第225回
本堂の縁がヒノキになりました。
こんにちは。
四国の坊さん、ミッセイです。
僕の住む栄福寺は、
「四国八十八ヶ所」以外にも、
「伊予府中三十三ヶ所」という巡礼の
札所でもあります。
この「伊予府中霊場」は、
近所のお寺ばかりなので、
何人かのお坊さんで集まって、
この巡礼をバスで御参りしてきました。
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僕は、
古いお地蔵さんや石仏が好きなので、
それを探して拝んだり、
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新しいお地蔵さんに、
かわいいニット帽を被せた姿に、
みんなで笑ったりしながら、
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なかなか楽しい巡礼でした。
途中、
軽自動車の車輪が路側帯に乗り上げて、
立ち往生していたので、
バスを停めて坊さん達で、
車を持ち上げたのですが、
運転していた若い女性は、
あっけにとられた感じで、
ほとんど「どっきりカメラ」という感じでした。
バスが停まって、
ラッキーと思っていたら、
降りてきた人達が、
全員、作務衣を着た坊さんだった、
なんて変な夢みたいですよね。
***
栄福寺の本堂は、
だいたい築100年で、
お寺の中では、
新しいとも言える建物なのですが、
御参りの人達が立つ「縁」の部分が、
グラグラになって、
ちょっと危ない状態になっていました。
これは、
栄福寺が普通のお寺からは、
考えられないぐらいの、
御参りの人達が来られることと、
松の木で縁を作っているので、
「松食い虫」が、
少しずつ攻めてきているようでした。
そこで、
縁をこの際、
新しくすることにしたのですが、
今回の仕事を、
僕の同級生で一緒の部活をしていた男の子が、
宮大工の修行をしてきた人と組んで、
大工さんをしているので、
彼ら二人に頼むことにしました。
一度、
作業場を訪れた時に、
「自分はヒノキがすごい好きなので、
たくさん買っておいて、
いつでも使えるように乾かしているんだ。」
と言っていたり、
近所のお坊さんから、
いい評判を耳にしていたのです。
普通ですと、
お寺の縁に使えるような、
大きなヒノキは、
個人の大工さんは、
なかなか持っていないらしいのですが、
やはり彼は持っていました。
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古い松の縁をはがしてみると、
やはりかなり痛んでいます。
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痛んだ場所だけを、
新しくしても不格好になってしまうので、
とりあえず前の部分は、
新しく総ヒノキの縁になりました。
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真新しいヒノキの縁を前にした、
お遍路さんは思わず靴を脱いで、
座ってお経をあげる人がいたり、
「とても足で踏めません。
なにか紙を敷いてくれませんか?」
と言われたり、
日本人の「木」や「ヒノキ」に対する、
直感的な敬虔な気持ちを、
手触りのある実感で感じることが出来て、
おもしろいな、いいなぁ、と思いました。
完成した日は、
たまたま夕方に友達のお坊さんが、
遊びに来たので見てもらうと、
「これだけのヒノキを、
よく急に言って持ってたなぁ。」
と驚いていました。
それを翌日、同級生の大工さんに言うと、
「そうやろう。そう言ってたやろう。」
と笑みをこらえながら、
(シブイ雰囲気の人なので。)
うれしそうに頷いていました。
「ようするにオタクだな。
ヒノキマニアじゃないか、あなたは。」
と冗談で僕が言うと、
(ゆるい雰囲気の人なので。)
「ふふふふふふ」
とついに声を出して笑っていました。
はがした松の木で使える木は、
父親がお寺のベンチを、
作ってくれるらしいです。
ミッセイ |