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ギー・ラリベルテは、
シルク・ドゥ・ソレイユのクオリティーに関して
厳しい基準をもっています。
これは、噂話のたぐいではなく、
ほんとうの話なのですが、
シルク・ドゥ・ソレイユの運営するあらゆるショーは、
ギー・ラリベルテの最終チェックをパスしなければ、
開幕することができないのだそうです。
ショーが企画され、出演者が集められ、
舞台がつくられ、衣装と音楽が固まり、
いよいよあとはお客さんを入れるだけ、
という状態になったとき、
ギー・ラリベルテの観ているまえで
最終リハーサルが行われます。
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これも、噂ではなく事実ですが、
その最終リハーサルは、
シルク・ドゥ・ソレイユにおいて
「ライオンズ・デン(Lion's Den)」
と呼ばれているそうです。
直訳すると、「ライオンの穴」です。
ショーの関係者にとって、
ギー・ラリベルテの最終チェックを受けるというのは
それだけ緊張感があるものなのでしょう。
この「ライオンズ・デン」の話を聞いたとき、
じつは私たちは真剣にそれを受け止めていませんでした。
最終チェックといっても、
最後の微調整のようなもので、
実際に開幕ができなくなるようなものでは
ないと思っていたのです。
ところが、日本における最初の常設ショー
『ZED』が開幕がするころ、
私たちは関係者の方から、
同時期に開幕する予定だったラスベガスのショーが、
「ライオンズ・デン」でひっかかって
遅れることになった、という話をうかがったのです。
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おそらく、ポスターだって刷られていただろうし、
たくさんの広告もうたれていたであろう時期です。
ギー・ラリベルテは、
クリエイティブとビジネスの両方の面で、
シルク・ドゥ・ソレイユの決定権を握っている。
私たちはそれを強く確信していきました。
──その、ギーが、日本にやってくる。
知らせは、突然、やってきました。
『コルテオ』の東京凱旋公演の初日に合わせて来日し、
数日滞在して『コルテオ』と『ZED』を観るらしい。
そのどこかで、取材できるかもしれない。
不確かでしたが、
それはたいへん魅力的な申し出でした。
もちろん私たちは「ぜひ!」と答えました。
あいだに入ってくださった
オリエンタルランドの中村さんの
粘り強い働きかけによって、
取材はなんとか実現しそうでした。
が、取材日も、取材時間も、取材場所も、
二転三転しました。
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なにしろ、
ギー・ラリベルテという人は、
いつどこでどう過ごすということが
正確に把握されていない人です。
ひょっとしたら本人が
きちんと予定をたてないタイプの
人なのかもしれません。
日曜日の昼に、
ギー・ラリベルテの滞在するホテルの
最上階にあるスイートルームで。
ようやく段取りが定まったのは、
取材の前々日の金曜日の夜のことでした。
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(つづく) |
2010-01-18-MON
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