますよ!
彼の将来はどうなる!
小山 唯一「負傷」からは
立ち直りの道がありますね。
でもまあ、厳しいすごろくですね(笑)
ほぼ日 ははははは。
つまり男の子は、1度踏み外すと、
どこまでも落ちますよ、と、
そういう教訓ですか。
あと、「お正月」っても、
こいつら、帰省しないんですよ。
だって寮の玄関、
下駄とクツがひっくり返ってね、
ぐっちゃぐちゃ(笑)。
小山 お正月も帰りたくないくらい
学生生活が楽しかったんでしょうねえ。
ほぼ日 お正月で3が出るとね、
「餅でもやり給へ」って(笑)。
これ、作った人、センスいい!
すごい面白いです。
次は「柔術」。
先生に、なんか、教わってるんだけど、
火鉢囲んでね、柔道じゃないことを
生徒に教え込んでますね。
小山 なんですかねぇ。
ほぼ日 でも、隣の先生は厳しい先生。
「學年試験」。
その隣は「雄辯会」だって。
口から泡飛ばしちゃって。

ほぼ日 あのう「修学旅行」のところにある
「ペケペケ」って何でしょう?
小山 いやー、ペケペケ(笑)。
それはわたしにもわからないんですが
ルール解説には
「不進不退現状を維持する定め」
となってますね。
ほぼ日 ううむ、これはユーモアですかね。
ゲームのつくりが面白い‥‥
「放校」は、罰ゲームですね。
「三偏廻つてお辞儀」「犬の真似」
「鼻を摘んで舌を出す」「鼠の泣聲」
なんかをさせられる。
小山 あー、っていうことは、
もうここにいくと、
すごろく、終わりですね。
ほぼ日 放校は、ゲームオーバーですね。
で、「撃剣」。
武術の授業、剣道ですね。
そして次は「負傷」。
ゴール間際の辛いこと(笑)。
「卒業試験」も、氷のうぶら下げて
がんばってますよ。
そうとうタイヘンなんだ。
あ、とうとう、「神経衰弱」に。
ノイローゼになっちゃった!
勉強しすぎ!



小山 そしてやっと「優等」を取って、
「高等学校」がゴールですね。
ほぼ日 高等学校って、いまの大学の
教養課程ですよね。
いやぁ、これ、バンカラだ。
高等学校入ったとたん、
無精髭ですよ。
これはこれで憧れたんでしょうね。
すごく自由な香りがしますからね。
この頃って、男子高と女子高は
別々だったわけですよね。
こりゃあ、同じには、できないよなあ‥‥。

というところで、今回はおしまい。
次回はいよいよ女学生アイドル?登場!
お楽しみに!

2003-10-06-MON
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