![]() |
ご近所のOLさんは、 先端に腰掛けていた。 |
vol.108 - su-ki-da, 1 - ●ココロの奥底にフェザータッチする ---- 『好きだ、』 ![]() 『好きだ、』2月25日より渋谷アミューズCQN他でロードショー □『好きだ、』の石川寛監督に会いました。 好きだ‥‥ と、最後に言ったのはいつだろう‥‥。 つい先日のバレンタインデー? それとも何週間か前? 何カ月前? 何年前? 何十年前? えっ? 無い‥‥? まあ、ドラマじゃないし、なかなか言える シチュエーションって無いですよね。 気恥ずかしいものですし‥‥。 でもこの、すごい直球勝負な潔い言葉と、 最後の「、」がタイトルになっている、 『好きだ、』になんだか急激に心惹かれて、 石川寛監督にお会いすることにしました。 とくに「、」が気になって、気になって。 ところで、テレビで宮崎あおいさんが、 「チョッコレート、チョッコレート、 チョコレートは、め、い、じ」と、 鼻歌を歌いながら、チョコ作りをしている、 かわいい明治製菓のCF、 と言えばすぐおわかりでしょうか。 そのCFディレクターの石川寛さんが この『好きだ、』を作った監督です。 (脚本、撮影、編集、共同プロデュースも) 第1作目の『tokyo.sora』でも、 かなり独特な映像にドキリとしました。 今回の『好きだ、』で、見事、 2005年ニューモントリオール国際映画祭、 最優秀監督賞を受賞されました。 ![]() (今回の石川監督の写真と、 あとで登場してくださる特別ゲストの写真は、 ぜんぶ、『写真で深呼吸。』の 仁礼博さんの撮影です。多謝!) そういえば以前、ICO(イコ)というゲームの 制作者の上田文人さんにお話を聞いたときに、 ICOが持つ幻想的な空気と同じ空気を、 上田さんの周りに感じたのを憶えていますが、 この『好きだ、』にも、 言葉にはできないような独特の空気があって、 それはICOに通じるかもしれないのだけど、 石川監督に会った瞬間、「あ、あの空気」 みたいなものを感じました。 あえて言うなら「せつなさ」かもしれないし、 『好きだ、』の中では欠かせない、 「変わりゆく空のはかない一瞬の表情」みたいな ものかもしれません。 話は尽きず、長い時間、 作品のことをたっぷり伺うことができました。 なんだか監督の空気にだんだん包みこまれていき、 のめり込んで話を聞いていたのですが、 きっと役者もスタッフも、 「この人のために」と、大変なときも、 ついて行きます‥‥みたいな気持ちになるのが、 ちょっとわかった気がしました。 けっこう長いですが、 いつものようにライブな感じで、 またプチ連載にしてお送りいたします。 映画を観る前でも、観てからでも、 きっと楽しめると思います。 □ユウとヨースケの物語 どんな映画かを簡単にお話すると、 『好きだ、』は「ユウとヨースケの物語」です。 17歳のユウ(宮崎あおい*註)とヨースケ(瑛太)が 過ごした秋田(大館市)の高校での 透明でかけがえのない時間が前編。 ある出来事をきっかけに二人は離れてしまい、 17年後に偶然再会したユウ(永作博美)と ヨースケ(西島秀俊)の34歳の東京の時間が後編。 この2つの時間を、ヨースケがつまびき、 ユウが鼻歌で歌う、 ギターの優しいフレーズが繋ぎ、絡ませ、 言いたくて言えなかった「あの想い」を胸に秘めながら、 二人の関係が微妙に変化していく‥‥。 という人の心の「ゆらぎ」を、 “観る”というよりも、“感じる”作品です。 CFにも溢れている微妙で繊細な空気感を、 いったいどうやって作り出すのか。 石川監督独特の「気持ちのリアル」を徹底的に追求する、 つまり「ウソじゃない気持ち」になるまで待つ、 という手法で撮られたということです。 監督の胸の中にある「ある着地点」に到達するまで、 それぞれの出演者は、渡された いくつかの「キーワード」を頼りに、 「即興」を何十回も繰り返し、 わずか2、3分のワンシーンのために 何時間もカメラが回り続けるという現場。 こう書くのは簡単だけど、実際‥‥ いや〜想像するだけでも過酷な感じがします。 現場は、どんな感じだったのでしょう。 では第1回目は、イントロダクションです。 どうぞ。 ![]() □「その瞬間」を逃したくなくて。 ── こんにちは。 まずタイトルに強烈に惹かれました。 タイトルの「、」はどんな想いを込めたのでしょう。 観終わって、キュンとした不思議な感覚が残って、 じつはいまでも苦しいです(笑)。 監督 (笑)うれしいですね。 「、」は、観た人が先のことを感じ取ったり、 考えてほしいという意味が強いですね。 僕の場合は、この「、」は読まずに、 そこで一拍おく感覚とか、 時間的な一拍という感じですね。 「、」で終っているということは、 その後に何かがあるはずなんだけど、 それを感じるのは「観る方にお任せします」、 という思いが強いです。 ── 今回は撮影もなさってますね。 カメラを自分で持つとどう違いますか。 監督 いちばん大きいのは、 「その瞬間」に対応できるということです。 いくらいろんな話をして、準備したとしても、 出演者の雰囲気で「その瞬間」が生まれたときに 咄嗟に反応しなくちゃいけないと思うんです。 それがカメラマンが入ることによって、 もちろん、微妙にズレるわけです。 カメラマンが入ると、 想像以上に良くなることもあるんですが、 今回の映画のこの話では、つねに自分がそれに 反応できるようなほうがいいと思ったんです。 つづく。 いやいや、ほんのさわりでごめんなさい。 監督が待ちかまえる「その瞬間」のために、 これから語られる話の数々がつながってきます。 この映画は、まったく不思議な感じがして、 具体的にこの役とか、この俳優さん、とか、 なにか事象に強烈な印象が残るというよりも、 「映画」そのものが、ドキドキさせてくれる気がします。 それはある意味、監督の目がいつも、こちらを 視ているという感じがしていたからかもしれません。 そういうアトの引き方を、いまだにしていて、 その感じを楽しみつつ、進んでみます。 では次回もお楽しみに‥‥。 23日(水)に行われる、公開直前イベントの お知らせがビターズエンドさんから届きました。 一足先に『好きだ、』光線を浴びられそうです〜。 ぜひ!
*宮崎さんの「崎」の字は、正確には「 ![]() ウエブページでは表示できないため、 「崎」の字を使わせていただきました。 Special thanks to director Hiroshi Ishikawa and Bitters End. Photo for Ishikawa: Hiroshi Ninrei ![]() |
ご近所のOL・まーしゃさんへの激励や感想などは、
メールの表題に「まーしゃさんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。
2006-02-22-WED
![]() 戻る |