第229回 宮大工さんのお礼参り。
こんにちは。
四国の坊さん、ミッセイです。
みなさん、
お元気でしょうか。
お坊さんは、
他の仕事に比べて、
「モノをもらう」
ことが、
結構、多い仕事だと思います。
特に、
僕が住職をしている栄福寺は、
四国88ヶ所遍路のお寺なので、
全国の御参りの方から、
時々、おもしろいものを頂くんです。
その中でも、
ほぼ毎年頂く、
大阪の韓国焼き肉屋さんのおばさんの作る、
「チジミ」(韓国のお好み焼き?)と、
特製のタレは、
個人的に好物にしています。
(唐辛子の葉が入っていて、
薄くぱりっと焼いている。)
その中でも、
今日頂いた物は、
とても印象的でした。
「下駄」なんです。
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寄進くださった方は、
88ヶ所すべての札所の住職に、
下駄を奉納しながら遍路をしていると、
挨拶状が付いていました。
まだ境内で、
本堂の写真を撮っておられたので、
「住職でございます。
ありがとうございます。」
とご挨拶をさせて頂きました。
お話を聞いていると、
この方は、
福井の宮大工(寺社仏閣に関わる大工さん)
を引退された方でした。
「修行中に、
師匠に連れられて、
お四国に見学に来た事があったんです。
それで、
お礼参りと思って、
桐(きり)で作った下駄を持って、
御参りさせて頂いています。」
四国遍路には、
亡くなった人の冥福を祈願したり、
お願い事があって御参りする方も多いですが、
こんな風に、
「うれしい事」があったお礼に、
「お礼参り」をする方もとても多いんです。
この宮大工さんの場合は、
無事に宮大工として、
現役を全うできたことを、
仏さんにお礼を伝えて、
まわっているのでしょうね。
「御参りをしようと思っていたら、
40年ぶりに倉庫から、
下駄を作る道具が出てきました。
これは、
下駄を作れという事だと思って、
下駄を作って奉納して御参りしているんです。」
「ありがとうございます・・。
宮大工はとても大変な仕事なんしょうね。」
「話せば長くなりますが・・・。
師匠は厳しかったですね。
でも、素直にやればいいんです。
他の人がやったことがないことを、
やるんではないんですから、
素直にやるんです。
誰かがやった事をやるんですから、素直に。」
という話を聞かせてくださいました。
僕はこの言葉のことを、
何日か考えていたのですが、
僕が素直にありたいのは、
心に対して素直にありたいと思いました。
* **
僕の方も、
今治の大島の「島四国遍路」に、
お礼参りに行ってきました。
昨年、
この島四国で、
ダライ・ラマ14世を招いた、
宮島の大聖院さんのご住職と知り合い、
宮島での、
僕にとって大きな体験に繋がりました。
その「お礼参り」です。
今回も、
大聖院さん達や、
信者さん達と団体で御参りをしました。
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ポカポカ陽気の中で
海をみて山に入りながら、
お経をみんなで唱えていると、
すごく気持ちよかったです。
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一緒に御参りをした人達は、
お年寄りの女性の方が、
とても多かったのですが、
息子や孫ぐらいの年齢の僕に、
歩きながら、
色々な話をしてくださいました。
「男の人って気が強いよねー。」
「そうですねー。
んっ?でも女の人も気が強くないですか?
ケンカは男のほうが多いですけれど・・・。」
「そうじゃなくってね。
男の人がいると、
気が強くなるの。安心なの。
私は今でも、
すごく恐がりなんだけど、
風がすごく強い日とかにね、
“こわいよー”
なんて言うと、
“なに言ってんだよ。
家がつぶれるわけじゃあるまいし。
とっとと寝なよ。“
とかって言ってくれるじゃない?
そういうのが安心なの。
でもね、
女は知っているのよ、
男もこわいのを。
不安な時に恐いのを。
お金の事なんか特にね。
でもね、
女の人は、
それを知っていて、
大丈夫って言って欲しいのよ。
恐いのに大丈夫って言えるか見てるのよ。
わかる?」
「わかりませんけれど、
なぜ僕がモテないかは、
よーくわかりました。
はははは。」
「ははははは。
でも今わかってよかったじゃない。
今わかった、あなたは偉い!
そしてラッキー!」
なんていう、
老女(失礼っ!)の、
含蓄に満ちた身につまされる話を、
聞かせてもらいながら、
楽しい島四国でした。
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でも80歳近い女の人が、
一日中歩き回るのだから、
皆さん、お元気ですよね。
途中、
お寺で拝む時が、
いい休憩になるから、
ずっと歩いていられるんだと思います。
ミッセイ
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